日本大腸肛門病学会雑誌
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58 巻, 1 号
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  • 第20回大腸疾患外科療法研究会アンケート調査結果
    冨田 尚裕, 渡邊 昌彦, 亀山 雅男, 高尾 良彦, 洲之内 廣紀, 緒方 裕, 白戸 博志, 橋爪 正, 加藤 孝一郎, 赤須 孝之, ...
    2005 年 58 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    第20回大腸疾患外科療法研究会のテーマ「下部直腸癌に対する超低位直腸切除・経肛門吻合術」に関連して会員施設に行ったアンケート結果について報告する.アンケートの回答は大腸外科専門医の所属する医療施設68施設から得られた.直腸癌に対する超低位直腸切除・経肛門吻合手術(以下,"本術式")は47施設(70%)において施行されていたが,経験手術数には大きな差が認められた.本術式の対象とする直腸癌の部位,進行度や手術手技,使用器械にも施設問に差が認められた.全体の縫合不全発生率は733例中74例(10%),1年以上の長期成績のデータを有する27施設での局所再発率は413例中40例(10%),肛門機能不全の割合は325例中35例(11%)であった.現時点で本術式はまだ標準手術としては確立しておらず,今後多数例での長期成績の検討が必要と考えられた.
  • 山田 一隆, 佐村 博範, 緒方 俊二, 久野 三朗, 福永 光子, 谷村 修, 佐伯 泰愼, 淵本 倫久, 高野 正博
    2005 年 58 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:後方浸潤をともなう直腸癌に対する仙骨合併切除の周術期経過と根治性について検討した.
    方法:1991~2002年において,後方浸潤をともなう直腸癌36症例(原発性;5例,局所再発;31例)を対象とし,骨盤内臓全摘+仙骨切除(TPES;25例)と直腸切断+仙骨切除(APRS;11例)を行った.なお,仙骨切除は仙骨前アプローチで行った.
    結果:両術式における手術時間,出血量,Morbidity,術後在院期間は,APRS症例で296.0±72.6分,2,443±1,697m1,45%,38.4±18.4日,TPES症例で441.6±111.7分,3,257±2,251ml,68%,62.4±30.6日であった.組織学的後方浸潤の程度別の5年生存率は,仙骨皮質浸潤8例;0%,仙骨前結合織浸潤9例;14.8%,非浸潤19例;49.8%であり,予後に有意差を認めた.
    結論:後方浸潤直腸癌に対する仙骨前アプローチによる仙骨合併切除は比較的安全な根治手術法と思われるが,仙骨皮質への浸潤例では根治的意義は少ない.
  • 佐藤 美信, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 升森 宏次, 松本 昌久, 小出 欣和, 青山 浩幸, 松岡 宏, 勝野 秀稔
    2005 年 58 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後に発症した虚血性大腸炎(POIC)10例の臨床的特徴を非大腸癌術後虚血性大腸炎(NOIC)17例と比較検討した.これらの病型はPOICに認めた壊疽型の1例を除く全例が一過性型であった.POICの大腸癌手術は低位前方切除術8例,S状結腸切除術と結腸右半切除術が各1例で,いずれも主幹動脈が根部で切断されていた.一過性型の例では,POICの4例(44.4%)に基礎疾患や誘因を認めたがNOICの全例に比べて有意に低率であった.腹痛は初発および経過中の症状としてPOICの3例(33.3%)および4例(44.4%)に出現したが,いずれもNOICに比べて少ない傾向にあった.病変の環周度半周以上の例はNOICで10例(58.9%)と,POICに比べて多い傾向にあった.大腸癌術後には基礎疾患や誘因を認めずに一過性型虚血性大腸炎を発症することが多いが,軽症例が多かった.しかし重篤な基礎疾患や誘因を有する場合には壊疽型を発症する危険が危惧された.
  • 術式選択評価項目の数量化理論第II類(質的データの判別分析)による解析
    野澤 真木子, 松島 誠, 中村 博志
    2005 年 58 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    裂肛の手術術式である用手肛門拡張術(AD)と側方皮下内括約筋切開術(LSIS)を比較検討し,各術式の適応について臨床症状と術前後の直腸肛門内圧測定値から多次元解析法(数量化理論第II類)を用いて統計学的にretrospectiveに分析し検討した.対象は2002年4月より2002年9月までに,当院で施行したAD55例,LSIS40例の合計95例とした.
    術式(AD,LSIS)と各検討項目では,術後の便性状,性別,付随病変の有無,病悩期間,再発の有無,術後の疼痛の項目で関与が高かった(有意確率p<0.05).しかしAD,LSIS両群ともに術式と患者評価には依存性が認められずともに有効であった.算出されたスコアを参考に効果的な症例を選別し,術前のMSPが160mmHg以上,術前のMRPが80mmHg以上という内圧検査結果が得られる症例に対しては積極的にADを施行してよいと考えられた.
  • 羽根田 祥, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 高橋 賢一, 橋本 明彦, 長尾 宗紀, 渡辺 和宏, 工藤 克昌, 小林 直, 内藤 ...
    2005 年 58 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎において直腸腟瘻の形成は稀であり,診断,治療上の問題となることが多い.今回我々は潰瘍性大腸炎に直腸腟瘻を形成し,手術に至った症例を経験したので報告する.症例は38歳女性.1989年25歳時血便にて潰瘍性大腸炎を発症.
    2001年11月に再燃,一旦緩解に至ったが,2002年2月頃より腟より排ガス,排便を認めるようになり,当院紹介となった.入院時炎症所見なく,大腸造影検査では直腸の前方に瘻孔の形成を認め,腟が造影された.以上より直腸腟瘻を合併した潰瘍性大腸炎と診断し,手術を施行した.大腸病変は緩解期であることを考慮し,大腸は切除せず,手術は1.直腸腟瘻修復・回腸瘻造設術,2.回腸瘻閉鎖術の2期分割で施行した.回腸瘻閉鎖後2003年10月現在直腸腟瘻の再発は認められない.潰瘍性大腸炎における直腸腟瘻に対して,症例により外科的治療が有効であると考えられた.
  • 大木 亜津子, 正木 忠彦, 松岡 弘芳, 阿部 展次, 跡見 裕
    2005 年 58 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性,大腸内視鏡検査にて多発大腸ポリープと診断された.ポリペクトミー施行し,病理診断は腺腫および炎症性・過形成性ポリープであった。また盲腸から上行結腸にかけて15mm大の粘膜下腫瘍(SMT)を4カ所認め,3カ所を内視鏡的に切除した.内視鏡的切除が困難であった1個については,腹腔鏡補助下上行結腸開窓ポリープ切除術を施行した.4個のSMTはいずれも粘膜下に存在し,好酸性顆粒を有する多型細胞が胞巣状に存在し顆粒細胞腫と診断された.細胞質内にPAS陽性顆粒を有し,免疫組織学的染色ではS-100蛋白・NSE(neuron-specific-enolase)陽性で神経原性と考えられた.本邦において大腸多発顆粒細胞腫の報告は自験例を含め6例であった.術前診断は困難で,稀ではあるが悪性化例もあることから確実な切除が必要である.
  • 武田 元信, 更科 廣寛, 布村 正夫
    2005 年 58 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸周囲膿瘍は日常,遭遇することが多い疾患であるが,排膿後も解熱しなかった症例で肝膿瘍を形成していた一例を経験した.患者は,肛門痛,発熱を主訴に来院,肛門後方5時方向に発赤をともなう坐骨直腸窩膿瘍を認め,直ちに入院し排膿手術を行った,排膿後一時解熱したが再度39℃の発熱をきたした.抗生物質投与を続けたが解熱はみられず39℃台の発熱が続き,数日して,右上腹部から背部の痛みを訴え始めたため,腹部超音波検査を行いS6に8cmの低エコー域を認めた.肝膿瘍を強く疑い,総合病院に転送し当日肝膿瘍ドレナージ術施行した.今回の症例のように普段は排膿により解熱するような直腸周囲膿瘍で解熱をみない症例で肝膿瘍を形成していた症例を経験した.このような健常人の症例は医学中央雑誌刊行会の過去20年の症例報告では見当たらなかったので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 梅枝 覚, 大北 喜基, 岩永 孝雄, 山本 隆行, 野地 みどり, 北川 達士, 松本 好市
    2005 年 58 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    人免疫不全ウイルス(HIV)感染症には直腸肛門病変をともなうことが比較的多いといわれており,直腸肛門病変から本感染症が発見される可能性がある.本例は肛門痛,肛門周囲膿瘍にて来院し,痔瘻根治手術術前採血にて,HIV感染症と診断され,手術時に肛門小窩に発生したAnal Human Papillomavirus感染症合併と診断された症例である.HIV感染症の肛門病変としては,尖圭コンジローマ,悪性リンパ腫,アメーバの報告が多いが,肛門小窩発生のsquamous papillomaの報告はない.HIV関連Anal Human Papillomavirus感染者はまた悪性化の可能性が高く,リンパ球CD4による経過観察が有用とされている.近年増加傾向にあるHIV感染症において,我々肛門科医はそれにともなう肛門病変を熟知し早期発見に努めるべきと思われる.今回痔瘻を契機に発見されたHIV感染症合併,肛門小窩発生squamous papillomaの一例を経験したので報告する.
  • 2005 年 58 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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