日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
58 巻, 10 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 松田 保秀
    2005 年 58 巻 10 号 p. 823-824
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 稲次 直樹
    2005 年 58 巻 10 号 p. 825-829
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    裂肛は食習慣・排便習慣・就学・就労・妊娠出産などのライフスタイルと,体質的要因としての肛門の解剖学的特徴・局所の血流・肛門括約機能などを背景として硬便,あるいは下痢便等の物理的化学的侵襲により生じることを概説した.そして裂肛の予防・治療において生活習慣病予防の指針が有用であることを示した.診断にあたっては指診・肛門鏡検査が有用であるが,肛門括約筋の緊張が高く疼痛が強い場合は疼痛を緩和した状態での診察を強調した.直腸肛門部癌も増加している今日,裂肛の診断で肛門部悪性腫瘍との鑑別はとりわけ重要である.さらなる裂肛の病態の解明のためには日常診療においてライフスタイルや体質的要因を可能な限り検索・記録・集積し,アンケートなどを通じて予後調査をし,これらを詳細に検討することが必要である.その中で新たな知見が得られるものと思われる.
  • 山名 哲郎, 岩垂 純一
    2005 年 58 巻 10 号 p. 830-834
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門括約筋のスパズムと肛門上皮の虚血が裂肛の成因に関与すると考えられるようになった1990年代以来,括約筋弛緩作用薬を用いた裂肛の薬物療法が多数報告されている.平滑筋への薬理作用として非アドレナリン非コリン性神経の伝達物質である一酸化窒素や細胞質内カルシウムレベルを低下させるカルシウム拮抗薬は平滑筋の弛緩作用を有する.一酸化窒素供与体であるニトログリセリンの局所投与は肛門管静止圧を低下させ治癒率63~92%と高い有効性を示すが,副作用として頭痛が高頻度に出現する.カルシウム拮抗薬の局所投与もニトログリセリンと同程度の治癒率を示し頭痛の副作用はほとんど出現しない.シナプス前神経終末からのアセチルコリンの放出抑制により神経伝達を阻害し筋弛緩作用を示すあるボツリヌス菌毒素の局所注射は治癒率53%~96%を示し,副作用としては一過性のminor incontinenceが報告されている.しかしこれらの薬物療法が側方内肛門括約筋切開の有効性を上回るというエビデンスはない.
  • 宮田 美智也, 家田 浩男, 川瀬 恭平, 三浦 由雄, 太田 章比古, 森 俊治
    2005 年 58 巻 10 号 p. 835-839
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    裂肛は硬便などの通過により肛門上皮に生じた裂創で,慢性化してくると肥大乳頭,見張り疣をともない,肛門狭窄をきたして難治となる.裂肛の治療方針は基本的には保存的治療であるが,軽快しない慢性裂肛は,外科的治療の適応となる.外科的治療法には用手肛門拡張術(AD),側方内括約筋切開術(LSIS),皮膚弁移動術(SSG)がある.
    明らかな肛門狭窄を呈する症例は,ほとんどLSISの適応となるが,全周性の多発裂肛が原因でおこる肛門上皮の瘢痕により肛門狭窄を生じたものや不適切な肛門手術による高度の肛門狭窄をともなうものに対してはSSGが適応となる.
    外科的治療の際,術式はその適応を十分に検討したうえで決定されるべきである.
  • 服部 和伸
    2005 年 58 巻 10 号 p. 840-843
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    慢性裂肛に対するニトログリセリン(NTG)軟膏の長期治療成績の評価を試みた.0.5%NTG軟膏を28例に,0.2%NTG軟膏を35例に投与した.0.5%あるいは0.2%NTG軟膏0.5gを一日2回肛門皮膚に塗布させた.0.5%NTG軟膏群は平均83カ月,0.2%NTG軟膏群は平均47カ月経過しており,追跡調査を施行した.0.5%NTG軟膏群28例中,「再発なし」5例(18%),「軽度症状あり」9例(32%),「LSIS施行」6例(21%),「SSG施行」3例(11%),「消息不明」5例(18%)だった.0.2%NTG軟膏群35例中,「再発なし」7例(20%),「軽度症状あり」13例(37%),「LSIS施行」7例(20%),「SSG施行」2例(6%),「消息不明」6例(17%)だった.長期的に60~70%の症例において手術を回避できた.以上より,NTG軟膏は裂肛の初期治療薬としての意義はあるものと思われる.
  • 早川 一博
    2005 年 58 巻 10 号 p. 844-848
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    裂肛に対するsliding skin graft(SSG)法は高度の狭窄をともなう慢性肛門潰瘍に対し,数少ない有効な手術法であるが,肛門縁に平行な創を作るため,瘢痕形成により異常知覚などの合併症を心配するむきもある.SSG法の適応に厳密な規定はないが,当院におけるプロトコールを示し,諸家の判断の一助となれば幸いである.また,SSG法変法であるところのESG法について,その工夫,理論と実際の術式について説明する.
  • 野澤 真木子, 下島 裕寛, 松島 誠, 高橋 知徳, 霧生 孝司, 曽川 慶同, 豊永 敬之, 完山 裕基, 松村 奈緒美, 畠山 知昭, ...
    2005 年 58 巻 10 号 p. 849-852
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    保存的療法で改善しない裂肛症例には直腸肛門内圧検査を施行.肛門管最大静止圧が低値の場合は保存的療法を優先するが治癒遷延症例にはLSISを必要とする場合がある.一方高値を示す症例にはLSISが適応となる.LSIS施行は十分に麻酔をかけ肛門の弛緩を得たのち行うが過剰な切開は避けることが大切である.LSIS後肛門管最大静止圧は急激に下降するとともに裂肛治癒を認めた.
  • 松藤 凡, 荒木 夕宇子, 中村 晃子, 藤田 真智子, 草川 功
    2005 年 58 巻 10 号 p. 853-856
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    小児の裂肛は乳児期から幼児期に多く見られる.女児に多く6時と12時に生じやすい.排便習慣が確立する5歳以降には少ない.日常の小児外来で頻繁に遭遇する疾患であり,排便時の疼痛,出血,肛門腫瘤(見張り疣)などを主訴に来院する.便秘や硬便をともなっていることが多く,排便にともなう肛門粘膜の機械的損傷が原因と考えられている.乳幼児にみられる排便時の鮮血のほとんどは裂肛によるものであり,視診で裂肛が確認できれば疼痛をともなう直腸診や侵襲の大きな検査は避けるべきである.激痛のため患児は,排便を避けるようになり,このことがさらに便秘を悪化させて裂肛を慢性化させる.この悪循環を断つことが重要である.小児の裂肛は,便秘の治療を主体とした保存的治療に反応し,外科的な治療を要することは稀である.新生児や保存的な治療に反応せず病状が遷延するものでは,先天性肛門疾患,炎症性腸疾患,幼児虐待などを鑑別する必要がある.
  • 小杉 光世, 中島 久幸, 田畑 敏
    2005 年 58 巻 10 号 p. 857-860
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    裂肛の病態と診断,薬物療法と外科的治療について総論的解説が詳細にされ,さらにニトログリセリン軟膏治療,側方筋切開術,皮弁形成術と小児の裂肛が執筆されている.
    不整形の裂肛で潰瘍面が内括約筋を超えた深掘れの特殊型は,STDや炎症性腸疾患(主にクローン病)を疑う.
    多くの著者が肛門の物理的裂傷による慢性化移行を考えている.しかし慢性裂肛病態は直腸肛門静止圧との関連や血流不全説が有力である.
    著者は診断,検査,治療の選択チャートを本邦における治療選択のまとめとして図示した.
    またNTG軟膏療法はその作用機序から筋切開(sphinctero-tomy)とする表現は妥当とはいえず,私は保存的療法の一法と考える.
  • 池内 浩基, 中埜 廣樹, 内野 基, 中村 光宏, 野田 雅史, 柳 秀憲, 柳生 利彦, 外賀 真, 橋本 明彦, 山村 武平
    2005 年 58 巻 10 号 p. 861-865
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸肛門吻合術は,粘膜切除法の改良により,最近では55.9%の症例で1期的手術が行われていた.また,周術期死亡率は年代別に見ると,3.4%から1.3%に減少し,早期pouch機能率は97.4%から99.7%に向上するなど,手術の安全性が向上したことが明らかとなった.
    排便機能は排便回数の中央値が5回で,soilingは昼間で90%以上,夜間でも60%以上の症例で見られなかった.
    長期的なpouch機能率は経過観察期間にも左右されるが,粘膜切除を歯状線を含めて切除するようになり,痔瘻が原因でpouch機能が維持できなくなる症例は減少していた.
    長期合併症として,pouchitisの累積10年発症率は12%と欧米の報告よりも低率であったが,pouchitisに肛門病変を合併した症例の予後は極めて不良であった.また,潰瘍性大腸炎からクローン病へ病名が変更になる症例が累積20年で4%存在した.
  • 小金井 一隆, 木村 英明, 杉田 昭, 福島 恒男, 嶋田 紘
    2005 年 58 巻 10 号 p. 866-873
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術の長期予後を術後10年以上経過した25例で検討した.手術に関連した死亡はなく,10年後,回腸嚢は全例で機能し,一日最多排便回数は平均7回,漏便は軽度なものを含め8%に認めた.一般的合併症では腸閉塞(36%)が最も多く,大腸全摘後の代謝性合併症では胆嚢結石(20%),脱水症(12%),尿路結石(8%)があった.回腸嚢炎(25%),残存直腸炎(25%),吻合部狭窄(20%)を認めたが,外科的治療を要した例はなかった.23例(92%)(のべ80回)の内視鏡で採取した下部直腸,肛門管と回腸嚢の粘膜に癌またはdysplasiaはなかった.
    本術式では回腸嚢,吻合部に関連する合併症が少ないため回腸嚢機能率が高く,排便回数,漏便からみた排便機能は良好であった.残存する下部直腸,肛門管の炎症は保存的に治療でき,癌またはdysplasiaのriskは少ないと考えられた.
  • 板橋 道朗, 番場 嘉子, 山田 暁輝, 廣澤 知一郎, 小川 真平, 亀岡 信悟
    2005 年 58 巻 10 号 p. 874-878
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する標準術式は回腸嚢肛門(管)吻合であるが,すべての症例に適応できるものではない.教室で経験した潰瘍性大腸炎手術症例165例中,自然肛門温存手術は127例(77%),回腸直腸吻合術は19例(11.5%),全大腸切除・回腸人工肛門造設術は36例(21.8%)に行われていた.回腸直腸吻合術は排便機能が良く入院期間も短いが,残存直腸の炎症は20~45%に出現し,約4%の癌化のリスクをともなう.適応は,直腸の炎症が軽度な高齢患者とindeterminate colitisである.大腸全摘・回腸人工肛門造設術では,永久回腸人工肛門となるがQOLは保たれていた.適応は,肛門機能不良例,癌化例,歯状線直上までの深い潰瘍症例や高齢者などである.
    回腸直腸吻合術および大腸全摘・回腸人工肛門造設術は,適応となる患者は少数であるが有効な術式である.長期経過を把握した上で術式選択を行うべきであろう.
  • 三木 誓雄, 荒木 俊光, 楠 正人
    2005 年 58 巻 10 号 p. 879-884
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術後のQOLは,pouch-related complication(PRC)発症の有無により規定される.PRCは回腸嚢炎(原発性,2次性),late abscess,難治性瘻孔,outlet obstructionなど多岐にわたる.PRCに対するsalvage surgeryでは,まず局所の感染を制御することが肝要で,さらに回腸嚢炎の場合primaryあるいはsecondaryか明確に診断し,secondaryの場合はapical bridgeなどの原因病態を外科的に是正する.またlate abscessに対してはinterventional radiologyが,難治性瘻孔に対してはSeton法を用いたdrainageが有効である.感染が充分に制御された後に肛門括約筋機能を再評価することで,再肛門吻合の可否を決定し,salvageの成否を予測することができる.
  • 杉田 昭, 木村 英明, 小金井 一隆, 鬼頭 文彦, 嶋田 紘, 福島 恒男
    2005 年 58 巻 10 号 p. 885-890
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    初回腸切除から10年以上を経過したCrohn病73例を対象として本症に対する腸切除例の長期経過を検討した.症例は小腸型9例,大腸型4例,小腸大腸型59例(1例不明)で,平均年齢は43歳,初回手術からの平均経過期間は16年であった.再手術は75例中,53例(70.5%)に行われ,累積再手術率は5年で27.5%,10年で52.7%であった.複数回の手術例は53例で,2回が43%,3回が11%,4回が12%,5回が3%,6回が3%を占め,手術時期は初回手術後15年以内であった.人工肛門造設術は30%に施行され,直腸,肛門病変(難治性痔瘻,直腸狭窄,直腸腟瘻),腸管病変の再燃,癌であった.死亡例は3例(4%)で,うち2例はそれぞれ.在宅静脈栄養のカテーテル感染と腹腔内膿瘍遺残による敗血症であった.社会復帰は89%(55/62例)であった.腸切除術後長期経過したCrohn病症例では再手術はあるものの,術後のQOLは良好と考えられた.
  • 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 高橋 賢一, 小川 仁, 佐々木 巌
    2005 年 58 巻 10 号 p. 891-896
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    240例のCrohn病手術例のうち,狭窄形成術は計151例に対して行い,2回目手術以降は狭窄形成術施行例の比率が増加していた.施行部位は,回腸,大腸,回盲弁などに行われ,回腸がもっとも多い適応部位であったが,2回目以降の手術では前回吻合部,前回狭窄形成部に対しても狭窄形成術が行われた.施行術式は,Heineke-Mikulicz法が最も多いが,病変の長さ,固さに応じて他の術式も行われた.狭窄形成術の長期成績を累積再手術についてみると,手術施行部位では狭窄形成部と吻合部とで差はなく,症例毎でも狭窄形成術併用群と,腸切除単独例とでも差はなかった,また,狭窄形成術併用群と腸切除単独群との比較では,病変長が長いにもかかわらず切除腸管の長さ,残存小腸長に差はなく狭窄形成術による腸管温存効果が認められた.狭窄形成術は,腸管温存効果も見られ,繰り返す狭窄性小腸病変には良い適応で切除に匹敵する成績が得られた.
  • 二見 喜太郎, 河原 一雅, 東 大二郎, 城下 豊生, 平野 憲二, 富安 孝成, 有馬 純孝
    2005 年 58 巻 10 号 p. 897-902
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    3年以上肛門部の経過観察を行っているCrohn病259例の長期経過を検証した.経過良好例31.3%,進展・増悪例34.0%,症状維持例34.7%であった.進展・増悪例の肛門病変としては痔瘻・膿瘍が最も重要であり,次に肛門狭窄であった.また,種々の肛門病変の混在,および大腸に病変のみられる症例に進展・増悪例が多くみられた.肛門病変への対応としては痔瘻・膿瘍への外科治療が肝要であった.痔瘻根治術の適応は局所所見とともに腸管病変を評価し,しかも長期的な肛門機能も考慮して慎重に行うべきである.seton法ドレナージは根治は望めないが,症状の軽減には長期的にも優れており,Crohn病の痔瘻・膿瘍には第1選択の治療法と考える.
feedback
Top