日本大腸肛門病学会雑誌
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59 巻, 1 号
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  • 野津 聡, 山口 研成, 西村 洋治
    2006 年 59 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCTにてCTコロノグラフイー(CTC)を作成した大腸癌31病変を対象とし,単純および造影CT検査における多断面再構成(MPR)像のCT値と組織学的因子(組織型,深達度,リンパ管および静脈侵襲)との関連性から,CT値測定の意義を検討した.CT値は病変の最大CT値(Max)と平均CT値(Mean)を単純および造影CT検査で計測した.Scheffeの多変量分散分析で有意差を認めたものは1.深達度と単純CTのMax,Max-Mean,2.リンパ管侵襲と単純CTのMax,造影CTのMax,Max-Mean,3.静脈侵襲と単純および造影CTのMaxであった.判別分析では,組織型・静脈侵襲に関しては単純CTのMax-Mean,深達度・リンパ管侵襲に関しては造影後のMaxを用いた判別式において正判別率70%以上を示した.大腸癌MPR像のCT値は病理組織所見と相関があり,腫瘍の進展を予測する上で有効な検査法になる可能性が考えられた.
  • 早田 浩明, 滝口 伸浩
    2006 年 59 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.1976年12月13日,腸閉塞のため近医で開腹手術を受けた.下行結腸癌の診断で下行結腸切除と双孔式人工肛門造設術を施行された.不自由を感じないため,人工肛門を閉鎖せずに生活してきた.2000年12月4日下腹部痛を主訴に当科初診した.人工肛門部空置側付近の皮膚に熱感を認め,皮膚発赤部をドレナージし造影したところ,人工肛門付近の空置結腸と瘻孔を形成していた.入院精査し空置された結腸癌と診断し,2001年2月6日手術を行った.腫瘍は空置部結腸に位置し,空腸,皮膚に浸潤していた.瘻孔皮膚を含め人工肛門部と癌を一塊にして摘除した.空腸,結腸再建し人工肛門を閉鎖した.腫瘍は高分化腺癌,si(空腸,皮膚),ly1,v1,n(-),stage IIIaであった.空罩結腸の大腸癌報告は本邦では極めて少なく,本症例は貴重な症例と考えられ報告した.
  • 柴尾 和徳, 中山 善文, 平田 敬治, 永田 直幹, 伊藤 英明
    2006 年 59 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Tailgut cystは直腸後面に存在する嚢胞性腫瘤で,比較的稀な疾患である.今回,我々はtaigut cystの手術症例を経験したので報告する.症例は52歳の女性.黒色便を認めたために近医を受診した,内視鏡検査等で異常を認めず,精査のために施行したCT,MRIで骨盤腔内の直腸右背側に13×10cmの嚢腫様病変を認めた.骨盤内嚢胞性腫瘤の術前診断で,5月23日経仙骨式腫瘤摘出術,尾骨合併切除術を施行した.腫瘤は13.5×10×8cmの嚢腫状で,中に灰緑黄色,クリーム状の約400mlの液体が認められた.病理所見では,嚢胞壁に扁平上皮の他,絨毛円柱上皮,円柱上皮が認められ,tailgut cystと診断された.尾骨合併切除を追加することで大きなtailgut cystでも経仙骨的に摘出が可能であり,より低侵襲に手術が行えた.今後,画像診断による定期的フォローアップの予定である.
  • 梅枝 覚, 肥満 智紀, 岩永 孝雄, 山本 隆行, 野地 みどり, 北川 達士, 松本 好市
    2006 年 59 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    今回われわれは直腸尿道瘻を形成した骨盤直腸窩痔瘻(IV型痔瘻・隅越分類)に対して根治手術を施行し,痔瘻および直腸尿道瘻を治癒し得たきわめて稀な症例を経験したので報告する.症例は,肛門周囲腫脹,肛門痛にて近医を受診,切開排膿術をうけ,当院を紹介された70歳の男性.来院時,気尿および排尿時に尿が濁ると訴えがあり,尿道鏡および,直腸肛門の経肛門的超音波検査,MRI検査およびCT検査を施行し,直腸尿道瘻を形成した骨盤直腸窩痔瘻(IV型痔瘻・隅越分類)と診断された.直腸肛門の経肛門的超音波検査,MRI検査およびCT検査は痔瘻,直腸尿道瘻の診断にきわめて有用であり,適切な診断と治療にて根治術は可能と考えられた.
  • 山下 和城, 久保添 忠彦, 山村 真弘, 松本 英男, 浦上 淳, 平井 敏弘, 角田 司
    2006 年 59 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor(GIST)に対するimatinib mesylate(IM)の抗腫瘍効果は60%以上と優れているが,頻度的に少ない大腸GISTに対する効果,neoadjuvant(NA)の有効性など不明な点も多い.今回,大きさ,部位的に切除困難が予想された若年者直腸GISTに対してIMによるNAを行い,容易に切除可能となった症例を経験したので報告する.症例は32歳,男性で便通異常を主訴に近医を受診した.直腸巨大GISTと診断されたが,切除困難を理由に当院に紹介された.直腸,膀胱を圧排する長径10cm超の直腸GISTを認めた.IMによるNAを6カ月間行い,腫瘍は23.8%縮小した.手術は腹会陰式直腸切断術を施行したが,ひとまわり縮小したために切除は容易で下腹:神経,骨盤神経叢も確認・温存できた.本症例はIMのNAによりresectabilityの上昇,神経温存などの点でNAの利点を十分享受できたと考えられた.
  • 会沢 雅樹, 伊藤 正直, 佐々木 廣吉, 佐々木 広憲, 横溝 肇, 石橋 敬一郎, 吉松 和彦, 藤部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2006 年 59 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな大腸扁平上皮癌の1例を経験した.症例は72歳,女性.2003年6月,上腹部腫瘤,便秘を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で肝彎曲付近に高度の狭窄をともなう全周性の腫瘍を認め,生検で中分化扁平上皮癌と診断した.開腹所見では広範な腹膜播種を認めたが,可及的に結腸右半切除術を行った.組織学的には腺癌成分をともなわない中分化扁平上皮癌,3型,ss,nl(+),P3,Hl,M(-),stage IVであった.他臓器に原発病変はなく,大腸原発の扁平上皮癌と診断した.術後はlow dose FP療法を施行したが播種性腫瘤が増大し,CPT-11+5'-DFURに変更した.一時的に腫瘍マーカーの低下をみたが腫瘤は増大し,術後5カ月で癌死した.大腸扁平上皮癌は非常にまれで,検索し得た本邦報告例は自験例を含めて18例であった.診断時に高度進行例が多く,予後不良であった.進行例に対する治療法の確立や発生機序の解明にはさらなる症例の集積が必要と考える.
  • 荒井 勝彦, 木村 英明, 小金井 一隆, 杉田 昭, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2006 年 59 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は23歳男性,平成15年11月発症の重症潰瘍性大腸炎で内科的治療に抵抗性のため,平成16年3月開腹手術施行された.開腹所見で結腸は全体にわたり炎症所見が認められ,さらに回盲部より連続性に回腸に約1mにわたる炎症所見を認めた.手術は回腸を温存し.結腸全摘.回場人工肛門,S状結腸粘液瘻を造設した.切除標本の病理所見では回盲弁ゆら回腸に向かって結腸と同様の炎症と潰瘍を認めたが,肉芽腫や陰窩膿瘍は認めなかった.術後,温存しな腸管炎症の波及が危惧されたが大腸切除後に残存小腸の炎症は鐐静化し,術後9日目より炎症の再燃防止のため5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)を投探した.5カ月後の人工肛門閉鎖時には,回腸の炎症は肉眼的にも病理学的にも消失していた.
  • 本邦再発例の検討を加えて
    松井 康司, 高橋 孝夫, 杉山 保幸
    2006 年 59 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    再発例2例を含む直腸GISTの3症例を報告する.症例1は54歳の女性で,前医での骨盤腔内平滑筋腫に対する手術後4年目の局所再発に対し,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織検査で直腸GISTと診断され,前医での切除標本の免疫組織染色による再検討から,GISTの再発であることが確認された.症例2は54歳の男性で,直腸GISTに対して腹会陰式直腸切断術を施行後7カ月目に両肺に多発転移を認めた.右下肺野の腫瘍の試験切除でGISTの転移と診断し,STI571を投与したところ,画像診断上腫瘍は消失し,2年4カ月間再発を認めていない.症例3は43歳の男性で,便失禁と便柱狭小化で発症後に肛門痛,発熱をきたし,経過観察中に腫瘍の増大・縮小を認めたため,肛門周囲膿瘍を疑った.しかし,生検でGISTと診断され,腹会陰式直腸切断術を施行した.直腸GISTの本邦報告例を再発の観点から分析・検討したので,その結果についても併せて報告する.
  • 自験17例を含む本邦報告94例の集計と検討
    斉田 芳久, 炭山 嘉伸, 長屋 二郎, 中村 寧, 中村 陽一, 榎本 俊行, 片桐 美和, 草地 信也
    2006 年 59 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    悪性大腸狭窄に対して姑息的self-expandable metallic stent(EMS)挿入術を行った自験17例を本邦報告77例とあわせて集計することにより本法の現状と有用性,問題点を探った.自験例では挿入にともなう早期偶発症はなく,挿入率も100%であった.本邦報告例では,挿入部位は直腸が約半数,原因疾患は原発性大腸癌が約半数,挿入成功率は100%,臨床的有効率は93%であった.再狭窄が12例13%に認められたがEMS再挿入で半数は対応可能であった.migrationは7例7%,穿孔は3例3%に認めた.挿入期間は1~576日,平均145日,関連死亡は無かった.本法は,手術に比較して人工肛門を回避することが可能であるだけでなく,安価安全で有効率も高く治療時間も短い.根治術が困難な出血をともなわない全周性狭窄型大腸癌に対しては人工肛門造設術にかわり,今後第一選択的治療法になりうる.本邦でも一日も早い認可が待たれる.
  • 日高 秀樹, 佛坂 正幸, 千々岩 一男
    2006 年 59 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1991年1月から2003年12月までに当科およびその関連施設で手術された大腸穿孔症例は24例で,男女比は14:10,平均65.2歳であった.穿孔の原因は憩室7例,悪性腫瘍6例,医原性5例,特発性3例,虚血性,放射線性,外傷性が各1例で,穿孔部位はS状結腸と直腸に多かった.在院死亡例は5例あり,いずれも重篤な基礎疾患を有し,発症から手術までの時間が長くて術前ショック状態のものが多かった.大腸癌穿孔は5例あり,1期的切除術を行った4例は全例が無再発生存中である.他の1例は肝転移を有し,人工肛門造設術後2期的に原発巣を切除されたが,化学療法との併用で術後2年6カ月経過した現在も生存中である.大腸穿孔例では,合併基礎疾患の管理と早期の診断および治療とが必要である.大腸癌穿孔例では,状態により1期的切除も施行してよいと考えられた.
  • 岡本 規博, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次, 小出 欣和, 青山 浩幸, 勝野 秀稔, 丸田 守人
    2006 年 59 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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