きわめてまれな大腸扁平上皮癌の1例を経験した.症例は72歳,女性.2003年6月,上腹部腫瘤,便秘を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で肝彎曲付近に高度の狭窄をともなう全周性の腫瘍を認め,生検で中分化扁平上皮癌と診断した.開腹所見では広範な腹膜播種を認めたが,可及的に結腸右半切除術を行った.組織学的には腺癌成分をともなわない中分化扁平上皮癌,3型,ss,nl(+),P3,Hl,M(-),stage IVであった.他臓器に原発病変はなく,大腸原発の扁平上皮癌と診断した.術後はlow dose FP療法を施行したが播種性腫瘤が増大し,CPT-11+5'-DFURに変更した.一時的に腫瘍マーカーの低下をみたが腫瘤は増大し,術後5カ月で癌死した.大腸扁平上皮癌は非常にまれで,検索し得た本邦報告例は自験例を含めて18例であった.診断時に高度進行例が多く,予後不良であった.進行例に対する治療法の確立や発生機序の解明にはさらなる症例の集積が必要と考える.
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