日本大腸肛門病学会雑誌
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60 巻 , 1 号
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原著
  • 秦 政輝, 華 見, 北村 大介, 前多 力, 北島 政幸, 笠巻 伸二, 坂本 一博, 落合 匠, 長岡 功, 鎌野 俊紀
    2007 年 60 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    われわれはin vitroにおいてクエン酸第一鉄 (SFC) の好中球機能に及ぼす影響について検討し, SFCが活性酸素産生能, 遊走能など好中球機能を抑制することにより抗炎症効果を発揮することを示している. 今回5%デキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 溶液を用いたラットの潰瘍性大腸炎 (UC) モデルを用いてin vivoにおけるSFCの抗炎症効果について検討した. DSS投与群には5%DSS溶液を10日間摂取させた. 一方, SFC+DSS投与群には, DSS投与3日前からSFCを経口投与 (2mg/body) し, その後, DSSとともに10日間SFCを投与した. その結果, DSS投与群では有意な白血球数増大が認められたのに対し, SFC+DSS投与群では白血球数増大が有意に抑制された. また, DSS投与群において有意に大腸の長径が短縮したのに対し, SFC+DSS投与群では短縮が有意に改善された. さらに, DSS投与群に対し, SFC+DSS投与群では有意にびらん面積が縮小した. 以上の結果より, ラットの潰瘍性大腸炎モデルにおいてSFCは抗炎症効果を発揮する可能性が示唆された.
  • 横溝 肇, 瀧井 康公
    2007 年 60 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術症例868例の術中腹腔内洗浄細胞診 (以下, CY) の意義を検討した. 壁深達度では, m・sm・mp例にCY陽性例はなく, ss・a1に比べse・a2・si・ai例にCY陽性例が多かった. 腹膜播種やリンパ節転移では, その程度が高度なほどCY陽性例が多かった. 組織型では, 分化度の低いものにCY陽性例が多かった. 累積5年生存率は, CY陽性例が陰性例に比べて有意に予後不良であった. 多変量解析では, CYは予後に関わる重要な因子であった. 生存率をCYと腹膜播種 (以下, P) の組み合わせで比較すると, P陰性群とP陽性群のいずれにおいてもCY陰性の症例の予後が有意に予後良好であった. 根治度A・B例における腹膜再発を同様にみると, P陰性群とP陽性群のいずれにおいてもCY陰性例で腹膜再発が少なかった. 以上より, CY陽性例は, 進行の程度が高度なものに多く認められ, CYが重要な予後因子であることが示唆された.
  • 高橋 敬二, 村山 宗明, 野中 博子, 渋谷 和俊, 三木 一正
    2007 年 60 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌の組織発生では, 腺腫・癌腫連鎖説およびde novo 発癌説の2説が認知され, 組織形態の変化に関与する種々の遺伝子変異が知られている. K-ras 変異も重要な因子であるが, これにともなう組織形態変化の詳細については不明な点が多い. 本研究は, K-ras 変異と腺管構造の変化との相関を明確にすることを目的とし, 最大径10mm以下の大腸隆起型上皮性腫瘍を構成する異型腺管の形態的特徴とそれらのK-ras 変異について検討した. この結果, 小規模隆起性病変が絨毛状腺管領域単独で構成されることが希有であること, K-ras 変異が管状腺管領域に比して絨毛状腺管領域で高頻度に生じていること, ならびに管状腺管領域でも同一病変内に絨毛状腺管領域を有する場合でより高頻度にK-ras 変異が生じていることを明らかにした. 以上より, 管状腺管から絨毛状腺管への表現形質の転換にK-ras 変異が深く関与すると同時に, 表現形質の転換に先行して, K-ras 変異が生ずる可能性が示唆された.
臨床研究
  • 辻 剛俊, 佐々木 賀広, 福田 真作, 菊池 英純, 佐々木 聡, 千葉 裕樹, 吉村 徹郎, 三上 達也, 棟方 昭博, 鬼島 宏
    2007 年 60 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    有茎性大腸ポリープのポリペクトミーにともなう後出血のリスクは, 栄養動脈径に相関することが予想される. 研究の目的は, 有茎性大腸ポリープの形状変数と栄養動脈径の相関を調べ, 出血のリスクファクターを決定することである. 大腸癌手術標本に見られた有茎性ポリープ47病変 (腺腫40例, 腺腫内癌4例, 過形成ポリープ3例) を用いた. ポリープ頭部の横径5.9±2.8mm, 縦径4.8±1.9mmであった. ポリープ茎部の長さ5.8±3.2mm, 直径は2.0±0.5mmであった. 茎部における動脈の最大径は95.7±33.0μmであった. 動脈数は1.4±0.5本であった. 動脈の直径は茎部直径と正相関 (r=0.36, p<0.0001) することがわかった. それに対し, 動脈の直径とポリープ頭部の最大径との相関は低かった (r=0.12, p>0.05). 有茎性大腸ポリープは, 茎が太くなると栄養血管も太くなることが予測され, ポリペクトミー後の出血のリスクファクターの要因のひとつと考えられた.
  • 知久 毅, 佐野 渉, 田代 亜彦
    2007 年 60 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    待期的大腸切除術での機械的腸管前処置として, PEGを用いた方法とBrown変法を受容性の観点から比較検討した. 対象は当科における開腹下の待期的大腸切除術予定症例68例で, PEGで前処置を行う群 (P群) とBrown変法で前処置を行う群 (B群) に術前に無作為割り付けを行った. (33例がP群, 35例がB群.) 術後経過として, 術後排ガスまでの期間, 絶食期間, 術後在院日数, SSIの発症率 (P群 : 16.7%, B群 : 12.1%) を比較した結果, それぞれ両群間で有意差を認めなかった. 術者に対するアンケート調査では, 前処置としての評価はともに良好であり総合評価には差がなかった. 患者に対するアンケートからは, B群の方が明らかに受容性良好であることが示された. 以上の結果より, 待期的大腸手術での機械的腸管前処置としての効果には両群で差がないが, 受容性の面ではBrown変法の方が優れていることが示唆された.
症例報告
  • 田中 智子, 藤本 三喜夫, 宮本 勝也, 横山 雄二郎, 森藤 雅彦, 中村 浩之, 武藤 毅, 中井 志郎
    2007 年 60 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    呼吸困難が出現し緊急手術にて救命しえた慢性特発性大腸偽性腸閉塞症の1例を経験したので報告する. 症例は60歳男性. 以前より便秘にて近医通院中であった. 腸閉塞症状が出現し近医入院, 保存的加療を行うも増悪するため当院緊急入院となった. 腹部は著明に膨満し, 腸雑音は消失していた. 徐々に内視鏡的ガス抜きを施行するも腹部膨満の増悪と呼吸障害が出現, 全身状態が悪化, 緊急手術を施行した. 大腸は盲腸から直腸まで著明に拡張し, とくにS状結腸に顕著であった. 大腸亜全摘術, 回腸人工肛門造設術を施行した. 術翌日には呼吸状態, 循環動態ともに改善し, 術後1年以上経過した現在特記すべき障害は認めていない.
    本症は腸管に器質的閉塞・狭窄や原因となる基礎疾患がないにもかかわらず, 大腸のみに腸閉塞様の症状を繰り返す疾患であるが, 保存的加療抵抗性の場合には外科的切除術も治療の選択肢の一つにあげるべきであると考えられた.
  • 佐々木 みのり, 佐々木 巌, 増田 芳夫
    2007 年 60 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    bowenoid papulosis (以下BPと略す) は尖圭コンジローマと臨床所見が酷似するハイリスクHPV関連のSTDである. 本疾患は, 病理所見はBowen病に類似するが, 臨床経過は良性で自然消退の報告も多い. しかし同時に悪性化や子宮頸癌合併の報告もあり注意深い経過観察が必要な疾患でもある. 今回我々はBPの一例を経験したので報告する.
    症例は34歳女性. 2002年8月に肛門性交の機会があり, 同年秋頃より肛門周囲に丘疹が出現. 皮疹の増加と拡大を認め2003年1月当院受診した. 肛門周囲に尖圭コンジローマと, その中に混在する黒褐色の扁平な丘疹を認めた. BPを疑い混在する尖圭コンジローマと同時に切除焼灼した. 皮疹の組織像ではボーエン病類似の像を呈しBPと診断した. その後BPと思われる皮疹の再発を二度繰り返したが, その都度切除焼灼を行い2003年6月を最後に再発を認めていない.
  • 岩川 和秀, 清地 秀典, 杉下 博基, 井上 仁, 梶原 伸介
    2007 年 60 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    肛門管付近に発生し臀部腫瘤を形成したgastrointestinal stromal tumor (GIST) の1例を経験したので報告する. 症例は72歳, 男性で, 主訴は臀部腫瘤. 約1年前より臀部の腫瘤に気づき増大するため形成外科にて生検を受けGISTが疑われ外科に紹介された. 肛門指診にて肛門縁より臀部に約10cmの腫瘤を触知した. MRIにて下部直腸から右臀部に伸展するダンベル状の腫瘤を認めた. 肛門を原発とするGISTと診断し腹会陰式直腸切断術を行い, 臀部の欠損に対しては右大殿筋によるV-Y皮弁を行った. 病変は肛門管レベルを中心に肛門内は粘膜下腫瘍状に肛門外は皮下に充実性腫瘤を形成していた. 病理検査にて腫瘍は紡錘形で束状, 交錯性に配列し, 核分裂像は2/50HPFで, 免疫染色にてKIT蛋白陽性, CD34陽性, S-100蛋白陰性であり, 肛門管原発GIST, 悪性度は境界領域と診断した. 本例はGISTの発生, 発育を考えるうえで興味深い症例と思われた.
  • 酒田 和也, 伊豆蔵 正明
    2007 年 60 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は35歳, 女性. 子宮内膜症で婦人科に通院中であり, 月経前に便秘が出現していた. 腹部膨満が出現したため入院となり, 大腸イレウスと診断された. 保存的治療を開始したが改善せず, 手術の方針となった. 直腸に手拳大の腫瘤性病変を認め, ハルトマン手術とした. 切除標本の病理組織学的検査で直腸子宮内膜症と確定診断された.
    大腸の子宮内膜症による腸閉塞の本邦報告は過去に38例のみであったが, 子宮内膜症の既往のある性成熟期の女性で, この疾患の可能性を念頭に置き, 月経に随伴する症状の詳細な聴取を行うことが必要である.
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