日本大腸肛門病学会雑誌
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60 巻, 5 号
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臨床研究
  • 宮崎 道彦
    2007 年 60 巻 5 号 p. 251-255
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    2003年6月1日から2005年4月30日の期間に手術治療を施行した全身性疾患を有する肛門疾患24例, 年齢は26~92歳 (中央値67.5歳), 男性16例, 女性8例をretrospectiveに検討した. 併存疾患のうちわけは透析中慢性腎不全5例, 中枢神経, 筋疾患5例, 脳, 心筋梗塞後抗血栓療法併用症例6例, 膠原病2例, 糖尿病2例, その他4例 (播種性血管内凝固症候群1例, 肺結核1例, 甲状腺腫1例, アルコール性肝炎1例) であった. 肛門疾患のうちわけは痔核, 粘膜脱18例, 痔瘻 (肛門周囲膿瘍) 3例, 出血性直腸潰瘍3例であった. 再手術は初回予定手術21例中1例, 緊急手術3例中2例 (再緊急手術), 計3例 (9.1%) に必要であった (内外痔核1例, 出血性直腸潰瘍2例). 全身疾患を有する患者への肛門待機手術は慎重な態度で臨めば安全に行うことが可能である.
  • 番場 嘉子, 板橋 道朗, 廣澤 知一郎, 小川 真平, 野口 英一郎, 竹本 香織, 城谷 典保, 亀岡 信悟
    2007 年 60 巻 5 号 p. 256-259
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    目的 : γナイフ治療を施行した大腸癌脳転移症例について臨床学的特徴について検討する.
    対象・方法 : 当院においてγナイフ治療を施行した大腸癌術後脳転移症例5例を対象とし, その臨床的特徴, 治療効果および予後について検討した.
    結果 : 平均年齢は56.7歳, 男女比は3 : 2, 原発病巣の治療後脳転移を来した症例は4例, 多発性脳腫瘍の診断後に大腸癌と診断された症例が1例であった. 脳転移診断時に先行する肺転移は全例に, 肝転移は3例に認められた. 原発巣手術から肺転移までの期間は, 平均19.5カ月, 脳転移までの期間は, 平均38.2カ月であった. 全症例で脳症状の発現後に画像診断により脳転移の診断されていた. 脳転移は多発が1例, 単発が4例であった. 全症例にγナイフを施行し, 症状の軽快や消失を認めた. 異時性脳転移から死亡までの期間は3.0カ月であった.
    結語 : 脳転移症例の予後は不良であったが, γナイフ治療によりQOLの向上を認めた. また血行性転移後の長期経過症例では脳転移を考慮した十分な経過観察が必要である.
症例報告
  • 嵯峨山 健, 池内 浩基, 中埜 廣樹, 内野 基, 中村 光宏, 野田 雅史, 柳 秀憲, 竹末 芳生, 應田 義雄, 松本 譽之, 山村 ...
    2007 年 60 巻 5 号 p. 260-263
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    回腸嚢肛門吻合術 (以下, IPAA) 時の肛門管粘膜切除部に扁平上皮内癌を合併したきわめて稀な潰瘍性大腸炎 (以下, UC) の1例を経験した. 症例は65歳女性. 発症より10年後の内視鏡検査でS状結腸癌およびその周囲にdysplasiaを認め, 2期的IPAAを施行した. 肛門管粘膜切除部の病理組織学的検査で扁平上皮内癌を認めた. 術後経過は良好で, 術後1年現在再発は認めていない. UCに肛門管癌を合併することはきわめて稀である. 現在まで回腸嚢肛門管吻合術 (IACA) 後の遺残肛門管粘膜に腺癌を合併した報告例が5例あり, IPAA時の肛門管粘膜切除部に腺癌を合併した報告例は1例のみで, 肛門管粘膜切除部に扁平上皮癌を合併した症例は自験例が第1例目であった.
  • 馬場 秀雄, 及川 太
    2007 年 60 巻 5 号 p. 264-268
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    完全型虫垂重積症を呈した虫垂子宮内膜症の1例を経験したので報告する. 症例は34歳, 女性. 血便を主訴に前医を受診し, 大腸内視鏡検査で盲腸腫瘍が見つかり当院を紹介された. 内視鏡検査では虫垂開口部付近に粘膜下腫瘍様の像を呈するポリープ状病変を認めた. 注腸検査では盲腸に3cm大の隆起性病変を認めた. 腹部CT検査では盲腸内腔に中心部がhighな隆起性病変を認めた. 以上より虫垂重積症と診断し腹腔鏡下手術を施行した. 骨盤内腹膜に子宮内膜症を認め, 盲腸内に重積した虫垂を確認し回盲部切除を施行した. 病理組織検査で虫垂全長にわたり子宮内膜症を認め, 子宮内膜症が原因で形成された虫垂重積症と診断した. 完全型虫垂重積症を呈した虫垂子宮内膜症は稀であり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 石塚 直樹, 石橋 敬一郎, 大澤 智徳, 横山 勝, 中田 博, 石田 秀行, 糸山 進次
    2007 年 60 巻 5 号 p. 269-275
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    結腸内分泌細胞癌の悪性度と治療法を考察するうえで興味ある症例を経験したので報告する. 症例は38歳, 女性. 3型横行結腸癌に対し, 結腸左半切除術 (D3), 腹壁合併切除を施行した. 病理組織学的検索では, 低分化型腺癌の形態を示す細胞の増殖が主体で, 免疫染色では, chromogranin Aおよびsynaptophysinが陽性であり, 内分泌細胞癌, pSE, ly1, v3, pN1, sH0, cP0, cM0, f Stage IIIaと診断した. 術後補助化学療法としてUFTの内服を開始したが, 2カ月で急速に増加する腹水と腸間膜に径5cm前後の多発リンパ節転移を認めた. 化学療法を塩酸イリノテカン (CPT-11) に変更したが, 術後9カ月で原癌死した. 原発巣のvascular endothelial growth factor (VEGF), VEGF-C, thymidine phosphorylaseの蛋白量をenzyme-linked immunosorbent assay法で測定したところ, これらの値は同時期のstage III大腸癌14例の平均値の2.6倍, 5.4倍, 0.6倍であり, 腫瘍の急速な進展にVEGFおよびVEGF-Cの高発現が関与している可能性が示唆された.
  • 菅 隼人, 古川 清憲, 鈴木 英之, 鶴田 宏之, 松本 智司, 秋谷 行宏, 進士 誠一, 松田 明久, 寺西 宣央, 佐々木 順平, ...
    2007 年 60 巻 5 号 p. 276-280
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    肺の併存疾患のため全身麻酔が困難な症例に対し術前化学放射線療法 (Chemoradiation therapy, 以下CRT) を施行後, 経肛門的内視鏡下マイクロサージャリー (Transanal endoscopic microsurgery, 以下TEM) により癌腫を局所切除したので報告する. 症例は69歳男性. 右腎摘出, 心筋梗塞, 特発性肺線維症の既往がある. 2カ月前から血便を自覚, 内視鏡検査で下部直腸前壁に約2cmの2型腫瘍を認め, 生検で高分化腺癌と診断した. CTで遠隔転移・リンパ節転移を認めなかった. CRT (5FU 600mg/Body+CDDP 10mg/Body, day1~5, 骨盤照射 ; 40Gy/20分割/4週間) 終了5週後にTEMにより腫瘍の局所切除を行った. 病理検査では深達度pT1 (pSM), ly0, v0~1, 水平・垂直断端陰性, CRTの効果判定はIbであった. 術後経過は良好であった. 術前CRTとTEMの組み合わせは低侵襲かつ肛門機能温存可能で, 症例によって選択され得る治療法と思われた.
  • 高倉 有二, 岡島 正純, 小島 康知, 池田 聡, 惠木 浩之, 檜井 孝夫, 吉満 政義, 小川 尚之, 倉吉 学, 吉田 誠, 住谷 ...
    2007 年 60 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    腹部に開腹創を置かない腹腔鏡下内肛門括約筋切除術を行い, 良好な結果を得た症例を経験したので報告する. 症例は32歳女性. 検診にて便潜血反応陽性であったため大腸内視鏡検査を施行したところ, 恥骨直腸筋付着部上縁の下部直腸に径8mm大の直腸カルチノイドを認めた. 内視鏡的局所切除で完全切除が可能であったが, 病理所見にて深達度はsm, リンパ管侵襲, 静脈侵襲陽性であったため外科的追加切除を考慮した. 従来の前方切除術では肛門側断端が十分確保できない可能性があるため腹腔鏡下に内肛門括約筋切除術を施行した. 現在術後10カ月で再発無く, 肛門機能も良好である. 腹腔鏡下内肛門括約筋切除術は整容性に優れた低侵襲な術式であり, リンパ節郭清を要する下部直腸腫瘍に対する有用な術式と思われた.
  • 藤本 佳也, 大矢 雅敏, 黒柳 洋弥, 上野 雅資, 佐々木 敏行, 三木 明, 山口 俊晴, 五十嵐 正弘, 浦上 尚之, 千野 晶子, ...
    2007 年 60 巻 5 号 p. 286-291
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    消化管, 特に大腸から発生する神経鞘腫は稀である. 今回, 横行結腸に発生した神経鞘腫を経験したので報告する. 症例は53歳女性. 検診で便潜血陽性であったため大腸内視鏡を施行し, 横行結腸に粘膜下腫瘍の形態を示す隆起性病変を指摘され, 当院に紹介された. 当院での大腸内視鏡下の生検結果は神経鞘腫であった. 画像検査で遠隔転移を認めなかった. 腹腔鏡補助下横行結腸部分切除を施行し, 術後6日目に退院した. 組織学的には, 粘膜下に細長い紡錘形細胞の密な増殖と, 細胞が疎に配列する成分の混在を認め, 免疫組織化学的検索では, S-100蛋白にて明らかに濃染し, CD34陰性, c-KIT陰性, Desmin陰性, smooth muscle actin陰性であることから神経鞘腫と最終診断された. リンパ節転移は認められなかった.
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