結腸内分泌細胞癌の悪性度と治療法を考察するうえで興味ある症例を経験したので報告する. 症例は38歳, 女性. 3型横行結腸癌に対し, 結腸左半切除術 (D3), 腹壁合併切除を施行した. 病理組織学的検索では, 低分化型腺癌の形態を示す細胞の増殖が主体で, 免疫染色では, chromogranin Aおよびsynaptophysinが陽性であり, 内分泌細胞癌, pSE, ly1, v3, pN1, sH0, cP0, cM0, f Stage IIIaと診断した. 術後補助化学療法としてUFTの内服を開始したが, 2カ月で急速に増加する腹水と腸間膜に径5cm前後の多発リンパ節転移を認めた. 化学療法を塩酸イリノテカン (CPT-11) に変更したが, 術後9カ月で原癌死した. 原発巣のvascular endothelial growth factor (VEGF), VEGF-C, thymidine phosphorylaseの蛋白量をenzyme-linked immunosorbent assay法で測定したところ, これらの値は同時期のstage III大腸癌14例の平均値の2.6倍, 5.4倍, 0.6倍であり, 腫瘍の急速な進展にVEGFおよびVEGF-Cの高発現が関与している可能性が示唆された.
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