症例は53歳女性.約10年の潰瘍性大腸炎(UC)加療中,サーベイランス大腸内視鏡検査でdysplasia associated lesion or mass(DALM)を指摘.結腸全摘,直腸粘膜切除,J型回腸嚢肛門吻合術(IPAA)を施行.大腸に扁平上皮癌(粘膜切除部,直腸),粘液癌(下行結腸),高分化型腺癌(上行結腸,横行結腸)と多彩な病理形態のcancerを認めた.いずれもpM, pN0, stage Iで,良好に経過している.近年,サーベイランス大腸内視鏡の有用性が広く認識され,DALMが手術適応のUC症例は増加している.肛門温存術式が標準術式となっているが,IPAAまたは回腸嚢肛門管吻合(IACA)の選択には一定の見解が得られていない.肛門管粘膜の発癌に関しては低頻度であり,問題ないとする報告があるが,粘膜切除部に癌を認める症例も少なからず存在し,直腸粘膜切除が必要となる症例が存在するものと思われた.
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