日本大腸肛門病学会雑誌
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61 巻 , 7 号
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総説
  • 篠崎 大
    2008 年 61 巻 7 号 p. 353-363
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    クローン病では大腸癌·小腸癌のリスクが高く,近年,報告例が急増している.本邦報告110例を集積し大腸癌·小腸癌·瘻孔癌に分類した.これを欧米の症例と比較することにより癌合併例の特色を明らかにすることを目的とした.本邦では大腸癌報告例が小腸癌の約3倍であり,大腸のうち直腸癌が48%と多く,右側結腸癌が比較的少数だった.癌診断年齢は25∼89歳(中央値:46歳)であった.瘻孔癌では20歳代までにCDと診断され10年以上経過した症例が多いのに対し,大腸癌·小腸癌では40歳以上の比較的高齢で診断される例が多く,罹病期間によるリスクの差が小さかった.症状はクローン病の症状と大差なく,肉眼型では3型,4型,5型が多く,組織型では粘液癌の割合が高かった(31%).術前に癌の診断がついていた症例が6割程度と少なく,術後や剖検で診断された症例が32%と多かった.全体として進行癌が多く予後不良だった.
原著
  • 豊永 敬之, 田中 良明, 松島 誠
    2008 年 61 巻 7 号 p. 364-377
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    直腸肛門周囲膿瘍および痔瘻の診療における肛門管超音波検査,細菌培養検査,直腸肛門内圧検査の意義を前向きに検討した.(1)リニア観察とラジアル観察を併用した肛門管超音波検査によって痔瘻と非痔瘻性膿瘍の鑑別,痔瘻の病型分類,痔瘻の原発口の同定の正診率は有意に向上した.また,理学的所見,超音波検査ともに膿瘍形成期より炎症消退期のほうが正診率が高かった.(2)細菌培養検査では,痔瘻性膿瘍からは腸管由来の細菌群が,非痔瘻性膿瘍からは皮膚由来の細菌群が有意に高率に検出された.(3)括約筋非貫通型のII型痔瘻は瘻管開放手術を行っても術後の肛門機能への影響は軽度であったが,術前の肛門努力収縮圧低値症例は術後機能障害の危険因子であった.一方,括約筋貫通型のII型痔瘻およびIII型痔瘻では,括約筋温存手術は瘻管開放手術に比べ術後の肛門機能障害の頻度は有意に低率であった.以上より,肛門管超音波検査,細菌培養検査,直腸肛門内圧検査は,直腸肛門周囲膿瘍·痔瘻の客観的かつ有力な補助診断法であり,それらの診断や治療方針の決定には積極的に用いるべきと考えられた.
  • 角田 明良, 成田 和弘, 渡辺 誠, 松井 伸朗, 竹中 弘二, 中尾 健太郎, 草野 満夫
    2008 年 61 巻 7 号 p. 378-383
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    根治度Aの手術が行われた右側結腸癌患者32例(R群)と左側結腸癌患者46例(L群)の術後1年間のquality of life(QOL)をEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30(C30)を用いて前向きに調査し,両群を比較した.QOLの経時的変動は,大多数の尺度で両群が類似の傾向を示した.症状尺度の「constipation」はR群では術前値と比べて,術後4, 5, 6, 12カ月の4ポイントで有意に改善したが,L群では有意な変動はなかった.各尺度を調査ポイント毎に両群間で比較すると,「global QOL」は術後2, 4, 7, 12カ月の4ポイントでR群がL群より有意に良好であった.「constipation」は術後すべてのポイントでL群がR群より有意に不良であった.以上より,左側結腸癌患者の術後QOLは右側結腸癌患者と比較してC30の「constipation」が顕著であり,便秘が意識されることが明らかになった.
臨床研究
  • 野津 聡, 八岡 利昌, 西村 洋治
    2008 年 61 巻 7 号 p. 384-388
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    目的と方法: 直腸癌33症例を対象としMRI拡散強調画像で同定された領域リンパ節のADC値を用いてリンパ節転移の診断能を検討した.結果: 33症例中,転移陽性の11症例では,いずれもリンパ節の同定が可能であった.一方,転移陰性の22症例でも9症例で領域リンパ節が同定された.同定された病変の中で,ADC値が1×10-3mm2/sec未満のリンパ節は転移陽性18病変中16病変,転移陰性10病変中4病変であった.一方,ADC値が0.6×10-3mm2/sec未満の描出リンパ節は転移陰性の2病変のみであり転移陽性では認めなかった.以上から転移陽性リンパ節をADC(×10-3mm2/sec)値0.6以上1.0未満とするとリンパ節転移陽性の11例中9例,リンパ節転移陰性の22例中2例のみが陽性となり,感度82%,特異度91%,陽性適中率82%となった.結語: MRI拡散強調画像でADC値を測定することは直腸癌リンパ節転移の有効な診断方法と考えられた.
  • 大東 誠司, 星野 好則, 岩渕 敏久, 小野寺 久
    2008 年 61 巻 7 号 p. 389-395
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸癌術後症例に対するProbioticsの薬剤効果について検討.対象と方法: 再発,重篤な併存疾患を除く大腸癌術後201例に対してProbiotics服用の意思確認を行い,希望者80名を対象.ザ·ガード(納豆菌,乳酸菌含有)を3カ月間提供し,服用前後でアンケート調査を施行.QOLスコアとしてSF-36, EORTC QLQ-C30および排便機能に関する質問項目を使用.成績: 66名からアンケート回収.内訳は右側結腸癌18例,左側結腸癌23例,直腸癌22例.排便習慣の改善は63.5%,服用継続希望も61.9%と高かった.Probiotics服用後では排便回数,残便感の改善が見られ,QOLに関してもSF-36の社会生活機能,日常役割機能の2項目およびQLQ-C30のGlobal QOL, Constipation, Diarrheaの3項目で改善がみられた.結論: 大腸癌術後ではProbiotics服用により排便習慣の改善,QOLの向上が期待できる.
  • 佐藤 美信, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 小出 欣和, 松岡 宏, 勝野 秀稔, 野呂 智仁, 本多 克行
    2008 年 61 巻 7 号 p. 396-403
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後フォローアップにおける術前血清CEA値および術後血清CEA値測定の適切な利用法について検討した.対象は13年間に経験した根治度Aの手術を施行しえた大腸癌のうち,術前血清CEA基準値以下で再発した79例(基準値再発例)と術前血清CEA基準値より高値で再発した65例(高値再発例)で,これらを臨床病理学的項目,再発部位,再発の発見契機,再発に対する治療法および治療成績について比較検討した.肝再発の54.8%(23例/42例)で定期的な血清CEA値測定が再発発見に有用で,再発例の切除率も50%と高率であったことから血清CEA値測定は肝再発のサーベイランスに有用と考えられた.肺再発では術前血清CEA値高値例の57.9%(11例/19例)で再発発見に血清CEA値測定は有用であったが,切除率は21.1%,5年生存率は0%と低率で,治療成績向上には定期的な画像診断が必要で,局所再発では症状や所見の変化に注意を払うことが重要と考えられた.
  • 山口 貴也, 稲次 直樹, 吉川 周作, 高村 寿雄, 増田 勉, 内田 秀樹, 榎本 泰三, 大野 隆, 西脇 英敏, 山岡 健太郎, 稲 ...
    2008 年 61 巻 7 号 p. 404-409
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌手術における術中大腸内視鏡検査の有用性について報告する.2001年1月から2006年12月までの6年間に経験した56例に対して検討した.術中大腸内視鏡検査で発見された癌は5例,6病変で検査を行った症例の8.93%に認められた.深達度で分類すると粘膜内癌は1例(1.79%),粘膜下層以深の癌は4例(7.14%)でそのうち粘膜下層の癌は2例(3.57%),筋層以深の癌は3例(5.36%)であった.そのうち1例は3多発癌であった.また,3例(5.36%)に閉塞性大腸炎を認めた.SSIについては結腸では11例(23.9%),直腸では4例(40.0%)に創感染あるいは縫合不全が認められたが大腸癌全手術症例との比較では有意差は認めなかった.以上より術中大腸内視鏡検査は安全かつ有用な検査と考えられた.
症例報告
  • 赤松 大樹, 荻野 信夫
    2008 年 61 巻 7 号 p. 410-414
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    大腸の転移性腫瘍はまれであり,大腸悪性腫瘍の0.1∼1%を占めるにすぎない.今回,急速な進行を示した肺癌の大腸転移例を報告する.症例は,61歳,男性.平成18年4月に肺癌に対し右肺上葉切除術を受けた.8月より下血が出現.内視鏡検査で横行結腸に腫瘍を認め,生検で肺癌の転移と診断された.腹部CT検査で肝弯曲部に径10cm大の腫瘤を認めた.手術を施行し横行結腸から壁外性に発育し上腹部全体を占める腫瘍を認めた.上部空腸にも手拳大の腫瘤を認め,腫瘍を含め結腸右半切除術および空腸部分切除術を施行した.切除標本で横行結腸の腫瘍は15×13×8cm大であった.術後12日目に術創がし開し壊死物質が流出,CTで右上腹部に径10cm大の腫瘤の再発を認めた.その後,肺転移·肝転移が出現し術後34日目に死亡した.肺癌の消化管転移は肺癌の末期的状態と考えられ,切除の適応は出血のコントロールおよび腸閉塞の解除に限るべきである.
  • 太田 竜, 高橋 保正, 関川 浩司
    2008 年 61 巻 7 号 p. 415-419
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は31歳男性.腹部膨満感,嘔吐あり近医を受診し腸閉塞の診断で紹介となった.腹部CT検査で回盲部に5cm大の腫瘤があり,口側の小腸は拡張していた.注腸造影検査では上行結腸に隆起性病変があり,口側腸管は描出されなかった.大腸内視鏡検査では回盲部に炎症性ポリープが集簇しており回盲弁は不明であった.生検では炎症のみであり悪性所見はみられなかった.イレウス管を用いて減圧を行ったが腸閉塞は軽快せず大腸癌も否定できないため,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.回盲弁周囲に黄色調のmucosal bridgeを形成するpolypoid lesionが多発し腸管壁の肥厚を認めた.病理組織診では,Ul-IVの非特異性潰瘍とともに,被膜のない粘膜下層内の脂肪増生を生じていた.lipohyperplasiaが併存した回盲部単純性潰瘍というまれな症例を経験したので報告する.
  • 阿南 勝宏, 原田 勝久, 野口 剛
    2008 年 61 巻 7 号 p. 420-425
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.2007年3月下旬,前日から続く右下腹部痛を主訴に前医を受診し,腹部超音波検査で腸重積を疑われ当科へ紹介となった.右下腹部に手拳大の腫瘤を触知し,腹部CT検査にて同心円状の多層構造を認めた.下部消化管内視鏡検査では,先進部の盲腸に亜有茎性の隆起性病変を認め,生検の結果は高分化腺癌であった.重積は送気により容易に整復されたため,待機手術とした.腹腔鏡下に観察したところ,回盲部が上行結腸に嵌入していたが,牽引にて容易に整復され,腹腔鏡補助下に回盲部切除術およびD2郭清を行った.病理組織学的所見は高分化腺癌,pSM,ly0,v0,pN0,Stage Iであった.成人の腸重積は器質的疾患によるものがほとんどであるが,術前診断が不明のまま緊急手術となることもある.今回われわれは腸重積を整復後,待機的に腹腔鏡補助下手術を施行しえた若年女性盲腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 万本 潤, 増田 英樹, 石井 敬基, 間崎 武郎, 大亀 浩久, 榎本 あき矢, 間遠 一成, 潮 真也, 蛯澤 記代子, 高山 忠利
    2008 年 61 巻 7 号 p. 426-430
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    Urinoma(尿瘤)は,慢性的に漏出した尿がカプセルを有しながら貯留したものであるが,クローン病に合併するのは極めてまれである.今回,手術療法を施行したurinoma合併クローン病を経験したので報告する.症例は44歳の女性で,30歳時にクローン病の診断を受け,メサラジンとプレドニゾロンを中心に治療をうけていた.腹部膨満と頻尿を主訴に来院,腹部CT検査で巨大な嚢胞性腫瘤を認め,注腸造影では回腸直腸瘻,排泄性腎盂造影では直腸膀胱瘻が認められた.保存的治療により自覚症状は軽減したが,嚢胞性腫瘤については改善が認められず,手術を施行した.開腹所見で,後腹膜腔に尿が貯留した嚢胞性腫瘤(urinoma)を認めた.術式は,回腸直腸瘻,回腸上行結腸瘻,直腸膀胱瘻を含めた回盲部切除,回腸子宮瘻切除,膀胱·直腸·子宮の修復,双孔式人工肛門造設(S状結腸)であり,尿管ステント挿入,ドレナージを行った.現在,術後37カ月で再発なく,無症状である.
  • 藤本 浩一, 大西 始, 山本 康久, 大西 長久, 大西 信行, 大西 博
    2008 年 61 巻 7 号 p. 431-435
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性,肛門不快感を主訴に近医を受診.巨大な直腸腫瘍の診断で,当院へ紹介された.
    直腸指診上,歯状線より約10cmに及ぶ全周性の粗大結節様病変(工藤分類のLST-G-M)を認めた.腫瘍の部位,大きさ,形態から,腹会陰式直腸切断術を予定した.
    当初正常であった電解質は,術前の検査で排便回数が増加し異常値を示し,また内分泌異常も認めたが,これらは一週間の自宅療養で正常域へ復した.術前処置後に再び電解質異常を来たしたものの,術後には補正することなく正常化した.絨毛状変化をともなう直腸の結節集簇様病変で腸管の前処置などによって電解質異常を示した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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