日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
61 巻 , 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 栗原 浩幸, 金井 忠男, 石川 徹, 金井 慎一郎, 石川 啓一, 張 文誠
    2008 年 61 巻 8 号 p. 467-475
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    目的: 低位筋間痔瘻および後方複雑痔瘻を,解剖学的知見をもとに明確化し,肛門診療で基準となる痔瘻分類を示す.会陰骨盤間隙: 会陰骨盤間隙を皮下·粘膜下隙(IL·IH,境界は歯状線),低位·高位括約筋間隙(IIL·IIH,境界は歯状線),肛門周囲隙(IIL),坐骨直腸窩(III),肛門挙筋上隙(IV)に分ける.さらに坐骨直腸窩を低位と高位に区分する(IIIL·IIIH).坐骨直腸窩には脈管·神経を含む結合組織からなる坐骨直腸窩中隔が存在するためである.一方,肛門後方正中部には特別な部位が存在する.そのうち,前方を内括約筋,上方を肛門挙筋の下面,下方と側方を外括約筋の前面に囲まれた部位を後方深部隙(IIIP),前方を深外括約筋の後面,上方と下方を浅外括約筋で囲まれている部位をCourtney腔(III Courtney)とする.分類: 痔瘻の進展形式により,皮下·粘膜下痔瘻,低位·高位筋間痔瘻,低位·高位坐骨直腸窩痔瘻,後方深部痔瘻,肛門挙筋上痔瘻に分類する.
  • 加藤 久尚, 文野 誠久, 小野 滋, 深田 良一, 木村 修, 出口 英一, 岩井 直躬
    2008 年 61 巻 8 号 p. 476-480
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    過去20年間に当科で治療を行った小児結腸ポリープ26例を対象とし,後方視的に検討を行った.年齢分布は1歳∼13歳(平均4.0歳)で,3歳をピークに5歳以下の幼児例が23例であった.初発症状は,下血が17例と最も多く認められた.ポリープの脱出は6例であり,そのうち2例において初診時に直腸脱と誤診され,当科紹介後に確定診断がされた.発生部位は,肛門·直腸8例,S状結腸13例,下行結腸1例,横行結腸4例で,全例が単発性であった.治療は,経肛門的切除が6例,内視鏡的切除が18例に行われた.横行結腸原発の1例では,巨大ポリープによる多量出血で発症し緊急開腹術により楔状切除が行われた.24例で病理学的検索が行われ,肛門部fibroepithelial polypの1例を除いて,全例若年性ポリープであった.小児結腸ポリープは,そのほとんどが良性の若年性ポリープであり,診断の際には全結腸の検索が必須である.また,ポリープ脱出が直腸脱と誤診される例があり,臨床上のpit fallとなると思われた.
  • 宇都宮 高賢, 柴田 興彦, 山邉 素子, 菊田 信一, 堀地 義広
    2008 年 61 巻 8 号 p. 481-488
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    痔核手術後の30人(男性13人,女性17人)について創傷部位の組織血流量とサイトカインの測定を行い,創傷治癒過程の同定を行った.術後の組織血流量は,術前値の27%まで低下し,術後1∼5日までは変化はみられなかった(炎症期).6日目から12日までは増加を示し(増殖期),13日より24日まではプラトーとなり(組織再構築期),25日以降は低下した(成熟期).炎症期と増殖期前半に血漿フィブリノゲンと血管内皮細胞増殖因子が相関を持って増加した.この間,組織型,ウロキナーゼ型プラスミノゲン·アクチベータの活性の増加も認めた.炎症期より組織再構築期の中盤まで血小板由来増殖因子は活性化し,その後もトランスフォーミング増殖因子の活性は持続し,活性低下とともに成熟期に達した.このように痔核手術後の創傷にもサイトカインは相互,連続的に作用し,その創傷治癒過程の中で創部の腫脹,易出血時期が存在することが推測できた.
  • 小澤 広太郎
    2008 年 61 巻 8 号 p. 489-497
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    検討1: II型痔瘻2,242例について性差,年齢差,性状や本数,1次口の位置,1次口から2次口への推移,術式等その特徴を検討した.結果1: II型痔瘻は男性に多く,平均年齢も男性が高かった.10∼60代の生産年齢が97.7%をしめた.1次口は2, 6, 12時に多く,1次口から2次口への移行は8∼11時方向に1次口を持つ痔瘻はより前方に進展する傾向にあった.多発痔瘻は男性に多く,12, 2, 6時の組み合わせが多かった.術式では後方はlaying open法が多く,前方側方ではcoring out法が多かった.検討2: 手術標本を用いII型痔瘻における肛門腺と正常の肛門腺の形態学的特徴を比較した.結果2: 肛門腺はII型痔瘻症例171例中119例(69.5%)に認められた.拡張した腺管腔が星芒状形態を呈し(62.9%),腺上皮の重積(58.8%),扁平上皮化生(27.7%)など多くの特徴が認められた.
臨床研究
  • 内野 基, 池内 浩基, 田中 慶太, 松岡 宏樹, 久野 隆史, 中村 光宏, 大嶋 勉, 塚本 潔, 外賀 真, 中埜 廣樹, 野田 雅 ...
    2008 年 61 巻 8 号 p. 498-503
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    クローン病(以下CD)における痔瘻,肛門周囲膿瘍の合併頻度は高く,多発性,難治性であることを特徴とする.治療に際しては,肛門機能温存,癌合併などの問題に配慮が必要である.今回,難治性痔瘻,肛門周囲膿瘍に対し,手術を行ったCD108症例につき検討した.括約筋温存,再発防止を目的に,当科ではsetonドレナージを基本術式としている.軽快例は85.2%であったが,再手術を必要とした症例は39.8%,累積再手術率は5年で32.4%であった.Seton併用の有無に関する再手術率は併用群31.3%,非併用群68.0%と有意差を認めたが,最終的に人工肛門造設となった症例は各々16.9%,16.0%で有意差はなかった.直腸腟瘻を有する症例は11例あったが,全例軽快せず,人工肛門造設5例,直腸切断術2例と難治性であった.Seton法は根治性には乏しいが再発予防には効果があり,CDの難治性痔瘻,肛門周囲膿瘍に対する手術療法では選択するべきであると考えられた.
  • 濱田 朋倫, 内藤 春彦, 篠原 敏樹, 前田 好章
    2008 年 61 巻 8 号 p. 504-508
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸癌手術における一時的ループイレオストミーの安全性について検討した.方法: 1995∼2007年にループイレオストミーを造設,閉鎖した39例を対象とした.結果: covering stomaとして造設したものが20例,縫合不全後に造設したものが19例であった.ロッドを使用せず丸く高いストーマを造設した.ストーマ径は平均縦30mm横30mm高さ26mmであった.造設後ストーマ周囲皮膚障害が3例,ストーマの潰瘍が2例,イレウスが2例発生したが,ストーマの脱落,脱出,ヘルニア,ハイアウトプットストーマはなかった.ストーマの閉鎖法は機能的端々吻合が24例,手縫い端々吻合が15例であった.手縫い群で5例の吻合部小腸閉塞と,再手術を要した縫合不全が1例に発生した.結語: 大腸癌手術における一時的ループイレオストミーの造設と閉鎖は,重篤な合併症も少なく安全な手技であった.機能的端々吻合は,閉鎖後の小腸閉塞が無く安全であった.
  • 宗 祐人, 櫻井 俊弘, 松井 敏幸, 宮岡 正喜, 松尾 静香, 深水 理恵子, 西俣 伸亮, 二宮 風夫, 平井 郁仁, 八尾 恒良
    2008 年 61 巻 8 号 p. 509-515
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    目的: MCTを含有する半消化態栄養剤(Racol®)の活動期クローン病(以下CD)患者に対する短期的治療効果を明らかにする.対象: 活動期CD患者のうち,経腸栄養療法の適応を有し,半消化態栄養剤による治療に合意した11例中,脱落例3例を除く8例.方法: 半消化態栄養剤を6週間持続投与し,CDAIの緩解導入率を算定した.また,CRP,血沈値,血清アルブミンも評価した.X線所見をスコア化し治療前後で比較した.さらに血中脂肪酸分画を測定し,n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の比率(n-3/n-6比)を比較した.成績: CDAIの緩解導入は87.5%(7/8)であった.また,CRP,血沈,血清アルブミン値,X線スコアも有意に改善した.n-3/n-6比は治療前後で差を認めなかった.まとめ: 半消化態栄養剤Racol®は活動期CD患者に対して短期的緩解導入効果を有していた.
  • 池内 浩基, 中埜 廣樹, 内野 基, 中村 光宏, 松岡 宏樹, 田中 慶太, 久野 隆史, 大嶋 勉, 塚本 潔, 外賀 真, 野田 雅 ...
    2008 年 61 巻 8 号 p. 516-520
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    目的:潰瘍性大腸炎(以下UC)患者において,回腸嚢肛門吻合術(以下IPAA)を行った症例で,粘膜切除部に癌を合併した症例の臨床的特徴を検討し,粘膜切除を行うことが望ましい患者群を明らかにすること.対象と方法:2003年1月から2006年12月までにIPAAを行った全症例319例の肛門管粘膜切除部の病理検査を行った.直腸粘膜切除部断端(歯状線部)から2.5cmまでを粘膜切除部と定義した.結果:319例中4例(1.3%)の粘膜切除部に癌の合併を認めた.手術適応は1例が高分化型腺癌で,残りの3例はhigh grade dysplasia(以下HGD)であった.切除標本の病理検査では4例ともに癌病変の多発が認められた.組織型は2例が高分化型腺癌で,残りの2例が扁平上皮癌であった.深達度は1例にsm浸潤が認められたが,残りの3例は粘膜内癌であった.結語:大腸にHGDを認めるUC症例は多発病変が多く, 粘膜切除部にも癌が合併する可能性があり, 粘膜切除をともなうIPAAの適応であると思われた.
  • 中島 康雄, 辻仲 康伸
    2008 年 61 巻 8 号 p. 521-526
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    肛門部膿皮症と痔瘻の鑑別は指診のみでは非常に難しい.しかし,超音波診断では膿皮症や痔瘻の病巣を明瞭に描出できる.その特性を利用し超音波を補助診断として用いた場合の有用性を検討した.膿皮症50例と低位筋間痔瘻100例について,指診のみの診断と経肛門的ラジアル式エコーおよび経皮的リニア式エコー併用による診断が手術所見とどの程度一致するかを比較した.また経皮的リニア式エコーにより膿皮症や皮下腫瘤の質的診断がどの程度可能かについても検討した.結果: 指診のみの診断的中率(手術所見との一致率)は膿皮症が60%,痔瘻が86%であった.超音波診断併用の診断的中率は膿皮症94%,痔瘻99%であり共に向上した.経皮的リニア式エコーにより膿皮症,粉瘤や脂肪腫などの質的診断も可能であった.経肛門的ラジアル式エコーと経皮的リニア式エコーを併用する術前診断は極めて有用な補助診断と考えられた.
症例報告
  • 中村 光一, 中村 利夫, 倉地 清隆, 林 忠毅, 中島 昭人, 深沢 貴子, 鈴木 昌八, 今野 弘之, 馬場 聡
    2008 年 61 巻 8 号 p. 527-533
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性.18歳より潰瘍性大腸炎として,年1回の大腸内視鏡検査を施行されていた.平成18年の大腸内視鏡検査にて,横行結腸の生検部位から高中分化腺癌を認め,当科紹介となった.大腸内視鏡再検査にて横行結腸に強い炎症をともなう,不整顆粒状,結節状変化を認め,同部位の生検にて小型類上皮肉芽腫を認めた.以上より,クローン病に合併したcolitic cancerと診断し,腹腔鏡下結腸亜全摘,回腸直腸吻合術を施行した.病変はIIc様であり,病理所見にて,35×18mmの粘液産生の著明な高分化腺癌で,病変部周囲にdysplasiaを認め,深達度はpSS,リンパ節転移はpN0で,クローン病に合併した横行結腸癌の診断となった.今回我々はクローン病病変部に横行結腸癌が合併し,周囲にdysplasiaを認めた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
feedback
Top