日本大腸肛門病学会雑誌
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62 巻 , 10 号
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特集 主題 I:縫合不全に対する予防と対策
  • 大植 雅之, 能浦 真吾, 真貝 竜史, 鹿野 新吾, 宮代 勲
    2009 年 62 巻 10 号 p. 807-811
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    縫合不全にはいまだ共通の定義はなく,施設あるいは個人によって様々な基準が存在している.今回,すべての縫合部やstaple lineの縫合不全による腹膜炎や,瘻孔形成,放射線学的に縫合不全が証明されなくとも腹腔内膿瘍をともなうものを縫合不全と定義して,検討を行った.2004年6月から2009年5月の間に当施設で腸管吻合を行った大腸癌の縫合不全率は2.92%(20/686)であり,結腸癌は1.51%(6/397),直腸癌は4.84%(14/289)と,結腸癌で縫合不全は有意に少なかった(P=0.01).また,結腸癌の縫合不全6例のうち,3例は再手術を要し(再手術率0.76%).1例は経皮的ドレナージを追加し,2例は保存的に軽快した.非手術治療例の縫合不全判明時期はいずれも術後6日目以降であった.最近欧米では,周術期の経過を改善する目的で様々なERASプログラム(Enhanced recovery after surgical programs)が開発され既存の周術期プログラムとの比較や検証が行われているが,結腸癌は術後合併症のリスクが少ないため,このような検討が導入可能な疾患である.
  • 辻仲 眞康, 河村 裕, 小西 文雄
    2009 年 62 巻 10 号 p. 812-817
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の縫合不全の危険因子として,男性,腫瘍の位置などの患者因子のほか,吻合部への過度の緊張や血流障害などの手術因子が挙げられる.手術操作においては,特に直腸の切離,吻合部腸管の状態および吻合部のintegrityの確認に細心の注意を払う.メタアナリシスにおいては,低位前方切除術における予防的ストーマは縫合不全の発生頻度と再手術率を有意に減少させる一方で,予防的ドレーンの意義はないとされている1).縫合不全発生時の対策には,非手術·保存的治療,CTガイド下ドレナージ,stoma造設,ハルトマン手術や吻合部切除再吻合が含まれるが,治療方針は縫合不全の程度,付随する炎症や膿瘍の範囲の評価,および有効なドレナージの有無により決定する.直腸癌手術に際しては,縫合不全発生に関わる因子の充分な評価,手術時における最大限の予防,そして発生時の迅速かつ適切な対応を常に心掛けることが重要である.
  • 東 大二郎, 二見 喜太郎, 永川 祐二, 富安 孝成, 石橋 由紀子, 二木 了, 前川 隆文
    2009 年 62 巻 10 号 p. 818-822
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    自験例377例のべ622手術例を対象として,Crohn病における術後縫合不全を検討した.縫合不全の頻度は4.3%(27例)で,ステロイド剤投与,2カ所以上の腸切除,大腸-大腸吻合部,3回以上の既手術症例に縫合不全が高率にみられた.
    低栄養,腸管狭窄,感染巣など全身的,局所的に様々なリスクを持ったCrohn病の手術に際しては,術前状態の的確な評価ならびに対応がまず重要であり,術前のTPNは欠かせない.術野においては丁寧な剥離操作によって病変腸管を明らかにし,病態に見合った外科治療法を選択し,基本に則った吻合操作を行い,外科的処置に応じたドレナージが縫合不全の予防および対策として重要と考える.
  • 飯合 恒夫, 野上 仁, 谷 達夫, 畠山 勝義
    2009 年 62 巻 10 号 p. 823-827
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis;UC)に対する大腸全摘,回腸嚢肛門(管)吻合術(restorative proctocolectomy and ileal pouch anal anastomosis;IPAA)は,その安全性や術後quality of life(QOL)の点からも広く認められ,現在では標準手術となった.しかし,UCの患者はステロイドを大量に使用していたり全身状態が悪かったりすることが多く,縫合不全のリスクは高い.縫合不全は患者のQOL著しく低下させることもあるためできるだけ予防する必要があり,そのために手術に際していろいろな工夫が行われている.また,縫合不全を重篤化させないためには,早期診断と早期治療が重要である.
  • 板橋 道朗, 番場 嘉子, 橋本 拓造, 廣澤 知一郎, 小川 真平, 亀岡 信悟
    2009 年 62 巻 10 号 p. 828-833
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    術後の縫合不全は消化器外科手術において最も危険な術後合併症の一つである.縫合不全の予防を行い,発症を少なくするとともに,縫合不全が生じた場合の対策は非常に重要である.Poor riskとは心疾患·不整脈,呼吸器疾患,糖尿病,腎不全,ステロイド,低栄養·貧血,肥満,高齢などの患者因子,腹膜炎や腹腔内感染などの局所因子,手術時間や術者の熟練度などの術者因子が複雑に関与している症例である.緊急手術では併存疾患がコントロール不良であったり,詳細なデータがないなどの状況があるためpoor risk症例における術式選択と異なる部分も多い.緊急手術は縫合不全の発生のリスクファクターとしてあげられている.縫合不全の対策で最も重要なのは予防である.したがって,併存症のコントロールを行い,可能であれば待機的に手術を行う.
    Poor risk症例および緊急手術で重篤な場合には,救命が第一に優先される.決定的な縫合不全の予防法はないため,術式選択が最も重要である.加えて周術期管理が縫合不全のリスクを軽減することを念頭に治療にあたるべきである.
  • 問山 裕二, 井上 靖浩, 小林 美奈子, 毛利 靖彦, 三木 誓雄, 楠 正人
    2009 年 62 巻 10 号 p. 834-838
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    1999年,Centers for Disease Control and Preventionの手術部位感染の予防に関するガイドラインでは,大腸手術術後に予防的ドレーンを留置する場合には,排液効果が良好でかつ逆行性感染の少ない閉鎖式能動的ドレーンが望ましく,ドレーンは手術創とは別の部位から挿入し,可及的速やかに抜去することが推奨されている.多くのrandomized controlled trialsやメタアナリシスでは大腸手術後の予防的ドレーンの有用性は確認されていない.欧米と我が国ではリンパ節の郭清範囲など術式に差があり,欧米の方法をそのまま導入するわけにはいかないが慣習的なドレーンの留置は手術部位感染,ひいては縫合不全の予防の観点からも望ましくなく,今後は我が国での適切なドレーンの選択,挿入基準を明らかにしていく必要がある.
特集 主題 II:痔瘻術後の再発を考える
  • 松田 保秀
    2009 年 62 巻 10 号 p. 839-841
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    痔瘻の再発を考えるとき,真っ先に思い描くのは先ずは痔瘻の発生·進展のpathogenesisであろう.しかし論理的な術式にもかかわらず,痔瘻は自然治癒したり,治療において必ずしも良い結果が得られるとは限らず,痔瘻を根治させることの難しさを痛感することがある.特に再発痔瘻のメカニズムには明確な理論的バックボーンがなく,文献的考察も少ない.そこでこの特集では,臨床的に痔瘻に精通している執筆者に痔瘻術後の再発について,テーマを決めて独自の主張を述べていただくことにした.差し当たって先導役として,再発痔瘻が抱えている背景,問題点,疑問点など私の考えを述べる.
  • 山名 哲郎
    2009 年 62 巻 10 号 p. 842-849
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    痔瘻の治療成績の評価法を標準化してディスカッションするためには用語の使い方を共有する必要である.今回,著者らは痔瘻再発に関する国内専門医に対してアンケートを実施し,また海外の専門医の見解を文献的に検討した.アンケートの回答から,痔瘻の治療後の状態を表現する用語として「治癒」は完全に上皮化した場合,「非治癒」は完全に上皮化していない場合とする意見に集約された.治癒期間の規定に関しては意見がわかれたが,症例により治療期間の差が大きいことや基準の複雑化になるとする意見が多く,治療期間を規定することは今後の議論が必要と思われた.「再発」に関しては,欧米では非治癒例をまとめて「Recurrence」と表現している場合が多いが,国内の専門医の意見では治癒に至らずに経過する「非治癒」と,治癒後に再燃する「再発」とを区別すべきであるとする意見が優勢であった.「非治癒」「再発」の条件としては内腔と連絡する一次口の存在を重視する意見に集約された.痔瘻の治療成績は観察期間を明記した治癒(率)をもって評価するのが最も異論が少ないと思われる.
  • 辻 順行, 山田 一隆, 高野 正博, 辻 大志, 辻 時夫
    2009 年 62 巻 10 号 p. 850-856
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    2000年3月から7年間で執刀したIIL:882例,IIH:41例,III:95例,IV:45例の痔瘻を対象として,再発症例を分析し,以下の結果を得た.1)再発(%)はIIL型:開放-0.5·温存術-7.6(手術変更前8.5,変更後5.8)·セトン-0,IIH型:4.9(術式変更前:15.4,変更後:0),III型:Hanley変法-2.5·温存術-10.9(癌の1例を除外すると9.2%),IV型:Hanley変法-0·温存術-18.2であった.2)温存術における原発口縫合閉鎖後の再開通が再発に占める頻度はIIL:約90%,III:約40%,IV:約67%と高率であった.3)現在の原発口の縫合閉鎖法では,工夫をしても再開通が一定の頻度で発生し,今後何らの方策を模索する必要があった.4)IIH症例で口側に膿瘍が存在する症例の治療には,口側へのドレナージシートン挿入が有効であった.5)複雑痔瘻で再発する症例の中には癌症例が存在することもあり,手術の際に必ず病理検査や細胞診に提出した方がいいと判断された.
  • 田中 良明, 杉田 博俊, 香取 玲美, 岡本 康介, 下島 裕寛, 長谷川 信吾, 伊東 功, 宋 江楓, 鈴木 和徳, 松島 誠
    2009 年 62 巻 10 号 p. 857-865
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    痔瘻の術後再発を完全に避けることは困難でさらに再発の診断および定義に関しても諸説があって明確ではないのが現状である.今回痔瘻の再発についてその要因を検討した.対象は5年間の痔瘻根治手術施行症例計886例を対象とした.方法:直腸肛門内圧検査および経肛門的超音波検査所見による再発のリスクファクターを検討した.結果:1.(1)全症例における再発率(再発例/全痔瘻根治手術例)1.1%(10/886)(2)各病型(隅越の分類)における再発率(病型別再発例/病型別例数)IILS 0.7%(4/547),IILC 0.0%(0/71),IIHS 0.0%(0/43),IIHC 0.0%(0/62),IIIU 3.3%(3/91),IIIB 3.1%(2/64),IV 12.5%(1/8)2.III型痔瘻再発群は治癒群あるいは正常群との統計学的比較において(1)内圧MRPは有意な差で高く(2)内圧HPZは有意な差で長かった.さらに内圧結果に相当する再発のリスクファクターについてIII型痔瘻の超音波画像所見を検討した.考察·まとめ:痔瘻の術後再発に関する要因を検討考察した結果,超音波検査および内圧検査からみたIII型痔瘻の再発のリスクファクターとして(1)Courtney's spaceの原発巣を主体とした炎症性瘢痕線維化による直腸肛門管の伸展性不良(2)長い肛門管長,であることが考えられた.
  • 宇都宮 高賢, 八尾 隆史, 柴田 興彦, 山邉 素子, 川野 豊一
    2009 年 62 巻 10 号 p. 866-871
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    痔瘻根治手術を受け再発し来院してきた39症例と,膿瘍切開を繰り返し来院してきた19症例の摘出瘻管について検索した.再発痔瘻では,膿瘍併存型痔瘻を示した症例は74%あり,膿瘍切開を繰り返した症例では63%に認めた.再発症例のうち組織検索可能例は22例あり,膿瘍切開を繰り返した症例は9例あった.術後痔瘻再発例に肛門腺を認めた症例は14%あり,膿瘍切開再発症例では56%に認めた.組織学的所見は双方ともに被膜様線維化組織に囲まれた好中球とリンパ球,形質細胞を主体とした膿瘍と周囲線維組織間を拡散する炎症性細胞の浸潤を認めた.脂肪組織と筋肉組織内は線維化が著明でリンパ球,形質細胞と少数の好酸球の慢性炎症性細胞の浸潤を認めた.このことから再発の原因は,一次口の位置を誤認して手術した場合と線維化組織に囲まれた分岐あるいは併存する炎症拡散性の膿瘍を遺残させた場合と考えられた.
  • 浅野 道雄, 松田 保秀
    2009 年 62 巻 10 号 p. 872-878
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    痔瘻術後再発の現状と対処法について検討する目的で,1996年から2009年までの痔瘻初回根治手術症例のうち,クローン病·潰瘍性大腸炎を除いた2,435例を集計した.全痔瘻の7.4%に再発を認め,男性,より深部の痔瘻,経験症例数が少ない術者で有意に再発率が高かった.また,術式も有意に影響を与えており,特にcoring out(以下CO)の再発率が22%と高かった.II型痔瘻に対するcoring-seton後の再発は認めなかった.術者の経験症例数は,III型では多い方が再発率は低かったが,II型では差を認めなかった.II型CO後再発例の82%にseton,10%にlay open,III型lay open後再発の76%に再度lay openが行われていた.全再発症例の81%が1回の処置で治癒していたが,13%には2回,3%に3回,2%に4回の処置が行われていた.複数回の再処置は,すべての痔瘻型に認められた.
  • 栗原 浩幸, 金井 忠男, 石川 徹, 金井 慎一郎, 張 文誠, 金井 亮太
    2009 年 62 巻 10 号 p. 879-885
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    病態:後方複雑痔瘻の原発口は通常後方正中の肛門小窩である.1次瘻管は内括約筋を頭側に斜走して原発巣に至る.原発巣は肛門後方正中部で,上方を腱様の恥骨直腸筋,底部を内括約筋,下方と側方を外括約筋に囲まれた部位である後方深部隙に存在する.後方深部隙の膿瘍の圧が高まると外側の坐骨直腸窩に膿瘍は進展する.坐骨直腸窩は坐骨直腸窩中隔によって高位と低位に区分され,膿瘍が外括約筋を深いところで貫くと高位,浅いところで貫くと低位坐骨直腸窩に至る.手術:後正中部で縦方向の皮切をおく.浅および深外括約筋の一部を切離し原発巣に直視下に到達する.原発巣の手前側外壁を切除するように原発巣を開放する.坐骨直腸窩に達する2次瘻管を切除あるいは掻爬する.内括約筋を温存するように1次瘻管を手前側に開放,原発口より外側の内括約筋と皮下外括約筋を切除し原発口を開放する.原発口開放部周辺の痔核切除などを行い,手術を完了する.
  • 稲次 直樹
    2009 年 62 巻 10 号 p. 886-889
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
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