症例は60歳代男性.盲腸癌に対して結腸右半切除術を行った2年後,転移性右肺腫瘍に対して右肺部分切除術を行った.さらにその1年後に,FDG-PET検査で右副腎転移と診断し,右副腎摘出術を行った.現在多発性肺転移を認めており,化学療法施行中である.
副腎は悪性腫瘍による血行性転移の好発部位であるが,副腎転移を発見された時には,すでに他臓器転移を来していることが多く,副腎転移を切除された症例は極めてまれである.結腸·直腸癌の副腎転移切除例の報告は,これまでに自験例を含めて36例であり,臨床的特徴について検討した.原発巣は左側大腸,特に直腸に多かった.直腸癌からの副腎転移は左右ほぼ均等であったが,結腸癌からは右側副腎転移が多かった.副腎転移切除後の成績は,肝転移切除後の成績と比較すると生存率が著しく低く,他臓器に再発する可能性も高かった.それゆえ結腸·直腸癌の副腎転移に対しては,手術単独ではなく化学療法や放射線療法も選択肢に加えて治療する必要があると考えた.
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