日本大腸肛門病学会雑誌
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62 巻, 6 号
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原著
  • 豊永 敬之, 西野 晴夫, 完山 裕基, 畠山 知昭, 土屋 博, 辺見 英之, 森岡 香, 中条 徹朗, 高橋 敬二, 福島 恒男, 松島 ...
    2009 年 62 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の内視鏡的治療後の至適サーベイランス方法を検討した.1998∼2001年に早期大腸癌に対し内視鏡的切除を行い,その後2回以上のTCSを行った640症例(M癌622例,SM癌18例)を対象とした.局所再発は初回治療後3∼38カ月に17症例(2.8%)で認めた.すべて内視鏡的追加切除にて治癒した.サーベイランスTCSにて28症例(4.4%)に35病変の大腸癌が発見された.高齢群(60歳以上)と大腸腺腫の合併の二因子が新たな大腸癌の独立した危険因子であった.semi-clean colon達成前の大腸癌の累積発見率が2%を越えるのは初回治療後13カ月で,達成後ではsemi-clean colon化の31カ月後であった.早期大腸癌の内視鏡治療後は,新たな大腸癌発生の高危険群である.新たな大腸癌の早期発見,早期治療のためには,semi-clean colonを目標とした計画的かつ長期的なサーベイランスが必要である.その際,幾つかの危険因子の設定が必要である.
  • 宮崎 道彦, 黒水 丈次, 豊原 敏光
    2009 年 62 巻 6 号 p. 396-400
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    脱出性痔疾患に対するPPH®による粘膜環状切除後5年経過の治療成績を検討した.
    対象:本術式を開始した2000年3月から2001年9月の間に手術を施行した100例を対象とした.2006年1月にアンケート調査を行い評価した.結果:有効回答数は44例(女性16例),年齢は中央値67(36∼93)歳であった.観察期間は中央値61(44∼68)カ月であった.術後自覚症状のうち出血は7例(16%),痛みは6例(14%),脱出は11例(25%)であった.1日の排便回数は中央値1(0.3∼4)回,排便時間は中央値7(1∼35)分であった.8例(9%)に便失禁を認め,うち半数が術前と比べ悪くなったと回答し,4例(9%)にパッドの使用を認め,うち半数が術前と比べ悪くなったと回答していた.満足度と推薦度は良好であった.不満足,推薦しないと回答した症例は術後早期から何らかの症状があった.結語:PPH®による粘膜環状切除は安全であるが不良例があることを念頭に置き長期経過を評価しなければならない.
  • 宇都宮 高賢, 柴田 興彦, 山邉 素子, 菊田 信一, 堀地 義広, 川野 豊一, 八尾 隆史
    2009 年 62 巻 6 号 p. 401-410
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    術後遅発性出血は,創傷治癒過程の増殖期を中心に組織再構築期までおこる合併症である.その原因は創傷治癒障害,血中の凝固異常,線溶系機能の亢進によるものではなく,術後の正常の創傷治癒過程において細胞外マトリックス内の血管増殖因子活性により血管が新生されるときプラスミノゲン·アクチベータが活性され,この時期に一致して出血がおこると考えられる.血小板の変動は,創傷治癒サイトカインの変動と強い相関を持ち,特に組織再構築に関与し,血小板の機能障害がおこると治癒期に至るまで出血を経験する事がある.痔核血管は動静脈吻合と露出血管部に出血がおこりやすく,術後はマトリックス内に類似血管が新生されることにより出血しやすくなると推察される.痔核切除創を肛門管内に露出させない縫合手技により出血症例を減少させ,高確率で術後出血が予防できた.
症例報告
  • 中崎 隆行, 浜崎 景子
    2009 年 62 巻 6 号 p. 411-415
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.直腸癌にて経肛門的内視鏡的粘膜切除術(TEM)施行.病理結果は高分化管状腺癌,pSM,ly0,v0であった.術後10カ月目よりCEAの上昇がみられたが上部および下部消化管内視鏡検査やCT検査では異常なかった.その後CEAは1,567.6ng/mlとさらに上昇し,PET-CT施行した.胸腰椎を中心とする多発骨転移を認めた.ゾメタの投与とFOLFOX6による治療を開始し,CEAとALPの低下がみられた.大腸癌で肝·肺転移をともなわない骨転移は稀である.今回,直腸SM癌に多発性骨転移を来した極めて稀な1例を経験したので,文献的考察を加え報告した.
  • 本間 重紀, 片岡 昭彦, 高橋 典彦, 崎浜 秀康, 佐々木 彩実, 藤堂 省
    2009 年 62 巻 6 号 p. 416-419
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代の女性で2007年10月に血便と腹痛を主訴に近医を受診し,直腸癌の診断で2008年1月当科入院となった.既往歴で2005年6月に右乳癌で乳房円状部分切除を行い,術後放射線治療とアロマターゼ阻害薬の内服治療をおこなった.下部消化管内視鏡検査で肛門縁より12cmの直腸に亜全周性の2型腫瘍を認めた.生検では低分化腺癌であった.CTでは直腸に造影効果のある腫瘤性病変を認め,子宮とは一部不明瞭で浸潤が疑われた.2008年1月に低位前方切除,単純子宮全摘術,両側付属器切除を行った.病理組織検査で直腸の異所性子宮内膜症を発生母体とした明細胞腺癌と診断された.Ra,2型,4.5×2.5cm,clear cell adenocarcinoma,pSS,int,INF b,ly2,v1,pN2(7/36),pStage IIIbであった.術後に卵巣癌に準じた化学療法(PTX/CBDCA)を婦人科で行っている.異所性子宮内膜症を発生母体とする直腸原発明細胞腺癌の1例を経験した.
  • 柴田 佳久
    2009 年 62 巻 6 号 p. 420-426
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/03
    ジャーナル フリー
    直腸に発生する印環細胞癌は直腸癌の0.2%と比較的まれな疾患で予後も不良とされる.今回,治癒切除術の2年後に局所再発をきたし再切除術を行った症例を経験した.症例:52歳男性.血便と排便障害で他医を受診し下部直腸癌(低分化腺癌)の診断にて当科紹介された.精査後精嚢部分切除術をともなうマイルス手術を施行.Rb,3型,5×4cm,AI,H0P0M0N2(+),Stage IIIb,Cur B.病理組織診断では印環細胞癌を思わせる組織像でai(精嚢),ly2,v1,n2(+),各断端陰性.術後5-FU/LV補助療法を3クール施行し,その後内服抗癌剤治療を継続した.術後2年時に血尿が出現.膀胱鏡で腫瘤がみられ直腸癌局所再発浸潤と診断され放射線化学療法後に骨盤内臓全摘術を施行.病理組織学的に粘液癌/印環細胞癌で高度リンパ節転移陽性の局所再発と診断された.初回に根治術が施行でき補助化学療法を併施したが,2年で再発をきたし,再手術後に多発骨転移にて他界した.
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