日本大腸肛門病学会雑誌
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63 巻, 1 号
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原著
  • 山田 岳史, 古川 清憲, 横井 公良, 瀬谷 知子, 金沢 義一, 小泉 岐博, 田中 宣威, 田尻 孝
    2010 年 63 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    Thymidylate Synthase(TS)がIrinotecan(CPT-11)の効果に影響を与えるTopoisomerase-I(Topo-I)と逆相関するためCPT-11が5FU無効例に奏効するとの報告がある.しかしTSとTopo-Iは正の相関をするとの報告も認める.TSがTopo-Iと相関するのであればTS高値例ではCPT-11の効果が高く,TS低値例ではCPT-11の効果が低いことになるがその評価は定まっていない.目的:大腸癌においてTSとCPT-11の効果の関係を明らかにする.方法:(1)大腸癌23例について抗癌剤感受性試験を行い,細胞障害率(IR)を効果の指標とした.(2)TS活性値,TSmRNA量を測定し,CPT-11のIRと相関があるか否かを検討した.結果:CPT-11のIRはTS活性値,TSmRNAともに相関関係を認めず,TS活性値,mRNAレベルよりCPT-11の効果を予測することは困難であると考えられた.
  • 野呂 智仁, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次, 小出 欣和, 松岡 宏, 勝野 秀稔, 船橋 益夫, 安形 俊久, ...
    2010 年 63 巻 1 号 p. 6-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    直腸肛門内圧検査における引き抜き検査と直腸刺激検査について検討を行った.対象は,2007年9月から2008年8月に直腸肛門内圧検査を施行した71例である.測定の体位は左側臥位とし,water perfusion型のカテーテルを用いて引き抜き法で行った.直腸肛門の刺激には,径7mmのオバタメトロバルーンカテーテルを使用した.引き抜き検査を3回施行し,生理的肛門管長(HPZ)と肛門管最大静止圧(MRP)を測定.各測定値のばらつきや平均値(mean),中央値(median)など様々な測定値を検討した結果,年齢や性別,便失禁の程度と最も相関するのは,引き抜き検査3回目の値であった.また直腸刺激検査では,便意発現最少量(FS)や最大耐用量(MTV)は年齢や性別,便失禁の程度と明らかな相関関係を認めなかった.しかし耐用量(TV)=(最大耐用量(MTV)-便意発現最少量(FS))を用いると,年齢や性別,便失禁の程度と相関関係を認めた.今後,耐用量(TV)は便失禁の指標となる可能性が示唆された.
臨床研究
  • 木村 聖路, 田中 正則, 福田 真作
    2010 年 63 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    大腸では同時性多発腫瘍の頻度が高いがその局在分布は不明である.今回腺腫患者と癌患者では局在分布に相違があるかを検討した.同時性多発腫瘍を指摘した425例(多発腺腫患者261例,一つ以上の粘膜内癌を含む多発腫瘍患者92例,一つ以上の浸潤癌を含む多発腫瘍患者72例)を対象とした.局在を直腸,左側大腸,右側大腸に3分類し,1区間に限局するものは限局群,2区間以上にわたるものは散在群とした.また直腸または左側大腸を左側群,右側大腸のみを右側群,両側にまたがるものを両側群とした.腺腫,粘膜内癌,浸潤癌の各患者間で各局在群の頻度を比較したところ限局群35.3%,38.0%,48.6%,散在群64.7%,62.0%,51.4%,左側群36.8%,37.0%,58.3%,右側群16.9%,15.2%,15.3%,両側群46.3%,47.8%,26.4%だった.浸潤癌患者で最も限局群の頻度が高く,腺腫患者で最も散在群の頻度が高く,両群間に有意差を認めた(p<0.05).また浸潤癌患者で最も左側群の頻度が高く,両側群の頻度が低かった.腺腫患者(p<0.005)と粘膜内癌患者(p<0.01)に対して有意差を認めた.大腸の同時性多発腫瘍は浸潤癌を含むと局在分布がより狭い範囲に収束し,腺腫や粘膜内癌患者ほど広い分布を示さなかった.
  • 谷村 修, 野崎 良一, 大湾 朝尚, 山田 一隆, 高野 正博, 山下 裕一
    2010 年 63 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    1982年から1986年に当院(高野病院)受診にてクローン病と診断,治療を行った73症例の腸管外合併症について検討を行った.病型は小腸型29症例,大腸型18症例,小腸大腸型26症例であり,平均病脳期間は17年6カ月.経過中にみられた最も多い腸管外合併症は胆石であり,ついで腎結石,腎障害,精神疾患の順であった.これら腸管外合併症は発症後10年以上の経過例に多く見られた.また約20年の経過観察のなかで12症例の死亡が確認された.死亡症例と腸管外合併症の発生例の多くは10年以上の経過例にみられ,長期経過例には本疾患だけでなく腸管外合併症の早期発見が重要と考えられる.
  • 安井 昌義, 三嶋 秀行, 池永 雅一, 宮崎 道彦, 中森 正二, 辻仲 利政
    2010 年 63 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    近年,結腸癌術後に早期経口摂取を開始する検討が行われており,大腸癌手術後の早期回復における役割は大きい.しかしながら,腹腔鏡下低位前方切除術において,術後早期固形食摂取を積極的に行っている報告はまだない.直腸癌に対する腹腔鏡下低位前方切除術後の早期固形食摂取の現状と安全性について検討する.
    対象は腹腔鏡下低位前方切除術を施行した直腸癌20例である.術後1日目から飲水開始,術後2日目から固形食経口摂取開始予定とし,術後の飲水·摂食状況,摂食熱量,摂食後消化器症状,合併症,退院日などについて調査した.
    食事経口摂取については,術後2日目に20例中18例(90%)で固形食の摂取が可能であった.早期経口摂取開始後に,誤嚥,縫合不全など,重篤な合併症を認めなかった.手術日から退院許可日までは中央値6日間で,術後在院期間は中央値9日間であった.
  • 角田 明良, 中尾 健太郎, 渡辺 誠, 松井 伸朗
    2010 年 63 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    目的:教室で経験した結腸癌に対する用手補助腹腔鏡下大腸切除術(HALC)の手術成績を二期に分けて比較した.方法:対象症例150例を前後期,各75例に二分し,患者背景,手術所見,病理所見,術後経過を比較した.結果:後期では前期と比較して術前状態が不良な例もHALCの適応に含め(P=0.031),stage II,IIIの進行癌で高頻度に手術が行われていた(P=0.041).経口摂取の開始は後期では前期より早期に行われ(P=0.009),術後入院期間も短期間であった(P=0.014).手術時間,出血量,術後合併症の頻度は両群間に有意の差は認められなかった.結論:後期では手術適応を広げてHALCが行われたが,前期と比較して特に術後回復で成績が良好であった.今後,長期成績の結果が待たれる.
症例報告
  • 門馬 智之, 野水 整, 渡辺 洋平, 渡辺 文明, 竹之下 誠一
    2010 年 63 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性で,顔面·体幹の皮膚結節の増大を主訴に当院を受診された.それぞれの皮膚結節に対して,切除術が施行され脂腺腺腫および脂腺癌の診断となった.34歳時を初回手術とする3回の大腸癌手術歴があり,内臓悪性腫瘍と脂腺系皮膚腫瘍の合併からMuir-Torre症候群(MTS)の診断となった.Microsatellite Instability(MSI)検査を行いMSI-highと診断され,遺伝子解析にてhMSH2 の胚細胞変異が認められた.免疫組織染色を加え,大腸癌および皮膚腫瘍ともにMSH2蛋白の欠失が確認できた.今回の結果より,免疫組織染色のミスマッチ修復遺伝子の大規模スクリーニングへの代用の可能性が示唆された.これまでの本邦報告例を含めて文献的考察を加え報告する.
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