症例は53歳,男性.直腸癌の診断で当科に紹介され受診した.局所進行直腸癌(RS~Ra,長径7.5cm,SI(骨盤壁),N2,H0,P0,M0,Stage IIIb)と診断し,横行結腸双孔式人工肛門造設術を行い,化学療法(mFOLFOX6,7サイクル)を施行した.画像診断で直腸腫瘍の縮小とリンパ節腫大の消退を認め,化学療法の効果はPR(部分奏功)であった.化学療法終了後17日目に直腸低位前方切除術(D3)を行い,合併症なく退院した.病理組織学的検査ではpSS,pN0,根治度A,化学療法の効果判定はGrade1bであった.
局所進行直腸癌に対して欧米では放射線化学療法が標準治療とされるが,本邦では手術単独治療が多く行われている.放射線照射は様々な合併症や晩期障害を惹起する一方で,前治療なしに充分な切除断端を保持して切除するのは困難な症例がある.本症例では術前化学療法(FOLFOX)により腫瘍縮小を図り,安全に根治手術を施行し得たので報告する.
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