日本大腸肛門病学会雑誌
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64 巻 , 10 号
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特集
主題 I:潰瘍性大腸炎診療の進展
  • 久部 高司, 平井 郁仁, 松井 敏幸
    2011 年 64 巻 10 号 p. 807-816
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    2010年に改訂された潰瘍性大腸炎の診断基準(案)では近年の治療指針の変化や診断に関する新たな知見から潰瘍性大腸炎に関連する胃十二指腸病変,術後回腸嚢炎,Indeterminate colitis,難治例の定義(1.ステロイド抵抗例2.ステロイド依存例3.ステロイド以外の内科治療抵抗例)などについて新たに記載あるいは補筆された.潰瘍性大腸炎は病変範囲および重症度に応じた内科的治療が中心となるため発症早期の的確な診断および病態把握は非常に重要である.病態を客観的に評価するために臨床指標や内視鏡指標などの活動評価指標が存在するが,それぞれの特徴を理解し治療に活用することが必要となる.また,潰瘍性大腸炎は大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症と定義されているが,近年こうした疾患概念と合致しないような潰瘍性大腸炎に関連した上部消化管や小腸病変が報告されており,病因解明への手掛かりとなる可能性が秘められている.
  • 吉村 直樹, 高添 正和
    2011 年 64 巻 10 号 p. 817-824
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎はいまだ原因不明の再燃と寛解を繰り返す慢性の難治性炎症性腸疾患である.原因不明なため根治的治療法はなく薬物による対症療法が内科治療の中心となる.薬物療法の基本は,重症例を除き第一に5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を投与し,不十分な場合はステロイドを併用する.ステロイド大量投与に反応しない重症難治性症例に対しては近年シクロスポリンなどの免疫調節剤の有効性が報告されているが,新たに免疫調節剤タクロリムス,抗TNF-α抗体製剤インフリキシマブが保険適用となった.ステロイド抵抗性難治性潰瘍性大腸炎症例に対する治療選択肢が増えたことにより今後,手術回避率のさらなる向上が期待される.
  • 三浦 総一郎, 高本 俊介, 渡辺 知佳子, 穂苅 量太
    2011 年 64 巻 10 号 p. 825-828
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患は若年者に多く発症する疾患であるが10~15%は高齢者に発症する.高齢者潰瘍性大腸炎は進行が遅く比較的軽度であるという報告が有る一方で,一旦活動性が増すと合併症が多く重篤化しやすいとされる.また,診断にあたっては常に鑑別診断や合併症(とくに感染症や血管障害)に留意する必要がある.原則として若年者に適応される内科療法は適応できるが,高齢者ではより栄養状態が悪化しやすく栄養管理に配慮が必要である.薬物療法では薬物相互作用に気を付ける必要があり,また長期あるいは強力な免疫抑制は感染症などの合併症の危険性を高めるので避けるべきである.重症化した際の手術のタイミングを逸しないことも大切である.個人差も大きいが,今後は高齢者特別に高齢者を対象とした本疾患の診療ガイドラインの確立が必要と思われる.
  • 池内 浩基, 内野 基, 松岡 宏樹, 坂東 俊宏, 平田 晃宏, 竹末 芳生, 冨田 尚裕, 松本 誉之
    2011 年 64 巻 10 号 p. 829-833
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(以下UC)では内科的治療法の選択肢が増加し,2000年以降の手術症例では,ステロイドの投与量は減少している.手術適応の変遷をみると,重症・劇症での手術症例が有意に減少し,それにともない,緊急手術症例も有意に減少している.一方,癌/dysplasiaで手術となる症例が有意に増加していた.
    手術はIPAAとIACAが確立された術式であり,IPAA領域では,選択された症例では1期的な手術が可能になったことが進歩であり,IACA領域では歯状線近くでの吻合が可能になったことが術式の進歩である.手術方法は小開腹手術,腹腔鏡補助下手術,腹腔鏡下手術の長所,短所が現在論議されているところである.
    高齢者の手術症例は2000年以降有意に増加している.その緊急手術の予後は極めて不良であるため,高齢者の重症・劇症例では,内科医と外科医が共観のうえ,手術のタイミングが遅れないようにしなければならない.
  • 藤井 久男, 小山 文一, 中川 正, 内本 和晃, 中村 信治, 植田 剛, 錦織 直人, 井上 隆, 川崎 敬次郎, 尾原 伸作, 中島 ...
    2011 年 64 巻 10 号 p. 834-841
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸亜全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術後に回腸嚢に起こる非特異性炎症である・外科治療成績の向上に伴いクローズアップされてきた病態で,病因は未だ不明であるが,UCの病態と関連があり,腸内細菌の関与が濃厚である.抗菌剤が有効で,多くは一過性であるが,一部に難治例があり,病因・病態の解明とより有効な治療の開発が待たれる.
主題 II:消化管ストーマ造設と便失禁診療の標準化をめざして
  • 西口 幸雄, 井上 透, 福岡 達成, 山本 篤, 池原 照幸
    2011 年 64 巻 10 号 p. 842-845
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    単孔式のストーマの造設術は,消化器外科手術,とくに大腸外科領域においては基本となる手術手技である.手術手技については施設,術者によって種々報告されているが,明確なエビデンスにもとづいた「標準」といったものはない.現時点での標準と考えられる,単孔式ストーマ造設手術手技について解説する.合併症の少ない,管理しやすい良好な消化管ストーマを造設することは,患者および家族にとってとても重要であり,すべての外科医が会得すべき手技である.
  • 赤木 由人, 衣笠 哲史, 白土 一太郎, 岡 洋右, 五反田 幸人, 龍 泰彦, 山口 圭三, 大地 貴史, 田中 夏樹, 笹富 輝男, ...
    2011 年 64 巻 10 号 p. 846-852
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    ストーマ造設術は虫垂炎やヘルニアの手術と同等に位置づけられ,若い外科医の習得すべき手術のひとつとされている.それゆえに定型的な手技・方法の確立が必須である.手術の標準化はその手法が一般的に受け入れられることである.双孔式ストーマ造設術についての文献を比較してみると,その手技や方法に大きな相違はなく,ある程度確立されているものといえる.ポイントは以下の点である.(1)術前のストーマサイトマーキング:骨から距離のある腹直筋上で平坦なところを数カ所マークしておく.(2)腸管の選択:誘導される腸管は緊張がなく,高さのあるストーマができるような部位を選択する.小腸を用いる場合は1~2cm,結腸では1cmの高さを心がける.(3)腹壁トンネルの経路と大きさ:双孔式ストーマでは脱出やヘルニアをきたさないように,腹膜切開は皮膚切開よりも大きくせず,腸管は腹直筋を貫通させることである.
  • 高橋 賢一, 舟山 裕士, 西條 文人, 徳村 弘実, 福島 浩平, 小川 仁, 羽根田 祥, 渡辺 和宏, 鈴木 秀幸, 佐々木 巖
    2011 年 64 巻 10 号 p. 853-859
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    消化管ストーマ造設の標準化を進める上で,適切な分類法に基づいたストーマ合併症の評価が重要である.発症時期別分類としては早期と晩期に分けるのが一般的であるが,早期の定義に関して,過去の報告はストーマ造設術後30日(1カ月)以内とするものと術直後の入院期間中とするものに大別される.術後の入院期間が短縮しつつある昨今,退院直後にストーマ合併症が問題となる症例もみられるので,入院中に限らず術後30日以内を早期と定義するのが良いと考えられる.またストーマ合併症には処置不要なものから緊急手術を要するものまで様々な重症度があるが,重症度別の検討を行った論文は少ない.重症度分類としては有害事象共通用語基準(CTCAE)のストーマ合併症に関するGrade分類が利用可能と考えられるが,用語がストーマケアの現場で使いにくいという問題がある.そこで本稿では用語の修正と追加を行い,ストーマ合併症の重症度分類案として使用可能か検討を行った.
  • 味村 俊樹, 福留 惟行, 倉本 秋
    2011 年 64 巻 10 号 p. 860-866
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    本邦における便失禁診療ガイドライン作成に向けて,評価・診断法と治療総論を述べる.原因診断には病歴・症状,直腸肛門診察,直腸肛門機能検査,肛門管超音波検査が必要である.症状は漏出性と切迫性に大別される.直腸肛門機能検査では肛門内圧検査,直腸バルーン検査,直腸コンプライアンス検査が有用であり,肛門管超音波検査も内・外肛門括約筋の損傷や内肛門括約筋の菲薄化の診断に有用である.治療法は原因・病態,便失禁の程度,QOLへの影響,患者の希望を考慮して総合的に判断するが,その原則は,まず保存的療法を行い,外科的療法を行う場合も侵襲がより低い術式から選択する.国際失禁会議のガイドラインを参考に,我々が推奨する本邦における便失禁療法のアルゴリズムを示す.また,欧米では仙骨神経刺激療法の出現によって外科的療法のアルゴリズムが大きく変化しつつあるので,現在の欧米と将来の本邦での外科的療法のアルゴリズムも併せて示す.
  • 神山 剛一, 安部 達也, 鉢呂 芳一, 國本 正雄, 荒木 靖三, 高野 正博
    2011 年 64 巻 10 号 p. 867-872
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    便失禁の保存的治療では,まず患者の生活習慣を調べた上で食物繊維摂取を促し,便を軟化させるコーヒーやアルコールなどは控えるよう指導する.これに加え薬物療法が選択されるが,軟便が漏れる場合はロペラミドが有効とされ,一方ポリカルボフィルカルシウムは便の性状に関係なく便失禁を改善させる.これら基本的なアプローチで改善しない場合,より専門的な介入の適応となる.便失禁に対するバイオフィードバック療法(以下BF療法)は症状の改善に有用で,海外では広く認められた方法である.当院では薬物療法で改善しなかった54名にBF療法を施行し,Wexner's scoreを9から3へ改善させることができた.他にアナルプラグや逆行性洗腸があるが,いずれも脊髄障害患者や直腸切除後といった特定の対象者で有効性が得られている.
  • 勝野 秀稔, 前田 耕太郎, 山名 哲郎, 吉岡 和彦
    2011 年 64 巻 10 号 p. 873-878
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    便失禁に関する外科治療の報告は多数存在するが,概してそのエビデンスレベルは低く,疾患の性質上,ランダム化比較試験などの大規模試験が困難である.肛門括約筋形成術などの標準的治療から現在のトピックスである仙骨神経刺激療法などの低侵襲手術の試みが欧米を中心に行われており,本邦における外科治療のガイドライン作成が急務である.
    便失禁の外科治療が今回のテーマである「標準化」となるためには,それぞれの治療法の特徴を十分に周知する必要がある.そのために,本邦で行われている肛門括約筋形成術,有茎薄筋移植術やストーマ造設術以外に,現時点では本邦において未承認の仙骨神経刺激療法などの外科治療も含めて文献的考察を加えて紹介する.
主題 III:慢性裂肛の治療
  • 岡空 達夫
    2011 年 64 巻 10 号 p. 879-882
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    裂肛は便通異常にともなう肛門管の過伸展によって生じる肛門上皮の裂創で,非常にポピュラーな肛門疾患であり,保存的治療が奏功する症例が多い.しかし排便にともなう物理的・化学的・生物学的刺激によって,内肛門括約筋の攣縮による血行障害を惹起し,裂肛の潰瘍化,見張り疣・肛門ポリープなどの二次病変の形成,細菌感染,器質的肛門狭窄を併発して慢性化する症例があるので注意を要する.慢性化した症例に対しては種々の外科的治療法が考案されているが,個々の症例の病態に応じて術式を慎重に選択すべきである.
  • 樽見 研, 石山 勇司, 川村 麻衣子, 石山元 太郎, 西尾 昭彦
    2011 年 64 巻 10 号 p. 883-886
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    慢性裂肛の治療について我々の施設で施行している用手肛門拡張術を中心に述べた.用手肛門拡張術は麻酔下で手指を肛門内に挿入して肛門を拡張する方法であるが,その長所は手技が簡単で創を作らないことであり,侵襲が少ないため外来手術にも適している.
    我々の施設では2010年の1年間に170例の裂肛に対して用手肛門拡張術を施行し,有効率は90.6%であった.合併症は3.5%発生したが,いずれも軽度であり保存的治療で改善した.手技は術者の感覚によるところが大きいが,愛護的に行えば安全性が高く,肛門内圧の高緊張状態を速やかに改善するので適応範囲も広く,保存的治療に抵抗する慢性裂肛に対して第1選択になり得る方法と考えられる.
  • 岡本 欣也, 佐原 力三郎, 山名 哲郎, 古川 聡美, 岡田 大介, 西尾 梨沙, 森本 幸治, 高橋 聡, 金子 由紀, 法地 聡果, ...
    2011 年 64 巻 10 号 p. 887-894
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    裂肛に対する手術は根治性と機能温存を目的とし,LSISは内肛門括約筋レベルの狭窄に対し,SSGは肛門上皮に瘢痕形成が強い高度狭窄例に行う.術後7年以内の症例では治癒遷延:LSIS 5.3%,SSG 8.5%,再発:LSIS 2.4%,SSG 5.2%,incontinence: LSIS 0.5%,SSG 1.6%であった.長期経過後に再発や後障害も懸念されるため,手術後10年以上の経過例に対し手術後の満足度,再発,後障害についてのアンケート調査を行った.1990年~1999年(術後10~20年)に当施設で行ったLSISおよびSSGに対し追跡可能であった103例を対象とした.その結果,手術の満足度はLSIS 87%・SSG 93.9%,再発:LSIS 24.1%・SSG 8.2%,incontinence:LSIS 3.7%・SSG 4.1%,またSSGで粘膜脱を疑う症例は2.0%であった.長期経過後,LSIS,SSGともに多くの患者が手術に対して満足しているが,LSISと比較しSSGの根治性は高かった.懸念された長期経過後の後障害の発症は少なく,適切な術式の選択は長期的な患者のQOLを導くため,術式の選択を慎重に行うことが大切である.
  • 坂田 玄太郎, 山田 一隆, 緒方 俊二, 野口 忠昭, 入江 朋子, 佐藤 太一, 深見 賢作, 中村 寧, 田中 正文, 高野 正太, ...
    2011 年 64 巻 10 号 p. 895-900
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    皮膚弁移動術(SSG)は慢性裂肛,術後瘢痕狭窄や肛門管上皮の欠損修復などの多様な病態に対応できるのが特徴であり,瘢痕化した肛門上皮と伸展性の乏しい内肛門括約筋による狭窄に適応がある.手順は裂肛部位より肛門管下部で内肛門括約筋切開を行いつつ,同時に用手拡張を行い,2指が楽に挿入できる程度に肛門を拡張する.瘢痕組織とともに痔核などの随伴病変を切除し,直腸側と皮膚側の縫合を行う.さらに減張皮膚切開を行い,切除創を肛門縁外側の有茎皮膚弁で覆う方法である.当院の治療成績では87%の症例で治癒が得られた.なお,術後の合併症として創治癒遷延,瘢痕狭窄および括約不全などに注意を要する.SSGは慢性裂肛に対して有用な術式である.
  • 鳥越 義房
    2011 年 64 巻 10 号 p. 901-906
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    皮膚切除部に隣接する三角形の皮下茎皮弁を移動し採取部を縫縮するVY形成(V-Y advancement flap)は形成外科では小皮膚欠損の修復には良く使われる手技である.著者は過去4年間に36症例(男性8例,平均年齢45.9歳,女性28例,平均年齢34.9歳)の慢性裂肛切除後再建術にこの手技を用いた.2症例に縫合部の一部に微細な感染や縫合不全を認めたが裂肛の再発や便失禁は認めていない.
  • 宮崎 道彦, 池永 雅一, 安井 昌義, 三嶋 秀行, 中森 正二, 辻仲 利政
    2011 年 64 巻 10 号 p. 907-911
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    手術治療を施行した裂肛性痔瘻26例(女性6例)を対象としretrospectiveに検討した.年齢は27~74(中央値44)歳であった.隅越分類での痔瘻の病型はI型3例(12%),II型20例(76%),III型1例(4%),II型+II型1例(4%),II型とIII型合併1例(4%)であった.施行術式のうちわけは瘻管開放術21例(81%),括約筋温存術4例(15%),両者1例(4%)であった.再発は認めなかった.慢性裂肛は痔瘻(裂肛性痔瘻)に移行する可能性がある.しかしその外科治療は対処しやすく安全である.
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