日本大腸肛門病学会雑誌
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64 巻, 3 号
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原著
  • 渡辺 英生, 松本 欣也, 友澤 滋, 小野 芳人, 竹田 正範, 渡辺 学, 串畑 史樹
    2011 年 64 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    裂肛の発生原因は排便習慣,特に便秘や下痢が主因と考えられている.そこに慢性化要因として局所の変化,肛門括約筋機能や局所の血流の変化が関与すると考えられている.
    今回,我々は排便との関係を調べると同時に,肛門内圧が裂肛の慢性化にどのように関与しているかを調べるために,急性,亜急性,慢性裂肛例と健常例の肛門内圧を測定し,慢性裂肛の病態を推測した.慢性裂肛例では排便異常例は男女共に73%以上であった.健常例では加齢と共に肛門管機能は低下した.慢性裂肛例では男女共に肛門管静止圧は全体に高く,50歳までは静止圧の上昇は著しかった.また,急性,亜急性,慢性裂肛となるにつれて,すなわち,経過が長いほど静止圧は上昇する傾向を示した.したがって,静止圧の上昇は原因ではなく,結果と考えられた.随意圧と静止圧の間にはy=ax+bの相関がえられ,肛門指診により,肛門管静止圧を予測する事が可能と考えられた.
  • 永田 浩一, 伊山 篤
    2011 年 64 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:大腸3D-CT検査の炭酸ガス手動注入時に直腸内圧をモニターすることは,腸管拡張程度の改善に寄与するか比較検討した.
    方法:大腸3D-CT検査を施行した合計140例を対象として圧力計未使用群70例,炭酸ガス手動注入時に圧力計で直腸内圧をモニターした圧力計併用群70例の2群に分けた.大腸を6区分に分類し,2体位分で合計1,680の大腸区分の腸管拡張程度を評価者2名が4段階の腸管拡張スコアで評価した.圧力計併用群では,ガス注入中止時の直腸内圧を記録した.
    結果:圧力計併用群では圧力計未使用群に比較し,両体位でガス注入量が増加し,2体位目の腸管拡張程度では下行結腸を除いた大腸5区分で有意な改善がみられた.ガス注入中止時の平均直腸内圧は,1体位目が32.6mmHg,2体位目は31.2mmHgであった.
    結論:大腸3D-CT検査の送気時に直腸内圧をモニターすることは,腸管拡張程度の改善に有用である.
臨床研究
  • 佐藤 ゆりか, 安部 達也, 鉢呂 芳一, 國本 正雄, 鶴間 哲弘
    2011 年 64 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:内痔核に対するALTA治療において,生体内の変化を実際に捉えることは困難である.今回,痔核発生母地である粘膜下層(以下SM)の厚みを計測し,生体内での変化を捉えられるか試みた.対象:ALTA四段階注射法単独で内痔核治療を行い,治療後の経過が良好で,かつ治療前後に肛門超音波検査を施行できた45例を対象にした.方法:超音波プローブを肛門管に挿入し,SMが最も厚いと思われる部位を計測した.治療後は,治療前の最厚SM部位と同部位のSM厚を計測して比較対照値とした.結果:SM厚は治療後3日,1カ月では変化がなく,3カ月で厚みが減少し(p<0.01),6カ月ならびに1年ではさらに減少していた.結論:ALTA治療後のSM厚の経時的な変化を観察することができたと考える.
  • 難波 美津雄
    2011 年 64 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:MRI拡散強調画像(diffusion weighted whole body imaging:DWI)にて大腸癌原発巣とリンパ節の描出能,描出されたリンパ節の転移の有無について検討した.対象と方法:リンパ節郭清をともなう開腹切除を施行された結腸癌12例と直腸癌11例の計23例を対象に,原発巣では切除固定標本上で最大径を測定しDWIでの描出の有無を検討した.リンパ節はDWI像と切除固定標本で最大なもの1個の径を測定して組織学的転移の有無を比較した.結果:原発巣の描出は18例(78%)で可能であった.描出可能であった原発巣の大きさは平均50mmで,描出不可能であった5例の平均20mmと有意差を認めた(p<0.01).原発巣が描出可能であった症例のうちリンパ節が描出された症例は11例で,組織学的転移陽性は5例であった.リンパ節を描出できなかった7例はいずれも組織学的リンパ節転移はなかった.結論:DWIで描出可能であったリンパ節は転移の可能性があった.
症例報告
  • 野中 隆, 福岡 秀敏, 竹下 浩明, 澤井 照光
    2011 年 64 巻 3 号 p. 150-153
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は34歳女性.妊娠5週時に便潜血反応陽性を職場の検診にて指摘された.妊娠週数が進むにつれて便秘も出現してきたため妊娠25週に,大腸内視鏡検査施行.S状結腸に1/3周を占める2型の腫瘍を認めた.病理組織生検で,高分化腺癌と診断された.腹部単純CT検査,胸部単純X線上,肝・肺転移を認めなかった.胎児の発育を妊娠31週まで待ったうえで誘発経腟分娩を施行(1,620g,女児).産褥経過は良好で,出産後7日目にS状結腸切除術を施行した.術後病理組織所見はmoderately differentiated adenocarcinoma,pMP,int,INFb,ly2,v1,pN1,sH0, sP0,cM0,fStage IIIaであった.術後は母子ともども経過良好で無事退院した.妊娠合併悪性腫瘍の治療に際して,妊娠にかかわる様々な因子を考慮し治療法を検討する必要がある.
  • 井上 隆, 向川 智英, 石川 博文
    2011 年 64 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で,検診で便潜血陽性を指摘され,当院消化器内科を受診した.大腸内視鏡検査で直腸癌と診断され,手術目的に当科紹介となった.CT・MRIで腸管壁外に腫瘤性病変を認め,粘液結節をともなう直腸癌との術前診断で腹会陰式直腸切断術を施行した.腸管壁外の腫瘤性病変は内部がゼリー状粘液で占められ,腫瘍細胞は粘液内に浮遊もしくは粘液塊の周囲を囲むように存在しており,直腸粘液癌と診断した.粘膜下腫瘍様の形態を呈さずに,腸管壁外に粗大な粘液結節を形成した直腸癌はまれであり,文献的考察を加え報告する.
  • 浜崎 景子, 中崎 隆行, 福岡 秀敏, 赤間 史隆
    2011 年 64 巻 3 号 p. 159-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.2009年2月,便秘を主訴に近医受診.腹部CTにて直腸癌による閉塞性イレウスと診断され,経肛門的イレウス管を挿入された.同日夜にイレウス管を自己抜去し,強い腹痛と一時的な血圧低下を認めた.イレウス管を再挿入され,腹部CTを施行.腸管外に造影剤の漏出とイレウス管の脱出を認めた.直腸癌穿孔による穿孔性腹膜炎の疑いにて,当院に救急搬送された.来院時ショック状態であり,緊急にハルトマン手術を行った.腹腔内は便汁で充満し,穿孔部からはイレウス管のバルーンが露出していた.切除標本では直腸Rs部後壁に2型の腫瘍を認め,癌部に40×20mmの穿孔部を認めた.病理組織所見では高分化管状腺癌,pA,ly1,v1, pN0であった.経肛門的イレウス管による腸管穿孔の報告例は散見されるが,自己抜去による穿孔例は自験例以外に報告例を認めなかった.
  • 増田 勉, 稲次 直樹, 吉川 周作, 内田 秀樹, 久下 博之, 横谷 倫世, 山口 貴也, 山岡 健太郎, 稲垣 水美, 下林 孝好, ...
    2011 年 64 巻 3 号 p. 164-169
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性で,下血を主訴に近医受診した.大腸内視鏡検査で,S状結腸に亜全周2型の腫瘍を認め,手術目的にて当院紹介受診となった.上腹部造影CT検査にてinteraorticからretrocavalに及ぶ多発性傍大動脈周囲リンパ節転移を認めた.S状結腸切除術を施行した.また,傍大動脈周囲リンパ節転移巣の一部を切除した.病理組織学的検査では,粘膜内から奬膜下層へかけて一部に腺腔形成をともないまたシート状に増生する腫瘍が混在し,一部には角化像もともなっていた.以上より腺扁平上皮癌と診断.病理組織学的進行度は,pSS,N1,P0,H0,M1(No. 216), stage IVであった.退院後,m-FOLFOX6療法を6クール施行した.術後14カ月の,平成22年2月に施行した腹部CT造影検査にても傍大動脈周囲リンパ節転移に対してCRを維持しており,他に再発を認めておらず経過良好である.
  • 三宅 清花, 上田 渉, 有本 雄貴, 佐野 弘治, 大川 清孝, 田村 和朗
    2011 年 64 巻 3 号 p. 170-177
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は40歳代男性.食欲不振と下腿浮腫を自覚し近医を受診した.貧血と低蛋白血症を認め精査のため入院となった.上部消化管内視鏡検査で胃にポリープが密生し胃ポリポーシスと診断した.下部消化管内視鏡検査では盲腸には2型腫瘍と周囲に数個のポリープが見られた.直腸には数十個のポリープを認めた.胃ポリープの生検組織像,十二指腸ポリープと直腸ポリープの内視鏡的粘膜切除の組織像から若年性ポリポーシスと診断できたが,盲腸の2型腫瘍は高分化型腺癌の診断で,回盲部切除術を施行した.
    若年性ポリポーシスは従来過誤腫であるが近年悪性腫瘍の合併が多数報告され,疾患関連遺伝子としてSMAD4遺伝子とBMPR1A遺伝子の異常が報告されている.今回,若年性ポリポーシスに大腸癌を合併し,その背景因子としてのSMAD4遺伝子の異常を確認できたまれな症例を経験したので報告する.
  • 藤田 敏忠, 川崎 健太郎, 大野 伯和, 三上 城太, 中山 俊二, 小南 裕明, 田中 賢一, 中村 毅
    2011 年 64 巻 3 号 p. 178-184
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は70代男性.排便困難を主訴に当院紹介受診となった.精査の結果,直腸癌,Rb-Ra,circ,cAI(前立腺),cN3,cM1(LYM),cStage IVと診断した.根治術困難と判断し,S状結腸に人工肛門を造設後FOLFIRIによる全身化学療法を施行した.14クール終了後Bevacizumabを追加しさらに4クール施行したところ,遠隔および側方リンパ節転移は消失した.副作用のためBevacizumabを中止し,FOLFIRIのみさらに4クール施行後,腹部CTにて原発巣がprogressive disease(以下PD)となったが,PET-CTにて直腸以外にはFDGの集積亢進は認めなかったため,Hartmann手術を施行した.術後の病理組織診断にて組織学的complete response(以下CR)と診断した.術後13カ月経過した現在,再発徴候なく外来にて経過観察中である.今回FOLFIRI+Bevacizumab療法で組織学的CRが得られた貴重な症例と考えられたので報告する.
  • 関岡 敏夫, 齊藤 昌彦, 田中 俊樹, 平田 邦明, 竹田 彬一, 宮阪 英, 野木 真将, 並里 大, 梶原 正章, 仲井 理, 山田 ...
    2011 年 64 巻 3 号 p. 185-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/03
    ジャーナル フリー
    患者は73歳女性.2009年6月下腹部疝痛,便秘があり注腸透視を施行した.S状結腸に径3cm長さ4cmの巨大憩室を認めた.2010年1月より下腹部痛,排便困難があり大腸内視鏡検査を予定した.検査当日洗腸剤1L飲用後,腹部全体の疝痛と嘔吐を認めた.腹部は著明に膨満していた.緊急CTで大腸腸閉塞と診断した.左下腹部には7カ月前と同じ大きさの巨大S状結腸憩室を認めた.そのすぐ肛門側には4cm大の巨大糞石を認めた.同日大腸内視鏡検査を施行した.S状結腸には管腔全体を占める巨大糞石が嵌頓していた.内視鏡的に糞石を摘除した.18日後腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.切除標本の病理検査で巨大憩室壁は固有筋層を欠き膠原線維から成っていた.巨大大腸憩室で形成された糞石により腸閉塞を来した1例を経験したので報告する.
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