日本大腸肛門病学会雑誌
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64 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 安部 達也, 佐藤 ゆりか, 鉢呂 芳一, 國本 正雄
    2011 年 64 巻 7 号 p. 449-454
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    目的:便失禁に対する肛門管電気刺激療法(AES)の効果について検討した.方法:便失禁に対してAES単独で治療を行った127例(女性85例)を対象とした.刺激装置は家庭用低周波治療器を用い,刺激電極には肛門管リハビリテーション用双極電極を用いた.1回5分間の治療を週1回の頻度で繰り返した.成績:治療回数は4~17回(中央値10回)で,全127例のうち有効が63例(50%),著効が22例(17%),無効が26例,悪化1例,不明が15例で,有効率は67%であった.Wexnerスコアは治療前の9.3から4.9に有意に改善し,肛門内圧(最大静止圧および最大随意収縮圧)も有意に上昇した.合併症は,便秘3例,肛門痛,肛門周囲炎がそれぞれ2例であった.有効であった85例のうち15例で再発を認めた(観察期間18カ月).結論:AESは簡便かつ安全であり便失禁治療のオプションの1つになりうる.
  • 安達 亙, 岸本 恭, 太田 裕志, 小松 修
    2011 年 64 巻 7 号 p. 455-461
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    目的:大腸内視鏡の直腸内反転により観察される健常人の直腸肛門病変の頻度およびその臨床的特徴を明らかにすること.対象:人間ドックで大腸内視鏡検査を行った925例中,反転観察した885例を対象とした.結果:14例(1.6%)に直腸ポリープを認めた.6mm以下で,約半数が非腫瘍性ポリープと判断された.肛門管上部が観察された757例中,内痔核を48例(6.3%),肥大肛門乳頭を153例(20.2%)に認めた.内痔核症例は有意に高齢で,男性に多かった.肥大肛門乳頭は多発例が多く,9mm以下であった.内痔核の合併が有意に少なく,疼痛と出血が有意に多く認められた.しかし肥大肛門乳頭の性状と症状との間には関連はなかった.また,内痔核あるいは肥大肛門乳頭と排便習慣との関連は認められなかった.結論:ドック受診者における直腸ポリープ,内痔核,肥大肛門乳頭の頻度はそれぞれ1.6%,6.3%,20.2%であった.また,それぞれの病変の特徴について記載した.
症例報告
  • 谷口 正次, 加茂 仁美, 山本 淳, 菅瀬 隆信, 吉川 智, 後藤 崇, 中島 健, 指宿 一彦, 古賀 和美, 田中 弘之
    2011 年 64 巻 7 号 p. 462-466
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.1999年9月に直腸癌(RS-S,type 2,5.5×4.0cm大,ss,n4+(19/49),stage IV)に対して低位前方切除術を実施した.UFT 600mg/日内服にて経過観察中,術後2年4カ月のCT検査で大動脈分岐部左に3cm大の腫大リンパ節を指摘された.CEA値も19ng/ml と高値で,大動脈周囲リンパ節再発と診断した.他部位に再発の所見なく,左尿管の一部を付けて再発腫瘍を切除した.切除標本の病理学的検索ではadenocarcinoma,metastaticの診断であった.術後放射線治療(50Gy)を追加し,5'-DFUR 600mg/日+Krestin内服を5年間行った.再手術後9年の現在,再発の徴候なく健在である.再発大腸癌に対する化学療法の治療成績は著明に改善されているが,それのみで治癒を得るには至っていない.孤立性の大動脈周囲リンパ節再発は切除により治癒の可能性もあり,切除の適応についても考慮すべきである.
  • 正村 裕紀, 中野 詩朗, 稲垣 光裕, 柳田 尚之, 工藤 岳秋, 折茂 達也, 及川 太, 米谷 理沙
    2011 年 64 巻 7 号 p. 467-470
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    FOLFOX療法は切除不能進行再発大腸癌における標準化学療法の一つであり,近年急速に普及してきた.高アンモニア血症はFOLFOX療法における稀な有害事象である.今回我々はFOLFOX療法中に意識障害をともなう高アンモニア血症を来たした症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は30歳代女性.虫垂癌(H1P3)にてFOLFOX療法を開始.5クール施行中意識混濁が出現し,血液検査で高アンモニア血症を認めた.分岐鎖アミノ酸製剤の投与と補液で意識障害は改善し,神経症状も認めなかった.
  • 内野 基, 池内 浩基, 佐々木 寛文, 坂東 俊宏, 松岡 宏樹, 竹末 芳生, 冨田 尚裕
    2011 年 64 巻 7 号 p. 471-476
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    Fournier's gangreneは急速に拡大する壊疽性筋膜炎を特徴とし,糖尿病など易感染性の状態や痔瘻など要因を有する場合が多い.今回,基礎疾患,外的誘因なく発症した小児症例を経験したので報告する.症例:8歳男児.38℃の発熱で発症し前医入院となった.3時間ごとにジクロフェナクを要する肛門部痛が急速に進行し,骨盤CTにて肛門周囲膿瘍を指摘され転院となった.痔瘻など肛門周囲皮膚には異常を認めなかった.骨盤CT上,膿瘍に空気像をともない12時間で急速に臀部,陰嚢に拡大したことよりFournier's gangreneと診断し,十分なドレナージ術をおこなった.その後は良好に経過している.結語:Fournier's gangreneは進展速度が速く,早期診断,治療により重篤化を防ぐことが重要である.小児で合併疾患,誘因のない本邦報告例はなく,考察を加えて報告する.
  • 友近 浩, 三枝 直人, 横山 正, 稲垣 均, 横山 泰久
    2011 年 64 巻 7 号 p. 477-480
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;以下,UC)長期罹患例にカルチノイドの合併を認めた2症例を経験したので報告する.いずれも全大腸炎型UCに合併した直腸カルチノイドで,長期経過観察中のサーベイランス内視鏡にて下部直腸に径5~10mm大のカルチノイドを認め,経肛門的切除,ESDを施行した.いずれもtypical carcinoid tumorであった.
  • 池野 嘉信, 山崎 俊幸, 前田 知世, 岩谷 昭, 野上 仁, 小林 孝
    2011 年 64 巻 7 号 p. 481-485
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.排便時出血を主訴に来院し,直腸粘膜脱症候群(Mucosal prolapse syndrome:以下MPS)の診断にて結紮切除術を施行された.病理組織検査にてMPSおよびSM浸潤腺癌(>3,000μm),ly(+),HM(+)と診断された.腹部骨盤CT検査で直腸傍リンパ節の腫大を認め直腸切断術を行った.術後病理組織検査では,直腸に癌遺残はなく直腸傍リンパ節に転移を認めた.MPSは診断の上では大腸内視鏡や直腸鏡が有用である.病理組織学的に粘膜固有層の線維筋症が特徴的であり,良性疾患として扱われているが悪性腫瘍を見逃さないためには病理組織学的な検索が必須である.MPSに合併した悪性腫瘍の報告は稀であり,発生機序や発癌との関連などは不明である.本症例はMPSと直腸癌の偶然の併存かもしれないが,隆起型腫瘍がMPSを誘発させた可能性もあると考えられた.
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