日本大腸肛門病学会雑誌
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65 巻 , 4 号
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原著
臨床研究
  • 三賀森 学, 池永 雅一, 安井 昌義, 宮崎 道彦, 三嶋 秀行, 中森 正二, 辻仲 利政
    2012 年 65 巻 4 号 p. 204-208
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌手術の術後回復強化プログラムの中には硬膜外麻酔による鎮痛が組み込まれている.今回,クリニカルパス使用でのバリアンス評価で排尿機能障害が問題となったため後ろ向きに検討を行ったところ硬膜外麻酔が影響していると考えられた.そのため硬膜外麻酔の条件を変更して改善を認めるか検討した.対象と方法:2010年3月から2010年8月までで開腹手術の35例を変更後の後期群とし,従来の方法での前期群27例と比較した.硬膜外麻酔は従来の方法として0.2%ロピバカインにフェンタニル(1μg/ml)加えたものとし,変更後はロピバカインを0.13%に調製し,排尿機能障害との関連を検討した.結果:後期群では排尿機能障害の頻度が有意に減少し(p=0.02),視覚的評価尺度(VAS: visual analog scale)を用いた疼痛評価でも鎮痛効果に有意差を認めなかった.結論:硬膜外麻酔薬の濃度変更を行うことで鎮痛効果を保持したまま排尿機能障害の頻度を減少させることができた.
  • 坂田 玄太郎, 野崎 良一, 實藤 隼人, 大湾 朝尚, 入江 朋子, 佐藤 太一, 深見 賢作, 山根 圭太郎, 中村 寧, 田中 正文, ...
    2012 年 65 巻 4 号 p. 209-213
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    大腸憩室疾患に伴う稀な粘膜脱症候群様病変2症例を経験した.大腸憩室疾患で長期経過観察中に憩室多発部位にみられた病変である.内視鏡所見は,境界不明瞭な発赤調の多発した粘膜下腫瘍様形態であった.病理学的には粘膜筋板から粘膜固有層上方へ伸びる平滑筋線維の増生,いわゆる線維筋症を認め,直腸にみられる粘膜脱症候群に類似した所見であった.経過中,腺腫や早期癌の併存がみられ,内視鏡摘除を施行した.本病変の確定診断には生検による病理診断が有用であり,腫瘍性病変と鑑別が困難な場合は内視鏡摘除が必要である.わが国では大腸憩室疾患が増加傾向にあり,今後本病変に遭遇する機会が増加することが予想される.憩室多発例では本病変を念頭に入れ,内視鏡観察をすべきである.
症例報告
  • 平木 将之, 徳岡 優佳, 森田 俊治
    2012 年 65 巻 4 号 p. 214-218
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    腸管精嚢瘻は稀な病態である.われわれは直腸癌に対する低位前方切除術後に直腸精嚢瘻を合併した一例を経験したので報告する.症例:40歳代,男性.Raの前壁中心に認められた亜全周性2型直腸癌に対して,低位前方切除術を施行した.D2郭清を行い,Denonvillers筋膜は一部合併切除した.再建はAlbert-Lembert法で側端吻合を行った.病理結果はtub2,pSS,pN1,fStage III a,CurAであった.術後8日目に仙骨前面ドレーンを抜去し,同日に発熱,炎症反応増悪を認めたが,腹膜炎症状は認めなかった.術後11日目に頻尿認め,術後14日目注腸造影にて直腸精嚢瘻と診断した.術後20日目の骨盤CTで精嚢,膀胱内に気腫像を認めたため術後21日目に回腸人工肛門を造設した.術後三ヵ月の注腸造影で精嚢瘻の治癒を確認した後に人工肛門を閉鎖した.直腸癌術後縫合不全に起因する精嚢瘻は過去6例の報告を認めるのみである.
  • 林 裕子, 千野 晶子, 藤本 佳也, 石川 寛高, 岸原 輝仁, 浦上 尚之, 為我井 芳郎, 五十嵐 正広, 高橋 寛, 上野 雅資
    2012 年 65 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する肛門温存術後の吻合部に,狭窄を認める事がある.多くの狭窄例では,用指ブジーやバルーンを用いた内視鏡的拡張術で拡張が可能であり,吻合部が閉鎖まできたす症例は稀である.直腸癌術後の吻合部に膜様閉鎖をきたした例を経験した.症例1は術前化学放射線療法後で,肛門縁上の吻合部は完全に閉塞していたが,内視鏡直視下にて生検鉗子で把持したところ,やわらかく薄い膜であることから,膜様閉鎖であると判断し,鈍的に微小な穿通のみを形成し,さらに針状ナイフにて小切開を加え,バルーンで拡張した.症例2は,内視鏡直視下に送気すると微小な開口部が確認でき,薄い膜で覆われていたため,膜様閉鎖と判断し,針状ナイフにて小切開し,用指ブジーで拡張した.2例とも吻合部の膜様閉鎖に針状ナイフによる内視鏡的切開術が有効であった.
  • 佐野 弘治, 末包 剛久, 上田 渉, 大庭 宏子, 青木 哲哉, 大川 清孝
    2012 年 65 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.17年前に前置胎盤で帝王切開術を受けている.某年7月から下痢と血便があり,前医を受診した.翌月に大腸内視鏡検査(CS)を施行し,直腸に隆起性病変をみとめたため,精査目的で当科を受診した.CSでは,横行結腸中央部に狭窄を伴う表面顆粒状隆起性病変,S状結腸に粘膜下腫瘍様隆起,下部直腸に表面顆粒状の隆起性病変がみられた.腹部造影CT検査では,横行結腸に壁肥厚と壁内部に低吸収域がみられた.子宮は肥大し内部に低吸収域が多発し,子宮背側周囲に多胞性嚢胞がみられたため,子宮内膜症が疑われた.注腸検査では,横行結腸中央部に約6cmにわたる狭窄と鋸歯状の陰影欠損,S状結腸に壁の伸展不良,直腸に壁のひきつれと隆起を認めた.2ヵ月後CSを行い,横行結腸中央部,下部直腸からの生検で腸管子宮内膜症と診断した.横行結腸に病変をみとめた腸管子宮内膜症は,本邦では2例目で非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 渡部 顕, 小金井 一隆, 二木 了, 杉田 昭, 鬼頭 文彦
    2012 年 65 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    クローン病の直腸肛門病変に対する直腸切断術後の会陰創治癒遅延から発生したと考えられた会陰創回腸瘻の2症例を報告する.症例は小腸大腸型クローン病,36歳と30歳の男性で,直腸切断術後16ヵ月と4ヵ月に会陰創から腸液が流出した.精査で会陰創回腸瘻と診断し,交通のあった小腸の部分切除術を行った.術後,症例2は瘻孔が治癒したが,症例1は再発し,効果は不明であったが患者の希望によりinfliximabを投与した.瘻孔は一旦閉鎖したが,23ヵ月後に再発し,交通のあった小腸部分切除施行後,治癒した.2症例とも小腸には術前検査や病理所見にクローン病の病変はなく,会陰創治癒遅延による慢性炎症で形成された瘻管との交通が原因と考えた.
    クローン病に対する直腸切断術は直腸肛門病変の根治とQOLの改善が期待される.一方,会陰創治癒遅延に起因する合併症があり,その発生に留意する必要があると考えられた.
  • 東 幸宏, 丸尾 啓敏
    2012 年 65 巻 4 号 p. 235-238
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    72歳,男性. 2008年2月,直腸癌に対して低位前方切除術,リンパ節郭清(D3)を施行した.切除検体病理所見は,高分化型腺癌,pSS,pN0,sP0,sH0,ly0,v0,pStage IIと診断された.術後経過は良好で術後14日目に退院となった.術後補助化学療法は行わずに経過観察していた.術後2年が経過した2010年2月,5時方向の肛門管に長径1cm大の1型の隆起性病変を認め,生検にて腺癌と診断された.精査ののち2010年3月手術を行った.リンパ節郭清の必要性,肛門機能障害の危険性を考慮し,術式は腹会陰式直腸切断術を選択した.病理学的には,直腸癌の肛門管再発と診断された.本症例の再発形式として手術時の自動吻合器での肛門裂傷に原発直腸癌がimplantationした可能性が最も考えられた.直腸癌術後のimplantationによる再発部位は吻合部が一般的であり,肛門管はきわめてまれである.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 加藤 久仁之, 大塚 幸喜, 板橋 哲也, 秋山 有史, 吉田 雅一, 若林 剛
    2012 年 65 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/03
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性,肛門部痛と排便困難を主訴に来院した.直腸指診で直腸全壁に表面平滑な腫瘤を触知した.CTでは長径112mmの腫瘤を認め,子宮との境界は不明瞭であった.針生検による病理組織学的検査でc-kit陽性で直腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.手術を考慮した場合,直腸切断術および子宮合併切除が必要と考えられたが,患者本人が肛門温存を希望したため,術前補助療法としてメシル酸イマチニブ(400mg/日)の投与を行った.投与開始60日後のCTでは腫瘍は43mmへ縮小し,子宮との境界は明瞭であり肛門温存手術が可能と判断し内肛門括約筋切除術を施行した.腫瘍は液状変性を来たしており,c-kitおよびCD34陰性であり,組織学的効果判定はgrade3(pCR)であった.GISTの治療の第一選択は外科的切除であり,直腸の場合,直腸切断術が選択されることが多いが,自検例のように術前補助療法により肛門温存できる可能性が示唆された.
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