日本大腸肛門病学会雑誌
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66 巻, 2 号
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臨床研究
  • 矢野 孝明, 浅野 道雄, 尾田 典隆, 田中 荘一, 川上 和彦, 松田 保秀
    2013 年 66 巻 2 号 p. 77-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:III,IV型の肛門周囲膿瘍で切開排膿した症例における,無症状に経過する症例の割合やそれに影響を及ぼす因子について検討し,IILA型との比較も施行した.対象・方法:肛門周囲膿瘍(IILA,III,IV型)の診断で切開排膿した330症例を対象とし,IILAと深部膿瘍(III,IV型)のタイプに分けて比較検討した.また,有症状に関するリスク因子についても検討した.結果:症状の有無においてタイプ間で有意差を認め(P<0.01),『症状あり』がIILA:35%,深部膿瘍:71%であった.考察:深部膿瘍の切開後に,無症状症例の存在が明らかになったことは臨床的に有意義である.今後,痔瘻についてさらなる精査・検討が臨まれる.
  • 小池 淳一, 船橋 公彦, 塩川 洋之, 新井 賢一郎, 白坂 健太郎, 鈴木 孝之, 鏡 哲, 栗原 聡元, 島田 英昭, 金子 弘真
    2013 年 66 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    進行再発大腸癌に対する全身化学療法の効果予測因子を解析するため,血中CEA値,転移臓器個数,組織型に着目し,1次治療としてmFOLFOX6±bevacizumab療法を導入した症例について,臨床成績との関連を後方視的に検討した.当科で経験した症例は69例,内訳はmFOLFOX6単独が38例,bevacizumabを併用した症例は31例であった.全症例のtime to treatment failure(以下,TTFと略記)は5.5ヵ月,progression free survival(以下,PFSと略記)は9.1ヵ月,overall survival(以下,OSと略記)の中央値は27.9ヵ月であった.組織型別奏効率は,TUB1群:50.0%,TUB2群:52.9%,MUC+POR群:7.6%,OSでもMUC+POR群がTUB1+TUB2群に対して有意に予後不良であった.MUC+POR群の奏効率とOSが他の組織型より不良であり,治療戦略の更なる工夫が必要と考えられた.
症例報告
  • 奥山 隆, 齋藤 一幸, 下地 信, 高橋 修平
    2013 年 66 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.右下腹部痛と発熱を主訴に当院内科を受診し,腸閉塞の診断にて当科へ紹介となった.右下腹部に限局性の圧痛を認め,同部に鶏卵大で弾性硬の腫瘤を触知した.腹部CT検査では回盲部の腸管壁の不整肥厚と,その近傍に腸間膜膿瘍が疑われた.受診時は限局的で軽度な腹膜炎症状であったため保存的加療を行った.入院後,症状改善はみられず,小腸癌や悪性リンパ腫などの悪性疾患が原疾患であることを否定できないことから入院後4日目に手術を施行した.開腹すると回盲部腸間膜の腫瘤は周囲腸管と共に一塊となり,回腸末端から60cmの回腸が強固に腫瘤と癒着していた.手術は回盲部切除術+回腸部分切除を施行した.摘出標本では回盲弁から約2cmの回腸に腸間膜膿瘍へ穿通する憩室を認め,病理組織所見とあわせ回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍と診断した.術後経過は良好で第17病日に退院となった.
  • 三枝 直人, 中村 利夫, 福本 和彦, 今野 弘之
    2013 年 66 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    頸髄損傷後の高度排便障害に対して経皮内視鏡的盲腸瘻造設術(Percutaneous endoscopic cecostomy;PEC)を行い,順行性浣腸(Antegrade continence enema;ACE)が奏功した例を経験した.症例は41歳,男性.16歳時にラグビー中の事故で第6/7間頸髄損傷を来し,胸部以下が不随となった.週に3回,グリセリン浣腸を約2時間にわたって4~6回繰り返して排便を得ていたが,介助を要し多大な手間を伴うものであった.転居に伴い当院を受診時,便失禁はなかったが便意の喪失がみられた.X線透視下で内視鏡を盲腸まで挿入し胃瘻造設に倣いPECを施行した後,グリセリン浣腸液によるACEを行い20分程度で排便が完了出来るようになった.PECは安全に施行可能であり,脊髄障害による高度排便機能障害患者にとって福音となる治療手段であると思われる.
  • 白坂 健太郎, 船橋 公彦, 小池 淳一, 栗原 聰元, 塩川 洋之, 牛込 充則, 赤坂 喜清, 澁谷 和俊, 金子 弘真
    2013 年 66 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    Mesenteric inflammatory veno-occlusive disease(以下MIVOD)は腸間膜の静脈のみに起こる炎症により惹起される虚血性障害の一つとされ,非常に稀な疾患である.症例は既往にギランバレー症候群がある49歳の男性.腹部膨満を主訴に来院し,腹部CT検査で回結腸動脈周囲のリンパ節腫大と,回盲部粘膜下腫瘍による腸閉塞所見を認めた.下部消化管内視鏡検査で回盲部に粘膜下腫瘍を認めたが,生検ではGroup 1であった.術前確定診断に至らなかったが腸閉塞症状が増悪したため,右半結腸切除術(D3)を施行した.回結腸動脈に沿うリンパ節腫大と,バウヒン弁直上に5×4cmの粘膜下腫瘤を認めた.組織学的に悪性所見はなく,静脈に限局して血栓や内腔狭窄,炎症性リンパ球集族を認め,MIVODと診断した.本疾患の本邦報告はなく,稀な疾患と考えられた.
  • 河野 眞吾, 小林 昭広, 西澤 雄介, 伊藤 雅昭, 杉藤 正典, 齋藤 典男
    2013 年 66 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.2005年5月血便を主訴に発見された直腸癌に対し超低位前方切除術を施行.病理所見はtype2,5.5×2.8cm,tub2,pMP,ly1,v2,pN0,pPM0,pDM0,pRM0.術後補助化学療法は行わず経過観察中であった.2006年7月発語のしづらさを自覚し,精査施行したところ,左前頭葉に3.5cm大の転移性脳腫瘍を指摘.脳内の他部位に転移巣を認めず,肝・肺・局所にも再発転移巣を認めなかった.左前頭葉転移性脳腫瘍に対し覚醒下開頭腫瘍摘出術および術後放射線療法(total45Gy)を行った.現在,術後5年経過し無再発生存中である.孤立性脳転移の中には,適切な治療を行うことにより長期生存が得られる症例が存在する.
  • 坂口 達馬, 徳原 克治, 岩本 慈能, 上山 庸佑, 吉田 和正, 奥野 雅史, 和田 穣二, 中根 恭司, 權 雅憲
    2013 年 66 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    腸回転異常を伴った大腸癌に対し腹腔鏡下手術を施行した1例を経験した.症例は78歳,男性.腹部手術の既往歴なし.下部消化管内視鏡検査にて肛門縁より約50cmの部位に大腸癌を指摘された.S状結腸癌の術前診断で腹腔鏡下手術を施行したところ,腸回転異常を伴っており腫瘍は盲腸に認められた.右半結腸切除を施行,血管走行が不明瞭でありリンパ節はD1郭清となった.腸回転異常症は小児外科領域において代表的な疾患の1つであり成人例は稀である.術前に腸回転異常症の併存を疑った場合は,解剖が通常とは異なり支配血管の同定が困難であるため,MDCTなどにより腫瘍の存在部位を把握して手術に臨む必要があると考えられた.
  • 向井 俊貴, 福長 洋介, 池田 篤志, 根木 快, 永末 裕友, 山川 景子, 及川 芳徳, 秋吉 高志, 小西 毅, 藤本 佳也, 長山 ...
    2013 年 66 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,右鼡径リンパ節に転移をきたした盲腸腺内分泌細胞癌に対して化学療法を行いpCRを得た一切除例を報告する.
    症例は58歳男性.盲腸原発腺内分泌細胞癌および右鼡径リンパ節転移の診断でmFOLFOX6+bevacizumabを開始した.6コース後にPETで右鼡径リンパ節への集積が消失した時点で腹腔鏡下回盲部切除術および右鼡径リンパ節郭清術を施行した.病理では主病巣,リンパ節ともにviable tumor cellなく治療効果はGrade3,pCRであった.術後にmFOLFOX6+bevacizumabを6コース行い,18ヵ月再発所見はない.
    内分泌細胞癌に腺癌を含む腺内分泌細胞癌は,早期から転移をきたしやすく予後不良とされる.本症例は結腸癌では非常に稀な鼡径リンパ節転移も認めた.確立された化学療法はなく,肺小細胞癌に準じた治療が行われることが多いが,大腸腺内分泌細胞癌に対しては一般の大腸癌に準じた化学療法も考慮すべきと考えられた.
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