日本大腸肛門病学会雑誌
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66 巻, 4 号
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原著
  • 藤井 正一, 石部 敦士, 大田 貢由, 渡辺 一輝, 渡邉 純, 辰巳 健志, 山岸 茂, 市川 靖史, 大木 繁男, 國崎 主税, 嶋田 ...
    2013 年 66 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    高齢者に対する手術では根治性と同時に主要臓器機能低下を考慮した合併症対策が必要である.著者らは,80歳以上の大腸癌症例の手術成績と長期予後を検討した.1992年から2010年の間の大腸癌切除例3,267例を80歳以上(O群),80歳未満(Y群)に分け治療成績を比較した.O群238例,Y群3,029例で,O群に補助化学療法施行例と腹腔鏡手術例が少なかった.術中出血量はY群で多く,手術時間はY群で長かった.術後合併症では,呼吸器合併症がO群に多かった.O群における合併症発生に関連する因子の多変量解析では,腹腔鏡手術例で合併症が少なかった.長期成績では全生存率はStage IIIbを除く各StageでY群が良好であったが,無再発生存率ではStage IIIaのみで差があった.再発に対する治療では,O群で緩和ケアが多く,切除術施行例が少なかった.総体的にみてO群の短期成績は良好であり,腹腔鏡手術が合併症減少に有用であることが示唆された.
臨床研究
  • 瀧井 麻美子, 前田 清, 永原 央, 野田 英児, 渋谷 雅常, 鎌田 紀子, 十河 光栄, 山上 博一, 渡辺 憲治, 平川 弘聖
    2013 年 66 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    クローン病(以下CD)に合併する下部消化管癌は近年報告例が増加しているが依然症例数が少なく,その特性や予後などに関する検討も不十分である.2001年から2011年5月まで当科で手術を施行したCD合併下部消化管癌6例9病変に関する検討を行った.年齢は32歳から73歳(中央値40.0歳).CDの罹患期間は全例で10年以上であった.発生部位は直腸~肛門管で4病変,小腸,S状結腸が各々1病変,瘻孔が2病変,回盲部が1病変であった.1例を除く5例は根治術が施行できた.肉眼型は0型が5病変,1型が2病変,5型が1病変,不明が1病変であった.組織型は高分化腺癌が4病変,中分化腺癌が2病変,粘液癌が2病変,不明が1病変であった.進行度はStage0 1例,Stage I 1例,Stage II 3例,Stage IV 1例で,再発は1例のみであった.近年は内科的治療の進歩でCDの治療成績が向上する一方,癌の発生を念頭においた経過観察が必要である.また,若年発症が多く,進行癌での発見も多いためサーベイランス法の確立が必要である.
症例報告
  • 下立 雄一, 藤田 朋紀, 勝木 伸一, 佐々木 一晃
    2013 年 66 巻 4 号 p. 234-240
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    Infliximab(IFX)導入後に臨床的寛解が得られた潰瘍性大腸炎(UC)の2症例においてIFX初回投与後およびIFX3回投与後(0,2,6週での寛解導入後)の大腸内視鏡所見を経時的に追跡し,内視鏡所見がその後の臨床経過に及ぼす影響を観察した.2症例ともにTacrolimus抵抗性の中等症~重症UCであり,IFX初回投与後に臨床的かつ内視鏡的寛解が確認されたが,症例2では8週目の内視鏡検査で直腸からS状結腸の一部に微細顆粒状変化を認めた.症例1では82週間,症例2では36週間にわたって臨床的寛解が維持されており,IFX投与後の内視鏡的炎症の改善は長期予後の予測に有用であった.さらに2週目時点で臨床的寛解が得られた場合には,内視鏡的な炎症評価なく長期予後を推測できる可能性が示唆された.
  • 福岡 秀敏, 中崎 隆行, 赤間 史隆, 濱崎 景子, 北里 精司
    2013 年 66 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.既往歴はなく,排便習慣の異常なし.排便時の出血および腫瘤脱出を自覚し近医受診.大腸内視鏡検査を施行したところ,下部直腸前壁から右側に約4cm大の表面が浮腫状で白苔を伴う芋虫状の単発性隆起性病変を認めた.生検の結果,granulation tissueのみで悪性所見は得られなかった.出血・脱出を繰り返すこと,直腸癌を完全に否定できなかったことから,経肛門的腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的に腫瘍は過形成性の腺管からなり表層は線維性化膿性滲出物と炎症性肉芽組織からなるいわゆるcapで被われておりcap polyposisの診断となった.cap polyposisはポリープ表面に帽子状の炎症性肉芽組織の付着を特徴とした稀な炎症性腸疾患である.今回,特異な形態を呈し,直腸癌との鑑別が困難であったcap polyposisの1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 野中 隆, 永田 康浩
    2013 年 66 巻 4 号 p. 246-250
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.4年前,直腸膀胱瘻に対しS状結腸双孔式ストーマ造設.軽度肥満で長期にステロイド剤内服中であった.最近,ストーマ傍ヘルニアを指摘されていたが,イレウス症状の増強とストーマ管理も難しくなってきたため腹腔鏡下にヘルニア根治術を施行した.挙上結腸内側に長径10cm,短径5cmのヘルニア門を認めた.挙上結腸が鍵穴状の中央部に収まるようにParietexTM parastomal meshを巻き付け,ヘルニア門を覆いタッカーで固定.更に,挙上結腸には有茎の大網を巻き付けるように縫合固定を行い鍵穴中心部の補強を行った.術後経過良好で術後6日目に退院となり,術後1年経過したが再発は認めていない.肥満や糖尿病・ステロイド内服中などの感染高リスク例には,meshを用いた腹腔鏡下ヘルニア根治術が有用であると考えられた.
  • 平田 敬治, 松田 博光, 豊永 敬之, 園田 幸生, 清永 英利, 冨永 洋平, 遠藤 伸悟, 小林 広幸, 寒竹 泰広, 壬生 隆一
    2013 年 66 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は34歳男性.血便・肛門部痛を主訴に受診され,直腸診・内視鏡検査で下部直腸に腫瘤を認め,生検で高分化型腺癌と診断した.精査で外膜浸潤と所属リンパ節転移を認めたが,遠隔転移はなく,臨床病期はRbRa A P0 H0 M0 N2,cStage IIIbであった.括約筋温存と十分な剥離断端確保を目的に術前補助化学療法としてXELOXを開始した.2コース施行し原発巣・リンパ節は著明に縮小したが,有害事象としてgrade 3(CTCAE)の下痢・食思不振を認めた.2コースでXELOX終了し,腹腔鏡下直腸低位前方切除を施行した.病理組織検査では癌細胞を認めず病理学的完全奏効と診断した.術後補助化学療法としてXELOXを再開し,術後7ヵ月時点で再発徴候を認めていない.直腸癌に対する術前化学放射線療法は局所再発を低下させるが,術後合併症増加や排便機能などのQOL低下が指摘されている.本症例のように放射線治療を併用しない術前化学療法により完全奏効が得られれば,良好な予後とQOLが期待できると思われる.
  • 松村 勝, 高橋 賢一, 舟山 裕士, 西條 文人, 生澤 史江
    2013 年 66 巻 4 号 p. 258-262
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.2009年10月に腹痛と気尿,発熱を自覚し,当院を受診した.来院時細菌尿を認め,腹部CTではS状結腸の多発する憩室と壁肥厚,膀胱背側の膿瘍を認めた.MRIではS状結腸から膿瘍へと伸びる瘻孔と膀胱三角部の壁肥厚を認めた.膀胱鏡では膀胱三角部の著明な浮腫と肉芽を認めた.以上よりS状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻,骨盤内膿瘍と診断した.膿瘍が膀胱三角部に密に接し,尿路変向を回避できない可能性があるため,膿瘍の縮小と瘻孔の閉鎖を期待して,まず回腸人工肛門造設術を行った.膿瘍の縮小を確認した約10ヵ月後にS状結腸部分切除術,回腸人工肛門閉鎖術を行った.瘻孔は閉鎖しており,膀胱部分切除は回避できた.膀胱三角部にかかる瘻孔を有する結腸憩室炎はまれであるが,2期分割手術により膀胱部分切除と尿路変向を回避しうると考えられた.
  • 指山 浩志, 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 堤 修, 星野 敏彦, 矢野 匡亮, 小池 貴志, 倉持 純一, 坪本 貴司, 清水 亨, 八尾 ...
    2013 年 66 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は,70歳代男性.主訴は,腹部膨満と便秘.腹部X線,CT検査で右側結腸に多量の便の貯留と著明な腸管の拡張が認められた.注腸検査では脾彎曲から口側の結腸の拡張を認めた.大腸内視鏡では粘膜面に異常所見を認めず,器質的な狭窄を生じる病変を認めなかった.腸管通過時間検査では,下行結腸手前まではマーカーが遅滞なく流れることが確認され,下行結腸での通過障害が考えられた.保存的加療で改善がないため,結腸亜全摘術を施行したところ,術後は排便状態が良好となり症状が改善した.病理検索では下行結腸で神経叢の数,神経節細胞数がともに減少しSegmental Hypoganglionosis(SH)と診断し,これが通過障害の原因と思われた.SHは非常にまれな病態であるが,機能性狭窄部の結腸切除により症状の改善が見込まれるので,保存的に改善されない症例では外科的治療も考慮すべきである.
  • 大橋 勝久, 佐々木 章公, 松尾 嘉禮, 大橋 勝英
    2013 年 66 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル フリー
    直腸肛門悪性リンパ腫は大腸に発生する悪性疾患の約0.2%とまれで1),さらに肛門原発例は極めてまれである2).海外では男性同性愛者に多く,後天性免疫不全症候群による細胞性免疫の低下が発症の誘因とされている.しかしながら本邦では報告数が少ないため関連性は指摘されていない.治療法も確立されているとはいえず,外科的切除や化学療法が有効との報告が多いが予後は極めて不良である.われわれはHTLV-1キャリアーを以前から指摘され,肛門悪性リンパ腫診断時に成人T細胞性白血病を合併していた症例を経験した.化学療法を行ったが,早期に感染性合併症により治療関連死した.一連の経過から,背景に強い細胞性免疫の低下があったと推察された.
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