目的:大腸癌術前後の腸内細菌叢の変化,surgical site infection (SSI)のリスク因子,SSI分離菌を分析し,SSI防止に向けた対策を検討する.方法:[検討1]大腸癌81例について術前後の腸内細菌叢の変化を16S rRNAを標的とした定量的RT-qPCR法を用いて解析した.[検討2]初発大腸癌444例(結腸癌327例,直腸癌117例)を対象とし,SSIリスク因子,SSI分離菌と腸内細菌叢の変化との関連を検討した.結果:[検討1]術後では最優勢菌である偏性嫌気性菌が有意に減少する一方,病原性を有する
Enterobacteriaceae,
Enterococcus,
Staphylococcus,
Pseudomonasは有意に増加した.[検討2]SSI は46例(10.4%)に発生.リスク因子としてRI,手術時間,腹腔鏡手術に有意差があり,SSI分離菌の91.7%は術後腸内細菌叢のなかで増加した菌群に属する菌種であった.結論:大腸癌術後SSIのリスク因子としてはRI,手術時間が重要で,SSI防止には腹腔鏡下手術が望ましい.SSI分離菌の大部分は術後腸内細菌叢で増加した菌群に属しており,周術期における腸内細菌叢の安定化が望まれる.
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