日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
67 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 和田 朋子, 山岸 茂, 樅山 将士, 原田 真吾, 佐藤 渉, 松尾 憲一, 仲野 明
    2014 年 67 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:大腸憩室症の緊急手術における合併症発生の危険因子を検討し,適切な術式を考察する.方法:大腸憩室症穿孔,または難治性大腸憩室炎の診断で手術を施行した33例についてClavian-Dindo分類3以上の合併症発生群10例と非発生群23例に分けて検討した.結果:単変量解析では合併症発生群で有意にHinchey分類3以上,出血が多く,ICU在室期間が長かった.多変量解析ではHinchey分類3以上が独立危険因子として抽出された(HR9.199,95%CI 1.030-82.133,p=0.047).Hinchey分類3以上の14症例に関し検討をすると,多変量解析で血清alb<3.0が独立危険因子として抽出された.結論:Hinchey分類3以上の憩室炎に対する手術は合併症発生頻度が高い.特に血清alb<3.0の患者では,過大侵襲を避けた術式を選択し,厳重な術後管理が必要であると考えられた.
  • 宇都宮 高賢, 菊田 信一, 柴田 興彦, 山邉 素子
    2014 年 67 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    乳児痔瘻113症例に対して発生時期,瘻管数,治療回数と治癒までの期間について検討した.治療方法は,瘻管を形成している肛門小窩より30%硝酸銀溶液を注入し,瘻管内を腐食する方法を行った.単発性痔瘻は,83例,多発性痔瘻のうち,2本発生痔瘻は23例,3本以上発生痔瘻は7例であり,半数は異時性に発生した.単発性痔瘻,多発性痔瘻とも1ヵ月目と6ヵ月目にピークをもち発生した.硝酸銀注入後7日までに57%,14日までに73%の症例の瘻管閉鎖が確認できた.単発性痔瘻,多発性痔瘻の症例の治癒率,治癒期間に差がみられたが,35日までに全員完治し,再発もなかった.硝酸銀の注入回数も1回のみが80%,2回注入が14%,3回注入は6%にとどまり,合併症も軽微であった.硝酸銀による痔瘻瘻管の腐食療法は,早期に患児,家族ともに負担をかけることなく治癒できる治療方法と結論できた.
  • 大東 誠司, 須藤 一起, 大出 幸子, 高橋 理, 坂本 史衣, 小野寺 久
    2014 年 67 巻 3 号 p. 158-167
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌術前後の腸内細菌叢の変化,surgical site infection (SSI)のリスク因子,SSI分離菌を分析し,SSI防止に向けた対策を検討する.方法:[検討1]大腸癌81例について術前後の腸内細菌叢の変化を16S rRNAを標的とした定量的RT-qPCR法を用いて解析した.[検討2]初発大腸癌444例(結腸癌327例,直腸癌117例)を対象とし,SSIリスク因子,SSI分離菌と腸内細菌叢の変化との関連を検討した.結果:[検討1]術後では最優勢菌である偏性嫌気性菌が有意に減少する一方,病原性を有するEnterobacteriaceaeEnterococcusStaphylococcusPseudomonasは有意に増加した.[検討2]SSI は46例(10.4%)に発生.リスク因子としてRI,手術時間,腹腔鏡手術に有意差があり,SSI分離菌の91.7%は術後腸内細菌叢のなかで増加した菌群に属する菌種であった.結論:大腸癌術後SSIのリスク因子としてはRI,手術時間が重要で,SSI防止には腹腔鏡下手術が望ましい.SSI分離菌の大部分は術後腸内細菌叢で増加した菌群に属しており,周術期における腸内細菌叢の安定化が望まれる.
症例報告
  • 伏木 麻恵, 下山 雅朗, 遠藤 和彦
    2014 年 67 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    人工肛門閉鎖術は比較的低侵襲の手術ではあるが,術後にBacterial translocationによるものと考えられる敗血症の1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.3ヵ月前に直腸癌に対して超低位前方切除術,一時的回腸人工肛門造設術を施行し,今回人工肛門閉鎖を行った.第2病日に食事を開始したところ,悪寒・戦慄および発熱が出現し,第6病日に敗血症性ショックをきたした.種々の検査にて明らかな感染源は特定されなかったため,Bacterial translocationをきたし,敗血症に至ったと考えられた.人工肛門閉鎖術後は廃用性萎縮している人工肛門の肛門側腸管に食物が通過した際にBacterial translocationをきたす可能性があるため,注意が必要であると考えられた.
  • 中野 雅人, 瀧井 康公, 丸山 聡, 中山 真緒, 福本 将人
    2014 年 67 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例1は54歳男性,2001年8月,2型の上行結腸癌に対し手術を行った.術中,原発巣から大網,横行結腸への直接浸潤を認めた.また,大網内のリンパ節,胃大弯リンパ節に転移が疑われ,右胃大網動静脈根部までの合併切除を伴う拡大右半結腸切除術を施行した.病理診断で胃大弯リンパ節,大網内リンパ節に転移を認めた.症例2は59歳男性,2003年2月,2型の盲腸癌に対し手術を行った.術中,原発巣から大網への直接浸潤を認めた.また,胃大弯リンパ節に転移が疑われ,右胃大網動静脈根部までの合併切除を伴う右半結腸切除術を施行した.病理診断で胃大弯リンパ節,大網内リンパ節に転移を認めた.いずれの症例も術後補助療法を行い,前者は術後12年,後者は術後10年6ヵ月,再発を認めていない.右側結腸癌で大網を介して胃大弯リンパ節への転移を認めた場合,R0手術を行うことで予後の改善に寄与する可能性があると考えられた.
  • 向井 俊貴, 福長 洋介, 大野 吏輝, 友利 賢太, 池田 篤志, 永田 淳, 長嵜 寿矢, 秋吉 高志, 小西 毅, 藤本 佳也, 長山 ...
    2014 年 67 巻 3 号 p. 178-182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡・内視鏡合同手術(Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery;LECS)は,腹腔鏡と内視鏡を併用し,粘膜下腫瘍の過不足ない切除を行う手技である.われわれは横行結腸粘膜下腫瘍に対して細径鉗子を用いたLECSにて横行結腸楔状切除を施行した.症例は63歳男性.下部消化管内視鏡検査で横行結腸に28mmの粘膜下腫瘍を認め,Gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)が疑われ,腹腔鏡下手術の方針となった.手術は臍12mm,右下5mm,右上・左上下3mmの5ポート法で施行した.腹腔鏡下に大網および横行結腸間膜の直動脈を最低限処理し,腫瘍漿膜面を露出した.内視鏡下に粘膜下層までを切開し,腸壁の一部を意図的に穿孔させた.腹腔鏡下に超音波凝固切開装置を穿孔部に挿入し,粘膜下層切開に沿って全層切開し,内視鏡下に腫瘍を回収した.腸壁欠損部は自動縫合器で閉鎖した.術後経過良好で5日目に退院,神経鞘腫と病理診断された.LECSは小開腹を必要とせず経肛門的に腫瘍の摘出が可能で,低侵襲で整容性の優れた術式と考えられた.
  • 大山 莉奈, 松信 哲朗, 鈴木 英之, 吉野 雅則, 三浦 克洋, 豊田 哲鎬, 中田 亮輔, 村木 輝, 清水 貴夫, 山際 亮, 渡辺 ...
    2014 年 67 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは肛門部に発生する頻度は稀とされる肛門部Bowen癌の1例を経験したので報告する.症例は57歳女性.肛門部の皮疹を訴え当院受診.肛門周囲皮膚に辺縁が明瞭な乳頭状隆起の集簇病変を認めた.生検では腫瘍細胞は表皮内に限局していたため,Bowen病の術前診断にて腫瘍局所切除術,有茎皮弁形成術,植皮術および人工肛門造設術を施行.病理組織学的診断では一部に基底層を越えた癌細胞の浸潤を認め,最終診断はBowen癌であった.Bowen病の術前深達度診断は難しく,局所切除の際にはBowen癌の可能性も考え,切除断端陰性を確保できるように切除範囲を設定すべきであると考えられた.また肛門部は人工肛門を造設しても術後創部感染をきたしやすいことから皮膚欠損部の修復には可能な限り有茎皮弁を用いるべきであると考えられた.
  • 呉 一眞, 丹羽 浩一郎, 杉本 起一, 神山 博彦, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博, 福村 由紀, 八尾 隆史
    2014 年 67 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    大腸癌の転移で孤立性脾転移はまれであり,同時性に孤立性脾転移を認めた上行結腸癌の症例を経験したので報告する.
    症例は80歳,男性.腸閉塞および右上腹部腫瘤の精査加療目的で紹介受診となった.大腸内視鏡検査で上行結腸に全周性の3型腫瘍を認め,生検で中分化腺癌と診断された.腹部CT検査では脾臓に55mm大の不均一に造影される腫瘍を認め,超音波検査でも同様に脾臓に内部不均一な腫瘍を認めた.以上より,上行結腸癌,脾腫瘍の診断で2010年7月に結腸右半切除術(D3郭清)・脾臓摘出術を施行した.上行結腸癌の病理組織検査は中分化腺癌が主体で脾腫瘍も同様の組織型であり,結腸癌の脾転移と診断された.術後経過は良好で,術後36ヵ月経過した現在も再発なく外来通院中である.
  • 長谷川 芙美, 佐々木 純一, 辻仲 眞康, 堀江 久永, 力山 敏樹
    2014 年 67 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    S状結腸軸捻転症に対して,内視鏡的整復後に経肛門イレウス管を留置し,待機的に安全に腹腔鏡下手術を施行し得た2症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例1:83歳,男性.腹痛を主訴に受診.S状結腸軸捻転症と診断し,内視鏡的整復を行った.整復2日後に再発したため,内視鏡的整復を行い,経肛門イレウス管を留置し,6日後に腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.術後経過に問題なく退院した.症例2:89歳,女性.S状結腸軸捻転症の診断で内視鏡的整復を行ったが,整復3日後に再発したため内視鏡的整復後経肛門イレウス管を留置した.4日後に腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行し,術後経過に問題なく退院した.大腸軸捻転症の手術待機期間中に経肛門イレウス管を留置することは,腸管減圧による浮腫軽減と共に捻転再発が防止でき,十分な術前評価の後に安全に腹腔鏡下手術を行う上で有用と考えられた.
feedback
Top