日本大腸肛門病学会雑誌
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67 巻, 4 号
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原著
  • 太田 智之, 角田 明良, 喜安 佳之, 本城 弘貴, 加納 宣康
    2014 年 67 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    (目的)Laparoscopic Ventral Rectopexy(以下LVR)が近年注目され,治療成績が多施設より報告されている.当院において直腸脱に対しLVRを導入し安全性,治療成績について評価した.(対象と方法)直腸脱と診断された患者26名に対しLVRを施行した.手術時間,出血量,術後入院期間,術後合併症,再発率,Fecal Incontinece Severity Index(以下FISI),Constipation Scoring System(以下CSS)について前向きに調査した.(成績)手術時間215±68.5(121-430)分,出血量20.2±31.4(0-150)ml,術後入院期間3.1±2.1(1-8)日で,重篤な術後合併症は認めず.再発率は3.8%であった.FISI,CSSは有意に改善した.(結論)LVRは重篤な合併症を認めず,治療成績は良好であった.
  • 田島 雄介, 田中 荘一, 相川 佳子, 長嶋 康雄, 松田 聡, 尾田 典隆, 野中 雅彦, 木村 浩三, 中井 勝彦, 川上 和彦, 松 ...
    2014 年 67 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    肛門管超音波検査は低侵襲,簡便という利点を有するが,所見の再現性が議論されることもある.肛門管超音波検査による肛門括約筋所見の再現性と有用性を明らかにする目的で,肛門管超音波所見をレトロスペクティブに再評価し,所見の有無で肛門内圧に差がないか検討した.対象は肛門管超音波と肛門内圧検査を施行された女性患者33例.4人の技師が超音波画像を再評価し,肛門括約筋の同定,途絶有無,厚不整有無を再現性という観点から評価した.内肛門括約筋の同定率は100%で,途絶所見の再現率は76%,厚不整所見の再現率は61%であった.一方外肛門括約筋の同定率は61%であり,途絶所見の再現率は42%でいずれも途絶なしの所見であった.再現性が得られた内肛門括約筋の途絶ありは,なしと比べ肛門管最大静止圧(MRP),肛門管随意収縮圧(MSP)は有意に低下していた(P=0.04と<0.01).また厚不整ありは,なしと比べMRPが有意に低下していた(P=0.03).肛門管超音波検査による内肛門括約筋所見は括約筋機能不全を予知しえる所見と推測された.
臨床研究
  • 福島 恒男, 中島 光一, 辺見 英之, 野沢 博, 高橋 敬二, 白倉 立也, 矢原 青, 西野 晴夫, 松島 誠
    2014 年 67 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:炎症性腸疾患患者でmesalazine不耐症に対して脱感作療法を行い,mesalazineの服用が可能になることを試みた.方法:28例のmesalazine不耐症症例に対して脱感作療法を行った.脱感作はmesalazineを粉砕し,1mg/dayから増量していくHoldsworth1)の方法で行った.結果:脱感作療法を行った28例中,2例が脱落し,26例で評価した。成功は22例【84.6%】,不成功は4例【15.4%】であった。成功例のうちの17例【77.3%】はその後mesalazine のみで寛解を維持しており,他の治療が必要であったのは5例であった.結語:脱感作療法はmesalazine不耐症症例に対して有用な治療法であった.
症例報告
  • 松田 博光, 壬生 隆一, 豊永 敬之, 園田 幸生, 清永 英利, 冨永 洋平, 平田 敬治
    2014 年 67 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代の男性で,前医にて未分化大細胞リンパ腫(ALCL:Ann Arbor分類IV期,B症状あり,PS4,AIDS発症)と診断され,化学療法と多剤併用療法(highly active anti-retroviral therapy)を受けていた.化学療法中の血球減少時に肛門周囲膿瘍・痔廔を発症したため,治療目的にて当院へ紹介された.初診時,肛門周囲7時方向に皮下膿瘍を触れ,肛門管内には見張り疣を伴う裂肛を認めた.裂肛から鉗子を挿入すると,膿瘍腔への交通が認められたため,裂肛から発生した皮下痔廔と診断した.手術は痔廔の廔孔を切開開放して,廔孔壁を一部切除し,切除縁を括約筋に縫合固定してドレナージ創を作製した.術中に切除した肛門病変の病理組織標本では炎症性細胞の浸潤と腫瘍細胞がみられ,免疫染色にてALCLと診断された.肛門病変の原因として,AIDS患者に特異な裂肛から痔廔を発生した,もしくは肛門周囲へ浸潤した悪性リンパ腫病変の自壊により痔廔を発生したことが考えられた.
  • 飯田 直子, 羽田 丈紀, 衛藤 謙, 満山 喜宣, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    2014 年 67 巻 4 号 p. 268-272
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性.2010年5月下旬,検診で便潜血反応陽性を指摘され近医を受診.軽度の貧血,排便時下血も認めていたため下部消化管内視鏡検査を施行.歯状線直上に桑実様隆起性病変を認め,精査加療目的で当科紹介受診となった.直腸指診では3時に弾性軟な隆起性病変を触知した.また,十数年来“いきみ”の習慣と,数年来の排便時の脱肛認めていたことから直腸粘膜脱症候群(Mucosal Prolapse Syndrome)と診断し,痔核に対する結紮切除術に準じた手術を施行.病理組織学的検査では,線維筋症(fibromuscular obliteration)を認め,MPSに矛盾しない所見であった.しかし,11mm大の結節状隆起を呈する部分では高度異型腺腫の一部に高分化型腺癌(深達度m,ly0,v0)を認め,0-I型m癌合併直腸粘膜脱症候群と診断した.現在術後3年経過したが,MPS,癌の再発を認めていない.
  • 久田 将之, 松土 尊映, 榎本 正統, 石崎 哲央, 高木 融, 勝又 健次, 土田 明彦
    2014 年 67 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれはnatural orifice specimen extraction(以下NOSE)を応用した,病変摘出の際小開腹創を必要としない,経肛門的腫瘍摘出transanal specimen extraction(以下TASE)による腹腔鏡下前方切除術を行った1症例を経験した.
    手術の実際:腫瘍肛門側を閉鎖後,直腸を離断し開放した.切除腸管をナイロンバックにて被覆し経肛門的に腫瘍を摘出した.アンビルヘッドを装着し腹腔内に還納した.鏡視下にて直腸断端をpurse-string sutureし自動吻合器にてsingle staple technicにて吻合した.
    結果:出血量は120ml,手術時間は4時間23分であった.術後鎮痛剤は2日間で3回必要であった.
    結語:TASEによる腹腔鏡下前方切除術は小開腹がなく整容性に優れ術後疼痛も軽減でき新しい低侵襲手術として容認性があると考えられた.
  • 伊藤 太祐, 稲次 直樹, 吉川 周作, 増田 勉, 榎本 泰三, 内田 秀樹, 久下 博之, 大野 隆, 横谷 倫世, 山岡 健太郎, 下 ...
    2014 年 67 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    遺残尿道瘻より癌が発生したと思われるクローン病症例を経験したので報告する.患者は30歳代男性.12歳時に発症した多発性難治性複雑痔瘻を併発した大腸クローン病症例で19歳時に回盲部十二指腸瘻を形成,結腸全摘・十二指腸瘻孔部縫合閉鎖・回腸直腸吻合術施行.術後クローン病再発による回腸直腸吻合部・回腸・直腸・肛門周囲に多発性瘻孔を形成,再手術で直腸切断術・永久回腸ストーマ造設術施行.術後尿道瘻が遺残,直腸切断術後3年目(発症24年目)に同部に癌の発生をみた.前方骨盤内臓全摘術を施行,切除標本の病理組織学的診断で消化管由来の粘液産生性腺癌と診断.吻合部のクローン病再発で形成された多発性瘻孔切除後に遺残した尿道瘻から発生したクローン病の癌化例と診断.術後2年目に局所再発・膿瘍形成で再切除施行も根治的切除は出来ず骨盤内感染による敗血症にて永眠.本症例の臨床経過と伴にクローン病の癌化について文献的に考察した.
  • 照屋 剛, 仲地 厚
    2014 年 67 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    FOLFOX療法は切除不能再発大腸癌における標準治療の一つである.一方でFOLFOX療法による副作用として,2.6%の頻度で高アンモニア血症を認めた報告がある.今回,再発大腸癌において,mFOLFOX6療法実施中に意識障害を伴う高アンモニア血症を呈した症例を経験したので報告する.症例は71歳・男性で,S状結腸癌術後の肝転移(S8)および肝門部周囲リンパ節再発に対してmFOLFOX6療法を開始した.2クール施行中に意識障害(JCS:III-100)を認め,血液検査で高アンモニア血症を認めた.分岐鎖アミノ酸投与にて,翌日には症状および血中アンモニア値も改善した.mFOLFOX6療法施行時に意識障害を認めた場合は,副作用としての高アンモニア血症に留意した適切な検査と治療が必要と思われた.
  • 水津 優, 船橋 公彦, 小池 淳一, 栗原 聰元, 塩川 洋之, 牛込 充則, 金子 奉暁, 新井 賢一郎, 金子 弘真, 根本 哲生
    2014 年 67 巻 4 号 p. 291-295
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は,68歳の男性.胸腺腫と肺扁平上皮癌の既往があり,経過中にCEA高値(6.2ng/ml)と,便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査を施行した.上行結腸に約1cm大の隆起性病変を認め,生検で中分化型腺癌と診断した.この時,胸部CT検査で左肺S3に微小結節を認めたが,転移の確定診断は得られなかった.cT1N0M0の早期癌に対し,腹腔鏡下に根治術を施行した(A,type 0-Is+IIc,15×10mm,tub2,SM,ly0,v1,N0).術後13ヵ月後にCEAの再上昇(7.5ng/ml)を認め,CT検査では術前に認められていた肺野結節影に増大を認め,肺転移の疑いで胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.肺腫瘍は原発巣と同様の組織像であり,免疫染色ではいずれもCEA(+),CDX-2(+),TTF-1(-),CK7/20(+/+)で,大腸癌の肺転移と診断した.今回,CEA高値を契機にSM癌では稀な肺転移を経験し,文献的考察を行った.
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