日本大腸肛門病学会雑誌
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68 巻 , 10 号
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主題I:家族性大腸腺腫症の診療 ─up to date─
  • 田村 和朗, 松原 長秀, 冨田 尚裕
    2015 年 68 巻 10 号 p. 871-877
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症(FAP)は遺伝的要因を基に大腸など消化管に腺腫性ポリープが多発する疾患である.Classical FAPの原因遺伝子はWntシグナル伝達系を負に制御するAPCタンパクをコードするAPC遺伝子である.もう1つの原因遺伝子は8-oxo-グアニンがアデニンと対合した場合,アデニンを除去する塩基除去修復機構にかかわるα-glycosylaseをコードするMUTYH遺伝子である.MUTYH遺伝子の両アレル変異で腺腫性ポリープが多発し,MUTYH関連ポリポーシス(MAP)と呼ばれている.さらに2種類のDNAポリメラーゼをコードする遺伝子の異常も多発性大腸腺腫症を生じることが明らかとなりポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(PPAP)と呼ばれている.これらの知見を基に遺伝学的検査が可能になりつつあり,より一層適切な診療につながると考えられる.
  • 山口 達郎, 上野 秀樹, 小泉 浩一, 石田 秀行, 岩間 毅夫
    2015 年 68 巻 10 号 p. 878-882
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    まれな疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)の特徴を明らかにするためには,全国登録や多施設共同研究が必要である.本邦におけるFAPの最初の全国調査は1961年に開始され,1972年の第2回調査へと続いた.1976年からはFAPの登録事業が始まり,FAPに関する重要な疫学的・腫瘍学的知見が数多く得られた.それらは2012年に刊行された『遺伝性大腸癌診療ガイドライン』の基礎資料となっているが,海外からの引用文献が多く,本邦からの文献も2000年以前に集積された解析報告が多く,現状に即していない可能性がある.現在,大腸癌研究会の家族性大腸癌委員会内に組織されたFAPワーキンググループによる『FAPの多施設後方視的コホート研究』は,FAPの基礎データの集積と,我が国の診療実態の把握を行っている.また,次世代シークエンサーを用いた家族性腫瘍の遺伝子診断技術の確立と,新規原因遺伝子の探索が行われている.
  • 石川 秀樹
    2015 年 68 巻 10 号 p. 883-889
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症の大腸癌発生を予防する方法は,外科的大腸全摘術のみであった.その大腸切除を避ける,または手術時期を遅らせるために,薬を用いて大腸ポリープの増大を抑制する化学予防や,内視鏡的にポリープを摘除する治療が研究されている.
    本稿では,家族性大腸腺腫症に対する大腸癌予防のための化学予防として非ステロイド系抗炎症剤のスリンダクやセレコキシブ,アスピリンなどを用いた臨床試験の成績を紹介するとともに,私たちが実施している大腸内視鏡による大腸ポリープ徹底的摘除の研究状況を紹介する.
    化学予防薬や内視鏡的ポリープ切除は,まだ,家族性大腸腺腫症に対して臨床応用できるところには至っていないが,近い将来,一部の家族性大腸腺腫症に対しては,実用化できることが期待される.
  • 塚本 潔, 松原 長秀, 野田 雅史, 山野 智基, 吉村 美衣, 濱中 美千子, 馬場谷 彰仁, 田村 和朗, 冨田 尚裕
    2015 年 68 巻 10 号 p. 890-899
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis:FAP)において最も配慮すべき病態は大腸癌の合併であり,大腸癌発生の予防的観点から大腸(亜)全摘術が標準的な外科治療として位置づけられている.現在,大腸(亜)全摘術はその術式においていくつかの選択肢があり,それぞれの特性を考慮しつつ症例の病態により選択されている.また近年,大腸外科手術の領域において腹腔鏡手術の発展は目覚ましく,FAPに対する大腸(亜)全摘術においても腹腔鏡手術が適応される場合も増えてきている.予防的大腸切除の第一の目的である癌発生を予防するという根治性の確保,術後排便機能を含めた安全性,整容性・医療経済などの社会的観点,これらすべてを考慮したうえで各症例に最適な術式を選択することが重要であると思われる.
  • 田近 正洋, 田中 努, 石原 誠, 水野 伸匡, 原 和生, 肱岡 範, 今岡 大, 小森 康司, 木村 賢哉, 木下 敬史, 山雄 健次 ...
    2015 年 68 巻 10 号 p. 900-907
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘術後に造設された回腸嚢における腺腫や癌の発生について解説する.
    【方法】FAP術後の回腸嚢に発生した腺腫あるいは癌に関する36論文をreviewし,その発生頻度,特徴,サーベイランスの方法について自験例も含めて検討した.
    【結果】回腸嚢における腺腫発生頻度は6.7%~73.9%で,回腸嚢造設から5年,10年,15年で,それぞれ7~16%,35~42%,75%と経時的に増加していた.癌の発生は22例の報告があり,発生までに術後中央値で10年(3~23.6年)を要していた.サーベイランスに関しては,術後6~12ヵ月ごとに内視鏡を行っている報告が多く,適切なサーベイランスを行う上では,最適な腸管洗浄とインジゴカルミンの使用が重要である.
    【結論】FAP術後の回腸嚢には,高率に腺腫,ときに癌が発生するため,術後早期からの定期的な内視鏡サーベイランスが重要である.
  • 石田 秀行, 渡辺 雄一郎, 近 範泰, 田島 雄介, 鈴木 興秀, 松澤 岳晃, 福地 稔, 熊谷 洋一, 石橋 敬一郎, 持木 彫人, ...
    2015 年 68 巻 10 号 p. 908-920
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺腫症に合併する胃底腺ポリポーシスや胃腺腫はmalignant potentialが低く,予防的胃切除の対象とならないが,東アジアでは一般集団に比べ胃癌のリスクが高いことに注意する.十二指腸癌(乳頭癌を含む)は予防的大腸切除後の死因の第1位を占めるため,前癌病変への対応が重要である.
    Spigelman分類stage IVの十二指腸ポリポーシスでは癌化のリスクが高まるため,綿密な内視鏡的サーベイランス,あるいは膵温存十二指腸切除術などの外科治療を考慮する.乳頭部の腺腫には内視鏡的あるいは外科的局所切除術が選択肢となる.デスモイド腫瘍は大腸切除後に発生することが多い.腹壁に発生した場合には切除が推奨される.腹腔内デスモイド腫瘍の治療方針の決定にはChurchの病期分類を参考にし,病期IIIないしIVではダカルバジン・ドキソルビシンなどを用いた化学療法が有効な選択肢となる.
主題II:国際標準に準拠した便失禁の診断と治療
  • 高尾 良彦
    2015 年 68 巻 10 号 p. 921-927
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁の診療は,患者の年齢や活動性,患者を取り巻く社会環境などが関係するため,その症状の原因となる病態を的確に把握して,個々の患者に適した保存的治療や外科的治療を選択して複合的に治療するという国際的な共通認識がある.すでに欧米では,これまでの診断や治療効果を集約し,便失禁の標準的な治療の選択基準が診療指針として提示されている.本邦においても,最近では症状の原因となる病態を評価して治療する考え方が徐々に普及してきた.しかし残念ながら,いまだ一般的には欧米のように系統立った診断に基づいて治療する状況までには至っていない.この社会的背景や医療環境を改善するためにも,共通の基礎概念のもとで診断や治療を行うための診療基準を構築することが急務となっている.そこで本邦における便失禁診療の標準化を目指して,国際的な共通認識を再確認して,その基準に準拠した診療指針の基盤を整備するために本特集を企画した.
  • 味村 俊樹
    2015 年 68 巻 10 号 p. 928-939
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁の適切な診断・治療には,ガイドラインなどによる診療の標準化が重要で,それは国際標準に準拠した高い信頼性が求められる.国際失禁会議(International Consultation on Incontinence,ICI)は,尿・便失禁に関する国際的なコンセンサスミーティングで,1998年以来3~4年に1度開催されている.
    本邦独自の便失禁診療ガイドライン作成に際して,ICIのガイドラインを参考にするのは有意義であり,本稿では2012年にパリで開催された第5回ICIによる最新の便失禁診療ガイドラインを紹介する.
    しかし前回会議から既に3年が経過し,新たなエビデンスによって推奨度を変更すべき検査や治療法もある.最近,米国結腸直腸外科学会(ASCRS)が最新のエビデンスに基づいた便失禁に対する診療ガイドラインを発表したので,ICIによる推奨度に加えてASCRSによる推奨度も併記する.
  • 高橋 知子, 角田 明良
    2015 年 68 巻 10 号 p. 940-945
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁の検査には,肛門内圧検査,直腸感覚検査,直腸コンプライアンス,神経生理学的検査,超音波検査,Magnetic Resonance Imaging:MRI,排便造影検査がある.肛門内圧検査は肛門括約筋機能を評価する検査であるが,カテーテルの種類や年齢,性別などで測定値が異なるため条件を考慮する必要がある.
    直腸感覚検査の異常は切迫性便失禁との関係があるとされている.超音波検査での評価は経肛門,経膣,経会陰の方法がある.経肛門超音波は肛門括約筋の損傷や瘢痕などの検出に,経膣では恥骨直腸筋など骨盤底構造描出に,経会陰では恥骨直腸筋収縮や骨盤臓器脱の観察に有用である.
    MRIは肛門括約筋萎縮など組織学的変化の検出に優れている.
    直腸重積症は便失禁の原因の1つで手術で改善の見込める病態であり排便造影検査で描出できる.表面筋電図は,バイオフィードバックに利用される.
  • 高野 正太, 荒木 靖三, 辻 順行, 山田 一隆
    2015 年 68 巻 10 号 p. 946-953
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁の治療はまず保存的治療が行われるべきであり,そのひとつの薬物療法は専門病院でなくても行える治療として第1選択のうちのひとつに挙げられる.欧米のガイドラインやレビューでは薬物療法を下痢(軟便)に対する内服薬,肛門括約筋力に作用する薬剤,便秘症に由来する失禁に対する薬剤の3つのカテゴリーに分類している.その中で推奨度が高いのは下痢に対する薬剤であるが,その中でも各ガイドラインが共通して推奨しているのはロペラミドのみで,低用量からの投与が勧められている.一方本邦からはポリカルボフィルカルシウム(CP)の効果が報告されており,便失禁への応用が期待されるが,比較試験が少なく国際的にはあまり認知されていない.CP単独での効果の検証を本邦にてRCTで行うべきと考える.
  • 野明 俊裕, 荒木 靖三, 的野 敬子, 牛島 正貴, 小篠 洋之, 入江 朋子, 家守 雅大, 高野 正博
    2015 年 68 巻 10 号 p. 954-960
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁は,4歳以上の個人が便の排出を制御できない状態が3ヵ月以上にわたり繰り返すことと定義され,成人の便失禁の有病率は2.2%と報告されている.肛門括約筋は,不随意筋である内肛門括約筋と,随意筋である外肛門括約筋,骨盤底筋群で構成され,内肛門括約筋の機能不全では,安静時の肛門管の緊張低下や静止圧の低下をきたす.外肛門括約筋や骨盤底筋群の機能不全では随意収縮圧が低下するが,バイオフィードバック療法により改善するといわれている.便失禁に対するバイオフィードバック療法は有用であるとする報告は多いが,単独での効果は疑問視されている.しかし,骨盤底筋体操にバイオフィードバック療法を加えることで治療効果が高まると報告されており便失禁治療においては重要なアイテムの1つである.今回の論文ではバイオフィードバック療法の文献的考察を行い,当院で行っているバイオフィードバック療法の実際を概説する.
  • 山名 哲郎
    2015 年 68 巻 10 号 p. 961-969
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    肛門括約筋形成術は便失禁を主訴とする外傷性肛門括約筋不全に対する外科的治療の1つとして行われる術式である.外傷性肛門括約筋不全の原因としては経膣分娩時の3度以上の会陰裂傷である分娩外傷が最も多いが,肛門手術(痔瘻,裂肛)や臀部外傷などが原因となることもある.これらの原因の中では分娩外傷による外傷性肛門括約筋不全が肛門括約筋形成術の最も良い適応である.術前検査としては肛門括約筋の欠損部を評価するために肛門管超音波検査を施行する.術式は外肛門括約筋の損傷部位である瘢痕部を剥離し,中央で離断した後に両端を重ね合わせて縫合するオーバーラッピング法が有用である.著者はさらに会陰小体を再建するようにしている.術後はWexnerスコアで50%以上の便失禁症状の改善が得られ,肛門内圧検査では最大随意収縮圧の有意な上昇が認められる.手術後の改善効果は長期的な経過によって低下してくる可能性が指摘されている.
  • 吉岡 和彦, 中谷 和義, 徳原 克治, 權 雅憲
    2015 年 68 巻 10 号 p. 970-977
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    便失禁は患者にとって肉体的,精神的に苦痛であり,羞恥心のため自分の症状を家族にも告げられないこともある.治療の選択肢の1つとして近年欧米を中心に仙骨神経刺激療法が行われるようになってきた.本邦においても平成26年4月よりこの治療法が保険適用となった.この治療の特徴は一時的な体外の刺激装置を用いて刺激効果の有無を判定できることと,従来行われてきた外科的治療に比べれば低侵襲といえることである.手術は2期的に行われる.第1期の手術ではリードを植え込み,体外式の刺激装置を使用して効果を判定する.症状が改善すれば第2期の手術で永久的な刺激装置を腰背部の皮下に植え込む.海外での報告ではこの治療法の成績は良好である.本邦でも既に治験を経てその効果と安全性が確認されたが,今後はデータの蓄積によりその長期成績を検討する必要がある.既に世界標準といえる仙骨神経刺激療法が本邦でも標準術式となる可能性がある.
  • 二川 康郎, 矢永 勝彦
    2015 年 68 巻 10 号 p. 978-979
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
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