日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
68 巻 , 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
臨床研究
  • 田中 寿江, 竹政 伊知朗, 三代 雅明, 植村 守, 西村 潤一, 畑 泰司, 水島 恒和, 山本 浩文, 土岐 祐一郎, 森 正樹
    2015 年 68 巻 5 号 p. 287-292
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    直腸癌手術での一時的回腸ストーマは,通常右下腹部に造設される.一方,単孔式手術の開発による臍部アプローチが整容性の面で注目されている.これを応用した臍部への回腸ストーマ造設は整容性の向上が期待できる反面,ストーマケアが難しいことが想定される.そこで臍部ストーマを造設した16名を対象としてその妥当性について検討した.周囲皮膚炎はDETscoreおよびABCD-stoma®を用いて評価した.全例で装具の貼付に問題はなく,ストーマ閉鎖手術までにケアの変更を要しなかった.周囲皮膚炎はケアの工夫でコントロールが可能な範囲内のものであり,他のストーマ合併症は認めなかった.周囲皮膚炎評価スコアがセルフケア自立時より閉鎖手術前の方が低下していたことからセルフケアの促進を阻害するものではないことが示唆された.臍部ストーマは整容性に優れ,一時的回腸ストーマ造設の一選択肢となり得ると考えられた.
  • 荒木 吉朗, 加川 隆三郎
    2015 年 68 巻 5 号 p. 293-298
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    当院で過去5年間に経験した坐骨直腸窩痔瘻119例について,括約筋間前方進行型坐骨直腸窩痔瘻15例と後方穿破型坐骨直腸窩痔瘻104例に分類して,MRI所見や手術所見に基づいて比較検討した.後方穿破型104例中,他院での再手術症例は22例,再手術症例の割合は21.2%に対して,筋間前方進行型15例中,再手術症例は8例,再手術症例の割合は53.3%で,筋間前方進行型は有意に再手術症例が多かった.119例全例にMRI navigating seton手術を施行した.筋間前方進行型15例中14例は治癒した.筋間前方進行型の坐骨直腸窩痔瘻は再手術症例の割合が高いが,術前のMRI所見に基づいた手術を施行することで,より再発の少ない治療が期待できる.
  • 賀川 義規, 向坂 英樹, 渡邉 光子, 立原 敦美, 弘岡 貴子, 加納 徳美, 小山 拓弥, 下川 福子, 加藤 健志
    2015 年 68 巻 5 号 p. 299-305
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    化学療法に使用する薬剤は尿や便から排泄される.ストーマ保有者は,排泄経路の変更に伴い手指で排泄物に接触する頻度が増加する.大腸癌化学療法中の排泄管理やストーマ装具交換の指導についてはこれまでほとんど報告がない.われわれは2013年4月から2014年9月までの期間で,ストーマ保有者で化学療法中の大腸癌患者17名(一時的ストーマ8名,永久ストーマ9名)にアンケート調査を行い,排泄管理・ストーマ管理の現状把握を行った.永久ストーマの中には,膀胱癌手術による回腸導管保有者を2人含んでいた.アンケートに答えた患者は,化学療法薬剤の排泄に関する知識はほとんどなく,化学療法中であっても特別な管理を行っていなかった.また,ストーマ管理に家族が17名中7名(41.2%)にかかわっていた.化学療法で使用する薬剤の不必要な曝露は可能な限り回避すべきであり,今後患者と家族に対する指導がより重要であると考える.
症例報告
  • 生澤 史江, 舟山 裕士, 高橋 賢一, 羽根田 祥, 小島 康弘
    2015 年 68 巻 5 号 p. 306-311
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.血便を主訴に近医を受診し,潰瘍性大腸炎の疑いで入院となった.ステロイド治療を開始したが,改善せず,精査加療目的に当院へ転院となった.転院後,左側大腸炎,中等症の潰瘍性大腸炎の診断にて,ステロイドパルス療法を施行したが,治療抵抗性で,画像診断で口側進展が認められたことから,前医入院から20日後に手術となった.初回手術は用手補助腹腔鏡下に大腸亜全摘を施行し,術後第28病日に退院となった.6ヵ月後に残存直腸切除術を施行し,術後合併症なく退院し,外来にて経過観察中である.医学中央雑誌にて,「高齢者」「潰瘍性大腸炎」で検索したところ,報告されている手術例の中で,本症例が最高齢であった.高齢者潰瘍性大腸炎では,重症化した場合,全身感染症,心肺合併症併発による生命予後が不良であるため,内科治療にて改善がみられない場合,早期に手術を決断する必要があると考えられた.
  • 根岸 宏行, 四万村 司, 吉田 有徳, 大島 隆一, 國場 幸均, 相田 芳夫, 大坪 毅人
    2015 年 68 巻 5 号 p. 312-317
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性.腹部超音波検査で虫垂の嚢胞性腫瘤を指摘され当院紹介となった.腹部造影CT検査で最大径21mm大に腫大した虫垂を認め,虫垂粘液嚢腫と術前診断した.悪性の可能性も否定できないことから,腹腔鏡下回盲部切除術+D2郭清を施行した.術後病理組織検査では虫垂粘膜の一部に軽度の核異型を伴い,低乳頭状増生,核の重積性を示しており,低異型度虫垂粘液性腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下LAMN)と診断した.大腸癌取扱い規約第8版によると,虫垂腫瘍のうちLAMNは旧規約上の粘液嚢胞腺腫の大部分と粘液嚢胞腺癌の一部に該当し,今回新たに分類された.虫垂粘液嚢胞腺癌に対してはリンパ節郭清を伴う回盲部切除術以上の術式が必要であるが,粘液嚢胞腺腫に対しては虫垂切除術または盲腸部分切除術で十分という報告もある.LAMNの治療に関して現在明確な基準は存在しない.今後の症例の蓄積による検討が必要であり,国際的な診断基準・ガイドラインの構築が望まれる.
  • 堀尾 勇規, 別府 直仁, 覚野 綾子, 友松 宗史, 小野 朋二郎, 吉江 秀範, 木村 文彦, 相原 司, 柳 秀憲
    2015 年 68 巻 5 号 p. 318-323
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は,70歳代の男性.S状結腸癌と,右-中-左肝静脈に接する最大系6cm5個からなる八つ頭状の切除不能同時性多発肝転移を認めた.肝転移が予後規定因子であると判断し,横行結腸人工肛門造設後,分子標的薬(抗EGFR抗体)を併用した全身化学療法を先行させた.原発巣は著名に縮小,肝転移においては,右肝静脈と腫瘍との距離が確保された.その後,中-左肝静脈に浸潤する可能性が高く,liver first approachで肝切除を行い,根治手術を施行可能であった.さらに,原発巣切除,人工肛門閉鎖を行い,原発巣切除術後より1年半無再発生存中である.
  • 木下 満, 片岡 政人, 稲岡 健一, 中山 裕史, 近藤 建
    2015 年 68 巻 5 号 p. 324-327
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.下腹部痛および便秘を主訴に前医受診し腹部CT検査にて仙骨前部に径90mmの腫瘤を認め精査目的で当科受診した.直腸診にて直腸背側に表面平滑な腫瘤を認め,腹部MRI検査にてT1,T2強調像ともに高信号を呈する球形の腫瘤を認めた.仙骨前部嚢胞の診断で経仙骨式嚢胞摘出術を施行した.摘出標本は薄い被膜を有する隔壁のない嚢胞であり毛髪や皮脂成分を伴っていた.病理組織学的には嚢胞壁は角化型扁平上皮で覆われ壁内には毛包,皮脂腺を認めdermoid cystと診断された.成人,特に60歳以上で発生するdermoid cystは稀であり報告する.
  • 近藤 崇之, 岡林 剛史, 長谷川 博俊, 鶴田 雅士, 松井 信平, 島田 岳洋, 松田 睦史, 矢作 雅史, 吉川 祐輔, 北川 雄光
    2015 年 68 巻 5 号 p. 328-331
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は単発に出現することが多く,多発することは非常に稀である.今回われわれは,超音波内視鏡検査にて診断し,経過観察を選択した多発大腸脂肪腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は54歳女性.主訴は便潜血反応陽性.他院で施行した大腸内視鏡にて,上行結腸から横行結腸肝彎曲部に多発粘膜下腫瘍を認め,精査加療目的で当院紹介受診となった.当院で腹部CT検査を施行したところ,上行結腸にlow densityな粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査ではacoustic shadowを伴い,粘膜下第3層にlow densityのエコー域を認めた.以上の所見より,上行結腸の多発脂肪腫と診断した.腸閉塞や腸重積などの随伴症状はなく,悪性を疑う所見も認めなかったため現在外来経過観察を行っている.
feedback
Top