日本大腸肛門病学会雑誌
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68 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
臨床研究
  • 内田 正昭, 山本 佳生, 佐藤 崇
    2015 年 68 巻 8 号 p. 523-529
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    [目的]内痔核に対するALTA療法は投与症例の適応を定めているが根拠となる報告は少ない.これら適応を再評価し今後の位置付けを考察した.
    [対象と方法]3年間で単独ALTA療法を希望した227例を対象とし前向きに全例に施行した.皮垂71例,ポリープ20例,肛門管内外痔核の膨隆144例,巨大痔核40例があり,これらの有無別有害事象,再発率を比較検討した.
    [結果]有害事象は63例に認めたがすべて軽度で保存的に軽快した.4因子の有無で発生率に差はなかった.累積無再発率は皮垂,ポリープ,巨大痔核の有無で差はなかった.しかし管内外痔核膨隆例の再発期間中央値は410日で非膨隆例の935日と比べ再発率が高く(p=0.03),また膨隆痔核数が増えるほど再発しやすかった.
    [結論]肛門管内外痔核の膨隆は再脱出の有意な因子であり根治的には単独ALTA療法の限界と思われた.これらの治療戦略は今後の課題となる.
症例報告
  • 高野 正太, 辻 順行, 山田 一隆
    2015 年 68 巻 8 号 p. 530-533
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.肛門痛,会陰痛を主訴に受診し肛門診,肛門指診,肛門鏡診および経肛門超音波検査にて異常所見を認めず機能性直腸肛門痛と診断された.ロキソプロフェンナトリウム錠,ジクロフェナクナトリウム坐剤,トリベノシド・リドカイン軟膏による保存療法を施行し疼痛は落ち着いていたが,1年後に疼痛増悪した.両側脛骨神経刺激療法を開始し週2回,計12回施行した.Visual analog scale for painは治療前8.3から治療後0へ減少,1ヵ月間で疼痛を感じた日数は治療前30日から0日へ減少し,また会陰痛も消失した.脛骨神経刺激療法は簡便に施行でき侵襲も少なく,機能性直腸肛門痛の治療の選択肢のひとつと考える.
  • 寺西 宣央, 吉谷 新一郎, 白 京訓
    2015 年 68 巻 8 号 p. 534-537
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    再発大腸癌に対するFOLFIRI+Bevacizumab療法により高アンモニア血症をきたした症例を経験したので報告する.症例は50歳,男性.直腸癌に対し,骨盤内臓全摘術を施行.術後3年目に骨盤内局所再発をきたしたため,FOLFIRI+Bevacizumab療法を開始とした.治療開始3日目に意識障害が出現した.頭部CTでは異常所見は認められず,血液検査にて血中アンモニア異常高値を認めたため,5-FUによる高アンモニア血症が原因の意識障害と診断した.分岐鎖アミノ酸製剤投与にて翌日には症状および血中アンモニア値も改善した.その後,IRIS+Bevacizumab療法に変更としたが,高アンモニア血症を認めることなく,継続中である.今回,臨床上まれである5-FUによる高アンモニア血症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 森 義之, 飯野 弥, 須藤 誠, 藤井 秀樹
    2015 年 68 巻 8 号 p. 538-543
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法の後に白血病を発症することがあり,治療関連白血病として分類される.今回著者らは,治療関連白血病の2例を経験したので報告する.症例1は,63歳男性で,直腸癌に対して術前化学放射線療法を施行した.術後6年目,白血球810/μlと減少を認め,精査にて急性前骨髄球性白血病と診断された.化学療法を施行し完全寛解となり,発症後5年半再発を認めない.症例2は,71歳男性で,直腸癌術後の切除断端陽性に対し化学放射線療法を施行した.術後3年目,白血球39,000/μlと増加を認め,慢性骨髄性白血病と診断された.ニロチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)を服用し,細胞遺伝学的完全寛解した.
    化学放射線治療を施行した大腸癌症例では,治療関連白血病の発症を考慮し,術後5年目以降も定期的に経過観察が必要である.
  • 森谷 行利, 高木 敏行, 冨岡 憲明, 森谷 弘乃介, 瀧上 隆夫, 森川 達也, 永坂 岳司, 藤原 俊義
    2015 年 68 巻 8 号 p. 544-551
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.肛門出血と腫瘤脱出にて来院となった.肛門から脱出した腫瘤を還納した後,注腸X線および大腸内視鏡検査を施行したところ,横行結腸・下行結腸・直腸S状部(RS)に進行癌,横行結腸・下行結腸・下部直腸(Rb)に早期癌を疑わせる病変を認めた.治療として,まずは直腸病変の組織診断と深達度を明らかにした上で全体的な治療方針を立てる目的で,肛門脱出した直腸癌を経肛門的に切除した.次に,右結腸曲から上部直腸(Ra)までを一括切除し上行結腸と下部直腸(Rb)を吻合した.病理組織学的に計6ヵ所の大腸癌病変を認めたが,遺伝子変異解析も併せて行ったところ,複数の発癌機序(adenoma-carcinoma sequence・de novo発癌・serrated pathway)が同時に併存していることが認められた.多発大腸癌の成り立ちや治療方針を考えていく上で非常に示唆にとむ症例と考えられた.
  • 山口 圭三, 谷川 雅彦, 中山 剛一, 平川 浩明, 亀井 英樹, 内田 信治, 三原 勇太郎, 森田 道, 山口 倫, 緒方 裕, 赤木 ...
    2015 年 68 巻 8 号 p. 552-557
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    78歳女性.直腸癌の診断で腹腔鏡下低位前方切除術,回腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術後8ヵ月で人工肛門閉鎖を検討したが,注腸検査後に39℃台の発熱と左側腹部痛が出現した.大腸内視鏡検査ではS状結腸から横行結腸まで易出血性粘膜と潰瘍が存在し,下行結腸の狭小化を伴っていた.生検では炎症細胞浸潤,リンパ濾胞の形成および線維化を認めた.以上からdiversion colitisと診断した.salazosulfapyridine坐剤,mesalazineの内服および注腸投与では,結腸の狭小部が残存しており,prednisolone注腸へ治療薬を変更した.開始後2週間での内視鏡検査では下行結腸の狭小化が改善しており,人工肛門閉鎖術を行った.術後は一過性の発熱を認めたが,他に合併症を認めなかった.有症状のdiversion colitisにはステロイド注腸が有効な治療法である可能性が示唆された.
  • 飯石 浩康
    2015 年 68 巻 8 号 p. 588
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
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