日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
69 巻 , 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 高野 正太, 山田 一隆
    2016 年 69 巻 5 号 p. 233-238
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    便失禁に対する脛骨神経刺激療法(PTNS)は簡便で侵襲も少ないが,効果は仙骨神経刺激療法より劣り効果を疑問視する論文もある.両側PTNSの便失禁に対する効果を検討した.
    対象は2014年3月~2015年3月に6ヵ月以上の便失禁を訴えた患者22名.両側の脛骨神経部体表に電極パッドを貼付する両側PTNS 30分を週2回,6週間(計12回)施行.治療前後に1週間の便失禁回数,Wexnerスコア,FIQL,肛門内圧検査を行った.
    Wexnerスコアは10.2→6.9に低下(p=0.048).1週間の便失禁回数は4.7→1.5に減少(p=0.039),76.2%で回数が半分以下に減少した.FIQLは羞恥心の項目のみ2.2→2.8と改善したが(p=0.02),総合では2.7→3.1と有意な改善は認めなかった.
    PTNSは簡便で低予算だが効果はSNMに比べて低く,説明を十分に行った上で治療の選択肢の1つとすべきである.
臨床研究
  • 横尾 貴史, 吉川 周作, 増田 勉, 内田 秀樹, 久下 博之, 横谷 倫世, 山岡 健太郎, 下林 孝好, 稲垣 水美, 稲次 直樹
    2016 年 69 巻 5 号 p. 239-246
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    当センター開設以後27年間に手術を施行した仙骨部毛巣洞21例について報告する.結果:仙骨部腫脹,排膿,肛門部痛などで受診し,年齢の中央値は25歳で男女比は16:5であった.2010年までの17例に対して病変切除後に一期的縫合閉鎖を施行し,4例で再発を認めた.再発例および2010年以降の病変切除範囲の大きかった4例に対しては,Marsupialization法(造袋術)を施行し再発を認めなかった.考察:毛巣洞に対する術式は種々報告されているが,一期的縫合閉鎖では創離開や再発率の高さが指摘されている.造袋術は大きな病変や一期的縫合後に創が離開した場合の再手術時に有用であるとされており,創部を閉鎖しないのでドレナージ効果も期待できる.病変切除後の皮膚欠損が大きい症例で,閉鎖縫合部の緊張が強いと判断した際は造袋術を行った.その結果,いずれも創離開や再発を認めず経過は良好であった.
症例報告
  • 山本 隆嗣, 大河 昌人
    2016 年 69 巻 5 号 p. 247-253
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性で8年前にStage I直腸癌で低位前方切除術,6年前に吻合部再発でMiles手術の既往がある.貧血精査のため施行した上部消化器内視鏡検査で胃角部の粘膜下隆起病変から腺癌が発見され,幽門側胃切除と1群リンパ節郭清が施行された.粘膜に癌はなく,粘膜下組織と筋層のみに癌を認めた.リンパ節転移はなく,癌組織は既往の直腸癌に酷似しており,免疫組織化学検査で(CDX2陽性/CK7陰性/CK20陽性/MUC5AC陰性/MUC6陰性)で転移性胃癌と診断した.術9ヵ月後現在再発を認めていない.大腸癌の胃転移はまれであるが,胃内多発や同時他臓器転移や病期進行症例が多く,予後不良である.しかし自験例の様な肉眼的治癒切除例は予後を期待できる報告もされている.再発率の高い病期や経過が非典型的な症例はまれな臓器への転移も憂慮され,術後サーベイランスを長期に行うことが肝要と考えられた.
  • 戸嶋 俊明, 濱田 円, 徳本 憲昭, 小島 康知, 井谷 史嗣, 岡島 正純, 高田 晋一
    2016 年 69 巻 5 号 p. 254-259
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.便通異常を主訴に前医を受診,下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に40mm大の発赤調の粘膜下腫瘍を指摘され,精査加療目的に紹介となった.腫瘍表面に潰瘍や陥凹を認めず生検は未施行であった.精査の結果,GISTや平滑筋腫,神経鞘腫などを疑い,遠隔転移を認めなかったため,腹腔鏡下S状結腸切除,リンパ節D2郭清術を施行した.病理組織学的検査では核の柵状配列を伴った紡錘形細胞の増生を認め,免疫染色ではc-kit陰性,CD34陰性,S-100蛋白陽性,MIB-1index<1%であり,良性神経鞘腫と診断された.大腸神経鞘腫は大腸原発の粘膜下腫瘍の中でも稀な疾患であり,また術前診断は困難であり,粘膜下腫瘍として手術が施行されることが多く,根治性を損なわないよう手術を行うことが肝要である.
  • 佐藤 力弥, 北薗 正樹, 末永 豊邦, 三田 多恵, 大山 智宏, 上村 真弓
    2016 年 69 巻 5 号 p. 260-265
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.幼少期より完全内臓逆位を指摘されていた.検診で便潜血反応陽性となり大腸内視鏡検査を施行,直腸Rb,後壁,20mm,0-IIa+IIc病変を認め,生検にてwell differentiated adenocarcinomaと診断された.超音波内視鏡検査ではSM軽度浸潤癌を疑う所見であり内視鏡的粘膜下層剥離術を施行したが,病理組織学的所見はSM高度浸潤癌であった.精査にてリンパ節転移や遠隔転移は認めず,追加治療として腹腔鏡下低位前方切除を行う方針とした.完全内臓逆位に対する腹腔鏡下手術の経験はないが,3D-CT angiographyによる血管走行の把握,手術動画の左右反転再生によるイメージトレーニングにより,安全に手術を完遂できた.完全内臓逆位に対する腹腔鏡下直腸癌手術の報告は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 端山 軍, 塩谷 猛, 山岸 征嗣, 南部 弘太郎, 渡邉 善正, 渋谷 肇, 清水 貴夫, 内間 久隆
    2016 年 69 巻 5 号 p. 266-271
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    肛門管由来の腺癌細胞が連続性に隣接皮膚に進展するpagetoid spreadを伴った長径13.5cmの巨大肛門管癌の1例を経験した.症例は87歳,女性.2年前より肛門部のびらんおよび腫瘤を自覚していたが放置していた.徐々に腫瘤が増大したため,近医受診し肛門腫瘍の診断で当院紹介となった.腫瘍生検を行ったところ,消化管由来の粘液癌であった.肛門管粘液癌の診断で腹会陰式直腸切断術を施行した.
    病理組織学的所見は,肛門周囲皮膚へのpagetoid spreadを伴う肛門管由来の粘液癌であった.術後47ヵ月を経過したが再発の徴候はない.
    肛門周囲に発症したpagetoid spreadは,半数以上に肛門病変を認めるため,視診および皮膚生検の実施が重要である.pagetoid spreadを認めた際には癌腫の存在診断が困難な報告もあり肛門癌の存在を念頭におき治療することが重要であると考えられた.
  • 馬場 裕信, 星野 直明, 小野 千尋
    2016 年 69 巻 5 号 p. 272-275
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.上腹部痛を主訴に前医を受診し内ヘルニアによる絞扼性イレウス疑いにて紹介となった.腹部CT検査では右上腹部にclosed-loopを形成する拡張小腸を認めた.横行結腸背側から網嚢内へ小腸が陥入することから横行結腸間膜大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し腹腔鏡下手術を施行した.横行結腸間膜に約3cmの裂孔および同部に陥入する発赤を伴う小腸を認めた.牽引での整復が困難であったため,網嚢を開放し観察すると陥入小腸には壊死所見を認めなかった.再度,脱出腸管を整復すると容易に還納でき,ヘルニア門および開放した網嚢を縫合閉鎖し手術を終了した.本邦にて結腸間膜を両葉欠損する横行結腸間膜大網裂孔ヘルニアの報告は21例あり,腹腔鏡下に修復し得た症例は本例を含め2例のみであった.今回,われわれは術前に診断し腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 齊藤 竜助, 中原 雅浩, 吉田 誠, 米原 修治
    2016 年 69 巻 5 号 p. 276-281
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.直腸癌に対して2005年4月に直腸低位前方切除術(D2廓清)を行った.病理組織学的検査では直腸粘液腺癌Ra,T1b,ly2,v0,N1(1/24),P0,H0,M0,Stage IIIaの診断であった.術後1年目に腹膜播種再発による腸閉塞に対して,小腸部分切除術を施行した.直腸癌術後5年2ヵ月目に膵頭部に腫瘤を認め,原発性膵癌と直腸癌膵転移再発の鑑別は困難であった.その他に明らかな腫瘤性病変がみられなかったため,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は膵外に膨隆するように存在しており,病理組織学的所見から直腸癌腹膜播種再発と診断した.膵頭十二指腸切除術後5年間経過した現在も再発は認めない.大腸癌腹膜播種再発に対する切除例はきわめて稀である.外科的切除によって長期生存を得られる症例も存在するため,若干の文献的考察を加え報告する.
第36回日本大腸肛門病学会北海道地方会
編集後記
feedback
Top