日本大腸肛門病学会雑誌
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69 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
臨床研究
  • 横山 将也, 山崎 一馬
    2016 年 69 巻 8 号 p. 411-417
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌に対するステント留置36例をretrospectiveに解析し,その有用性を明らかにした.Bridge to surgery(以下BTS)が27例,緩和治療が9例であり,36例中35例に留置が可能であった.ステント留置に伴う大きな合併症は認めなかった.BTS群での手術後の飲水開始は中央値1日,食事開始は中央値3日,退院は中央値13日であった.合併症として3例に縫合不全,2例に腸閉塞を認めたが,手術後死亡例は認めなかった.緩和治療群では留置不能例を1例に認めたが,留置成功例では全身状態不良となるまで経口摂取が可能であった.大腸ステント留置により腸閉塞を解除,全身状態を改善し,安全に待機手術に移行することができた.さらに,術後の早期の経口摂取と早期の離床が可能となり良好な短期手術成績を得ることができた.また緩和治療を目的とした患者に対しても有用な選択肢であることが考えられた.
  • 壬生 隆一, 松田 博光, 冨永 洋平
    2016 年 69 巻 8 号 p. 418-423
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    15例の第4度陳旧性会陰裂傷の手術を経験した.便失禁のみは2例,直腸膣瘻のみは4例,便失禁を伴う直腸膣瘻は5例,総排泄腔様変形は4例であった.皮膚切開は会陰部皮膚の変形のため肛門と膣の間が短縮している場合は「X」字状に入れた.皮弁を形成し,外肛門括約筋,恥骨直腸筋を同定した.瘻孔がある場合は瘻孔部を切除し,閉鎖した.恥骨直腸筋は縫縮し,外肛門括約筋は損傷部瘢痕を縫合し,皺壁形成を行った.ドレーンは後期には挿入せずに皮膚の一部を開放した.便失禁を訴えていた11例は術後2例に減少した.直腸膣瘻の再発はなかった.2例で創感染があり,2例で創離開があった.内圧検査では肛門管最大静止圧は上昇した(術前;25.9±10.0mmHg,術後;34.9±15.7mmHg:p=0.021).術後の排便造影では直腸膣瘻や直腸瘤は軽快した.われわれの手術法は有用と思われた.
  • 三枝 直人, 三枝 純一, 横山 正, 大澤 高明, 石黒 成治, 篠崎 大, 菊池 学, 横山 泰久
    2016 年 69 巻 8 号 p. 424-429
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    [目的]痔瘻で初発したクローン病(CD)症例に対するtop down治療の有効性を検証する.[対象・方法]CD確診から1年未満で生物学的製剤(BIO)を投与された21例を後ろ向きに検討した.腸管病変は,びらん・小潰瘍を早期,縦走潰瘍・敷石状外観・狭窄を進行病変とした.[結果]平均痔瘻発症年齢は25.1歳,平均診断時年齢は27.0歳,診断からBIO導入までの平均期間は0.4年,BIO導入から痔瘻および腸管病変の転帰確認までの平均期間はいずれも2.5年であった.腸管の早期病変例は8例(38.1%),進行病変例は13例(61.9%)で,予後調査時に11例(52.4%)がseton留置中で,寛解は痔瘻が20例(95.2%),腸管病変は9例(42.9%)であった.[結論]初発痔瘻からCDを疑った場合,腸管病変は早期であることが多く,seton併用下の早期BIO導入により高率に寛解導入が期待できる.
症例報告
  • 山田 泰史, 横溝 肇, 中山 真緒, 矢野 有紀, 岡山 幸代, 佐久間 晶子, 佐竹 昌也, 塩澤 俊一, 吉松 和彦, 加藤 博之, ...
    2016 年 69 巻 8 号 p. 430-435
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.併存症に心房細動,高血圧症を認める.直腸癌(Ra)に対して低位前方切除術+D3郭清を施行し,術後縫合不全を認めるも保存的に軽快し退院.術後45日目から嘔気,腹痛,下痢を認めたため再入院した.一旦は保存的加療で症状は改善したが,術後64日目に熱発と血便が出現し,検査にて大腸壊死の診断となり,緊急手術を施行した.可及的に壊死腸管を切除し,人工肛門を造設した.術後経過は良好で,再手術後38日目に退院した.再手術後49日目に人工肛門からの血便,腹痛,嘔吐を認め,精査にて大腸壊死再発と診断し,2回目の緊急手術を施行した.壊死腸管を含め上行結腸までの腸管を切除し,右下腹部に上行結腸による人工肛門を再造設した.非常に稀である繰り返す直腸癌術後遅発性大腸壊死の症例を経験した.
  • 浅原 史卓, 宮内 潤, 橋本 和彦
    2016 年 69 巻 8 号 p. 436-440
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.大腸癌検診にて便潜血陽性を指摘され,2次検診の下部消化管内視鏡検査にて,横行結腸に腫瘍性病変を発見された.術前の生検検体の病理学的所見では低分化型腺癌の診断となり,腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査で腫瘍は固有筋膜まで浸潤しており,神経内分泌癌(neuroendocrinecarcinoma;以下NEC)に相当する成分と粘液産生を示す腺癌の成分とを認めた.腫瘍内での分布範囲として各々量的に30%以上を占めており,mixed adenoneuroendocrine carcinoma(以下MANEC)と診断した.MANECは一般的には悪性度の高い疾患といわれているが,根治的切除後1年経過した現在,無再発で経過観察中である.横行結腸MANECは比較的まれな疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 生田 大二, 園田 寛道, 太田 裕之, 植木 智之, 三宅 亨, 北村 直美, 清水 智治, 谷 眞至
    2016 年 69 巻 8 号 p. 441-447
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    症例1は72歳男性.2年前から肛門痛に対して肛門掻痒症としてステロイド含有軟膏を塗布していたが改善を認めなかった.症例2は72歳男性.3年前から血便を認めていた.両症例とも,肛門周囲皮膚にびらんを認め,同部位からの生検で肛門管癌のPagetoid spreadと診断し,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.肛門部のびらん外側縁から1cmおよび2cm離した同心円状にmapping biopsyを施行し,迅速病理で陰性を確認したうえで肛門皮膚の切除範囲を決定した.切除標本の肛門皮膚断端は陰性であった.mapping biopsyで適切な肛門皮膚切除範囲が決定できたPagetoid spreadを伴う肛門管癌の2例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
編集後記
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