日本大腸肛門病学会雑誌
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70 巻 , 1 号
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会長講演
  • 前田 耕太郎
    2017 年 70 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    直腸肛門良性疾患に対する外科治療として,私が考案工夫した術式に関して概説した.潰瘍性大腸炎に対する大腸亜全摘後や癌などによる穿孔性腹膜炎時の腸管切除後の肛門側腸管の処置に対しては,肛門側腸管皮下埋没法を本邦に初めて導入し命名した.潰瘍性大腸炎の一時的回腸瘻閉鎖前にはileostomy connector使用による閉鎖後の頻便の改善を,直腸肛門部手術時の視野展開に関してはE式開肛器とローンスターリトラクターを併用し良好な視野確保を可能にした.便失禁に対してはtotal pelvic floor repairを本邦に導入し,直腸瘤に対してはtransvaginal anterior levatorplasty(TVALP)を独自に開発した.またTVALPを直腸膣瘻の治療に応用し良好な成績を報告した.ストーマ脱出に関しては,その機序を解明し,staplerを用いた修復術を2種類開発した.これらの仕事を成し遂げえたのは,ご指導いただいた先輩の先生方や切磋琢磨した同僚・仲間達,支えてくれた医局員のお陰とこの場を借りて感謝申し上げたい.
原著
  • 内田 恒之, 賀川 弘康, 絹笠 祐介, 塩見 明生, 山口 智弘, 山川 雄士
    2017 年 70 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    【目的】早期大腸癌に対する内視鏡治療後に追加腸切除を受けた症例のリンパ節転移と遠隔転移再発の危険因子を明らかにすること.【対象と方法】2002年11月から2013年12月までの期間に,cT1大腸癌に対する内視鏡治療後に当院で外科的追加腸切除をうけた182例.臨床病理学的因子に対して単変量および多変量解析を行い,リンパ節転移と遠隔転移再発の危険因子を抽出した.【結果】多変量解析の結果,リンパ管侵襲あり(p=0.011)と癌遺残あり(p=0.001)がリンパ節転移の独立した危険因子として抽出された.遠隔転移再発に関しては,単変量解析で有意差のある因子は抽出されなかった.【結語】cT1大腸癌に対する内視鏡治療後に外科的追加腸切除をうけた症例のリンパ節転移の危険因子はリンパ管侵襲と癌遺残であった.一方,遠隔転移再発の危険因子は同定されなかった.
  • 上原 拓明, 山崎 俊幸, 岩谷 昭, 松澤 夏未, 金城 章吾
    2017 年 70 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌に対する腹腔鏡手術において,肥満が及ぼす影響について検討した.対象および方法:2008年から2014年までに腹腔鏡手術を施行したS状結腸癌182例を対象とした.BMI≥25を基準値として,肥満群42例と非肥満群142例に分類し,患者背景,手術成績,病理結果,合併症,腫瘍学的予後に関して検討した.結果:手術時間が非肥満群と比べ,肥満群で有意に延長しており(P=0.008),出血量も非肥満群と比べ,肥満群で有意に増加していた(P=0.008).その他の検討項目で両群間に有意差を認めなかった.結論:S状結腸癌肥満患者の腹腔鏡手術は,手術時間,出血量を除けば非肥満患者と遜色ない成績が得られ,安全かつ合理的な選択肢であると考えられた.
臨床研究
  • 渡部 顕, 関戸 仁, 新野 史, 坂本 里紗, 清水 哲也
    2017 年 70 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    目的:検索リンパ節は腸間膜から外科医が摘出するリンパ節に加え,固定後に病理医が評価する標本内付着のリンパ節がある.この標本内リンパ節の重要性を検証する.
    対象と方法:2013年4月~2016年3月に当院で手術を行い,リンパ節を評価した大腸癌235例.手術後に外科医が腸間膜からリンパ節を摘出し,固定後に病理医が腸管縦軸方向で腫瘍全体に割を入れ,割面を肉眼観察した.
    結果:検索リンパ節個数の中央値は23個,外科医が摘出したリンパ節は22個であり,腸間膜より摘出したリンパ節は十分量評価されていた.標本内リンパ節は51%の症例に観察され,その深達度はT3以深が96%を占めた.リンパ節転移症例のうち13%は標本内のみに転移が観察された.
    結語:大腸癌の標本内リンパ節の評価はstage migrationの回避のために重要であると考えられた.この評価には腫瘍全体への割入れと切片の観察が必要であると考えられた.
症例報告
  • 荒川 敏, 守瀬 善一, 伊勢谷 昌志, 梅本 俊治, 池田 匡宏, 堀口 明彦
    2017 年 70 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    45歳の男性で,自ら肛門から大根を挿入したが抜けなくなり下血,下腹部痛出現したため救急搬送された.下腹部に限局した圧痛と筋性防御を認め,肛門からは動脈性の下血を認めた.腹部CTではRs直腸内に約74×58mmの異物を認めた.明らかな遊離ガスは認めなかった.全身麻酔下にて手術を行った.経肛門的に痔動静脈の損傷部位と直腸粘膜を修復した.腹腔鏡下にて腹腔内を観察すると,軽度濁った腹水を認めたが,明らかな穿孔部位は認めなかった.Rs直腸に異物を認めた.経肛門的に異物除去を試みるも困難であり,術者の左手を腹腔内に挿入して用手補助腹腔鏡下手術に移行し,用手的圧迫と経肛門的に異物を破砕しながら経肛門的に異物を除去した.経肛門的に摘出困難な直腸異物に対して,用手補助腹腔鏡下手術は腹腔内全体や腸管を観察することができ,用手的圧迫による異物誘導も可能であり,有用な治療のオプションになりえると考えられた.
  • 須田 和義, 川崎 俊一, 本橋 行, 後藤 悦久
    2017 年 70 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    80歳以上の高齢者にも経肛門的直腸異物症例は存在するが,本例は従来報告の中でも性的動機では最高齢になる.また,女性体型をかたどったペットボトルという特徴的な異物であり,無麻酔下用手経肛門的に摘出できた1例である.症例は85歳男性で,『香水の瓶』が取り出せないという主訴で来院した.指診上,肛門縁約10cmで異物端を触知し,直腸鏡,画像とから,中間部がくびれた形状で,内容物を有した容器様の異物が開口部を下にして骨盤内に認められた.側臥位にて腹部圧迫し,直腸内の示指で異物端を適切な方向に向けつつ,異物を肛門側に押し進め,摘出することができた.異物は,約20×7cmのペットボトルで女性のボディラインを再現した形状で,そのくびれはウエストに模した部分であった.今後も常習性の高齢者症例は増加する可能性がある.リスク教示のみならず,安全な使用を是認せざるを得ない場合もありうる.
  • 柿添 学, 中嶌 雅之
    2017 年 70 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.閉塞性大腸癌に対して回腸双孔式人工肛門を造設した.術後40日目に肛門側人工肛門脱を認め,その後口側も脱出した.装具装着困難と脱出腸管粘膜出血の改善を目的に人工肛門形成術を施行した.脱出腸管は用手還納不能であったため,外管の股部を切開して内管を露出後,外管を全周性に切開して翻転整復した.肛門側は可及的に体外へ引き出し自由度が消失した部位で腸管切除し,口側は血流を確認して最小限に腸管切除し,双孔式人工肛門を造設した.自由度の高い口側腸管には腹壁腸管固定術を追加し再発予防とした.一時的造設に終わることの多い回腸人工肛門の長期成績は未だ不明な点が多く,人工肛門脱に対する確立した術式もない.今回われわれは,回腸双孔式人工肛門の両側脱に対して,人工肛門局所での腸管切除術に腹壁腸管固定術を併用して良好な成績が得られたので報告する.
  • 黒田 顕慈, 野田 英児, 高田 晃次, 南原 幹男, 木下 春人, 原 順一, 河内屋 友宏
    2017 年 70 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2017年
    公開日: 2016/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性.潰瘍性大腸炎に対して大腸全摘術(1期目:腹腔鏡下結腸全摘術・回腸瘻造設術,2期目:残存直腸切除術,J型回腸嚢肛門管吻合,3期目:回腸瘻閉鎖術)を施行した.術後12日目に腸閉塞症状が出現,その後下血がみられ,下部消化管内視鏡検査にて回腸嚢内に湧出性出血を伴う多発性潰瘍を認めた.回腸嚢炎と考え,抗生剤の投与にて経過をみたが,再度下血が出現し,ショックバイタルとなった.回腸嚢より口側からの出血が疑われ,緊急試験開腹術を施行した.術中内視鏡検査にて空腸内に散在性の潰瘍を認めたが明らかな出血源は指摘しえなかった.病状経過よりUC関連の小腸炎が疑われ,プレドニゾロンおよびメサラジンの内服加療を行ったところ,下血は消失し,6ヵ月経過する現在も再燃を認めていない.潰瘍性大腸炎に関連した大腸全摘術後の小腸炎にて治療に難渋した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
編集後記
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