日本大腸肛門病学会雑誌
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70 巻, 2 号
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原著
  • 田中 淑恵, 山岸 茂, 鈴木 紳祐, 中堤 啓太, 清水 康博, 山本 晋也, 仲野 明
    2017 年 70 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    目的:腹腔鏡下直腸癌術後縫合不全におけるC反応性蛋白(CRP)値の有用性を検討した.当院では術後3日目に食事を再開,4日目に吻合部ドレーンを抜去しており,CRP値が抜去基準として有用か検討した.方法:2010年1月~2015年6月の腹腔鏡下直腸癌手術108例を,縫合不全非合併群(N群)97例と縫合不全合併群(AL群)11例に分け,術後白血球数(WBC),CRP値を比較した.結果:術後3日目のWBC,術後1,3,6日目のCRP値がAL群で有意に高値だった(p<0.05).ROC曲線下面積は術後3日目のCRP値0.87(95%CI:0.77-0.98)で最高値,カットオフ値は10.1mg/dl(感度73%,特異度87%,陽性的中率38%,陰性的中率97%)だった.結語:術後3日目CRP値は陽性的中率は低いが,陰性的中率は高く,縫合不全を否定しドレーン抜去時期の基準として有用である.
臨床研究
  • 左雨 元樹, 山名 哲郎, 小野 朋二郎, 森本 幸治, 西尾 梨沙, 岡田 大介, 古川 聡美, 岡本 欣也, 佐原 力三郎
    2017 年 70 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    痔瘻癌手術症例42例の臨床病理と治療成績を検討した.男性40例,女性2例,平均年齢は61.3歳,主な臨床症状は肛門部痛,腫瘤,コロイド排出であった.術前の画像診断としては骨盤MRIが有用であった.痔瘻の隅越分類はIII型・IV型が多く,病悩期間は平均13.5年であった.42例中41例は術前の腰麻下生検で確定診断された.2例は術前治療として放射線治療が施行され,根治手術は直腸切断術が40例,骨盤内臓全摘術が2例であった.術後の病理検査は,粘液腺癌32例,管状型腺癌8例,壁深達度はAが37例,AIが5例,垂直断端は20例(47.6%)で陽性,リンパ節転移は5例(11.9%)であった.病期分類ではstage II 37例(88.1%),stage IIIa 3例(7.1%),stage IV 2例(4.8%)であった.再発は局所再発10例,肺転移が4例であった.全体の5年生存率は83.5%であった.
  • 八田 雅彦, 稲田 涼, 小林 壽範, 大石 賢玄, 松本 朝子, 權 雅憲, 濱田 円
    2017 年 70 巻 2 号 p. 64-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    【目的】進行・再発小腸腺癌の臨床病理学的特徴および,化学療法の有効性を自験例および本邦報告例で検討した.
    【対象と方法】原発巣を切除した進行・再発小腸腺癌の本邦報告63例(1999年~2015年,医中誌検索)および自験4例の臨床病理学的特徴を検討した.
    【結果】年齢中央値は64歳(30-90),男性/女性37/30例,空腸/回腸43/24例,同時性/異時性39/28例であった.転移臓器として,肝臓/肺/腹膜播種/リンパ節/その他は,それぞれ15/6/45/15/2例であった.67例のうち化学療法を行った症例は40例であり,施行群,非施行群の生存期間中央値は22ヵ月,14ヵ月であった(HR:0.65).
    【結語】進行・再発小腸腺癌に対する標準治療の確立のため,大規模な臨床試験を期待したい.
  • 柴田 直哉, 南 史朗, 深尾 理, 村田 隆二, 相良 誠二, 柴田 みつみ, 杉江 悟, 山本 章二朗, 小林 伸行
    2017 年 70 巻 2 号 p. 68-72
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    機能性直腸肛門痛に対するプレガバリンの効果とその効果に関与する因子を検討した報告はないので,レトロスペクティブに検討した.<対象と方法>対象はプレガバリンで治療を行った機能性直腸肛門痛患者21名(男性9名,女性12名,平均年齢70.0±8.7才)であった.初診時問診票と診療録の記録から直腸肛門痛の持続期間,誘因,程度,便秘,下剤使用,腰痛,うつ病,肛門手術の既往などを調べた.プレガバリンは25~75mg/日で開始し,漸増し50~450mg/日で維持していた.治療効果は患者の主観的評価で判断した.<結果>13名(有効群,62%)で改善がみられた.有効群と無効群に分けて検討したところ,うつ病が無効群に有意に多く(P<0.05),肛門手術既往のあるものが有効群に多かった(P<0.05).<考察>機能性直腸肛門痛にプレガバリンが有効であった.うつ病がないもの,肛門手術の既往がある症例でより有効であった.
症例報告
  • 井原 啓佑, 山口 悟, 志田 陽介, 藤田 純輝, 横山 悠, 尾形 英生, 黒田 一, 加藤 広行
    2017 年 70 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    48歳女性.排便時出血の主訴で前医を受診し,下部消化管内視鏡検査にて虫垂口に発赤を伴う粘膜下腫瘤を認めた.CT,超音波検査でも嚢胞性病変が指摘され,虫垂粘液嚢腫の診断で腹腔鏡下回盲部切除術(D2)を施行.病理組織学的検査にて虫垂子宮内膜症の診断となった.虫垂粘液嚢腫の所見を呈する疾患として,虫垂粘液腺腫,虫垂粘液嚢胞腺癌のほかに非腫瘍性嚢胞が含まれる.上記疾患は画像上否定することは困難であり,多くの場合で診断・治療目的に手術が行われることが多い.本症例のように虫垂子宮内膜症を原因とした虫垂粘液腫の可能性もあり,術前の鑑別診断として考慮する必要があると思われた.虫垂子宮内膜症による虫垂粘液腫はこれまでにほとんど報告がなく,医中誌で検索しえた限りで本邦では5例のみであった.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 笹生 和宏, 高橋 秀和, 田中 伸生, 村田 賢
    2017 年 70 巻 2 号 p. 78-80
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.直腸脱を自覚した4ヵ月後から排尿障害が出現し,近医で神経因性膀胱と診断された.直腸脱の自覚10ヵ月後に当院を受診し滑脱ヘルニア型完全直腸脱と診断した.腹腔鏡下直腸固定術を施行したところ,直腸脱の改善とともに排尿障害の改善が得られた.術後6ヵ月が経過した現在,直腸脱・排尿障害ともに再発を認めていない.本症例では,直腸脱に対し経腹的アプローチを採用することにより,骨盤内臓器の位置関係が是正されることで,排尿障害が改善された可能性が示唆された.
  • 福岡 宏倫, 長嵜 寿矢, 三城 弥範, 日吉 幸晴, 小倉 淳司, 秋吉 高志, 藤本 佳也, 長山 聡, 福長 洋介, 高松 学, 上野 ...
    2017 年 70 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/26
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性,主訴は右鼠径部腫瘤.肛門管から下部直腸にかかる隆起性病変と肛門周囲皮膚に全周性の硬結・発赤を認めた.生検で肛門管内腫瘤から高分化腺癌,肛門周囲皮膚発赤部から上皮内に浸潤する癌細胞を認めた.精査にて右側方/鼠径リンパ節転移,肛門周囲皮膚へのpagetoid spreadを伴う肛門管腺癌と診断した.術前全身化学療法と術前化学放射線療法の後,腹腔鏡下直腸切断術,右側方/鼠径リンパ節郭清,会陰創皮弁形成術を施行.術後病理所見で癌細胞は認めず,pathological complete responseだった.Pagetoid spreadを伴う肛門管腺癌はまれであり確立した治療法はなく,予後不良である.本症例は術前治療が非常に有効であり,術前病期によっては前治療を含めた集学的治療も考慮するべきである.
第37回日本大腸肛門病学会北海道地方会
第193回大腸肛門病懇談会
第83回大腸癌研究会
編集後記
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