日本大腸肛門病学会雑誌
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70 巻 , 5 号
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症例報告
  • 笠原 健大, 榎本 正統, 松土 尊映, 石崎 哲央, 久田 将之, 勝又 健次, 土田 明彦
    2017 年 70 巻 5 号 p. 295-299
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の直腸膣瘻は約2%と稀な合併症であるが,発生すると治療に難渋する.今回瘻孔閉鎖術後再発症例に対してエストリオール錠の使用により,瘻孔の完全閉鎖に至った症例を経験した.
    症例は70歳女性.平成21年11月に直腸癌,同時性肝転移の診断で腹腔鏡下低位前方切除術施行した.術後6日より直腸膣瘻が出現したが,肝転移の治療を先行し,化学療法および肝部分切除を施行した.平成22年7月に経会陰的に瘻孔閉鎖術を実施したが,術後7日で直腸膣瘻の再発を認めた.術後13日にエストリオール錠を開始したところ,術後28日に瘻孔の完全な閉鎖を認めた.
    過去にも閉経後の症例に対してエストリオール錠を使用し,瘻孔閉鎖に至った症例は散見されるが,瘻孔閉鎖術後の再発症例への投与は医中誌では自験が1例目であった.直腸膣瘻に対して同製剤の早期使用または観血的処置の周術期における併用などにより,高い治療効果が望めるものと考えられた.
  • 小島 康知, 原野 雅生, 住谷 大輔, 國弘 真己, 岡島 正純
    2017 年 70 巻 5 号 p. 300-303
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は50代男性,S状結腸膀胱ろうにて紹介,S状結腸切除+一時的回腸ストーマ造設術施行,術後3ヵ月目にストーマ閉鎖予定であったが,S状結腸吻合部狭窄を認めたため,内視鏡的拡張術を先行することとした.吻合部の狭窄に対し拡張術施行し,口側結腸を観察したところ,下行結腸は全周性に血管透見不良で,送気で容易に出血,縦方向のひび割れ所見が出現しdiversion colitis(以下DCと略す)が疑われた.DCに対し,グアーガムを含む水溶性食物繊維を回腸ストーマから肛門側に注入開始とした.投与開始2ヵ月後の内視鏡検査では,前回に比べ発赤軽減,血管透見も良好となり前回認められた炎症所見も改善,生検でもリンパ球浸潤は軽度と改善を認めた.腸管狭窄とDCは改善し術後9ヵ月目にストーマ閉鎖術を施行した.プレバイオティクスとしグアーガムを含有する水様性食物繊維の投与が有効であったDCの1例を経験したので報告する.
  • 菅沼 泰, 石本 武史, 能見 伸八郎, 西村 綾子
    2017 年 70 巻 5 号 p. 304-309
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.主訴は下腹部痛.イレウスの診断で入院の上精査を受け,虫垂癌と診断された.術中所見で腹膜播種を認めたため,腹膜播種を伴う虫垂癌に対し回盲部切除術および播種結節切除が行われた.切除標本の病理診断で虫垂杯細胞カルチノイドと診断された.
    杯細胞カルチノイドはadenocarcinoidとも呼ばれ神経内分泌腫瘍に分類されていたが,現在,Mixed adenoendocrine carcinoma のsubtypeに分類され,よりadenocarcinomaとしての性質が強調されるようになった.虫垂杯細胞カルチノイドの臨床像は悪性度が高いとの報告が多い.本症例は腹膜播種を伴い,悪性度の高い臨床像を呈していたが,S-1による補助化学療法にて再発なく長期生存している.貴重な症例と考え報告する.
  • 久下 博之, 吉川 周作, 増田 勉, 内田 秀樹, 横谷 倫世, 山岡 健太郎, 稲垣 水美, 横尾 貴史, 稲次 直樹, 宮沢 善夫
    2017 年 70 巻 5 号 p. 310-315
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.5年前から関節リウマチにてメトトレキサート(MTX)を服用していた.肛門痛を主訴に2014年当院受診,同日の大腸内視鏡検査で直腸肛門管に腫瘍性病変を認め生検を行った.初回病理組織検査ではgroup2と診断されたため,腰椎麻酔下に再生検を行った.2回目の生検病理結果でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断された.MTX休薬以外にDLBCLに対する直接治療を行っていないにもかかわらず内視鏡検査を行うごとに腫瘍の平坦化を認めた.血液内科に紹介したところ,MTX関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)と最終診断された.2年6ヵ月経過後も完全寛解を維持継続している.医学中央雑誌を検索したところ直腸肛門部に発生したMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)は自験例を含めて2例のみであり,Pubmedでは検索されなかった.
  • 西田 洋児, 羽田 匡宏, 小竹 優範, 平沼 知加志, 原 拓央
    2017 年 70 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.小児期に完全内臓逆位症の指摘を受けていた.左下腹部痛と嘔吐を主訴に近医受診し精査加療目的に当院へ紹介となった.血液検査で炎症所見を認め,腹部造影CT検査にて腹部のすべての臓器が左右逆に位置し,左下腹部には糞石を伴う虫垂の腫大を認めた.完全内臓逆位症を伴う急性虫垂炎と診断の上,緊急で単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.臍部に約3cmの縦切開を置きラッププロテクター®を挿入.EZアクセス®を装着し5mmポート3本で手術を施行した.虫垂は壊死性で,根部で穿孔していた.自動縫合器を用いて虫垂を体腔内で切除し,臍部より標本を摘出した.合併症なく術後14日目に退院となった.術前に十分な画像評価を行い,日常より単孔式腹腔鏡下虫垂切除術の手術術式が定型化されていれば完全内臓逆位症を有する症例であっても単孔式腹腔鏡下手術は安全に施行可能な術式であると考えられた.
  • 石川 慎太郎, 川村 崇文, 阪田 麻裕, 石松 久人, 原田 岳, 岩泉 守哉, 福江 美咲, 山本 真義, 倉地 清隆, 今野 弘之
    2017 年 70 巻 5 号 p. 320-324
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性.2歳時に肝芽腫のため手術・化学療法による治療を受けていた.貧血の精査のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体部を中心に多発する胃底腺ポリープを認めた.既往歴より家族性大腸腺腫症(FAP)を疑い,下部消化管内視鏡検査を施行したところ,大腸全域にわたって多発するポリープを認めFAPの確定診断に至った.直腸ポリープの一部に癌化も認めたため,腹腔鏡下大腸全摘術を行った.家族歴には特記事項なく,肝芽腫を合併したFAPの発端者と診断した稀な症例であった.FAPの家族歴がある場合は小児期から経過観察の対象となるが,家族歴を有しない場合には発見と診断が困難である.肝芽腫またはその既往を有する患者では随伴病変の存在に注意し,消化器症状を呈する場合には積極的に消化管内視鏡検査を施行することが重要である.
  • 竹中 雄也, 別府 直仁, 柳 秀憲, 小野 朋二郎, 友松 宗史, 吉江 秀範, 木村 文彦, 覚野 綾子, 西上 隆之
    2017 年 70 巻 5 号 p. 325-329
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    Tail gut cystは仙骨前面に発生するまれな疾患で,悪性所見を伴うことはさらにまれである.今回,悪性化を伴ったtail gut cystの1例を経験したので報告する.症例は50歳代,女性.6年前に仙骨前面の嚢胞性病変を指摘され経過観察となっていたが,嚢胞の急速な増大とともに肛門部痛が出現した.骨盤内嚢胞から直腸への浸潤を伴う腫瘍を指摘され手術となる.手術は開腹直腸切断術・嚢胞摘出術を施行.外括約筋から大殿筋まで腫瘍が進展しており合併切除術を施行した.病理診断でtail gut cystから発生した腺癌と診断され,術後直腸癌に準じた化学療法を施行した.局所再発に対して追加切除を行うも局所再発が原因で術後3年目に永眠となった.悪性所見を伴うtail gut cystは完全切除が可能であれば予後は比較的良好であるが,癌遺残例では早期再発例が散見され,外科的根治切除が重要である.
第195回大腸肛門病懇談会
第85回大腸癌研究会
編集後記
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