直腸癌術後の直腸膣瘻は約2%と稀な合併症であるが,発生すると治療に難渋する.今回瘻孔閉鎖術後再発症例に対してエストリオール錠の使用により,瘻孔の完全閉鎖に至った症例を経験した.
症例は70歳女性.平成21年11月に直腸癌,同時性肝転移の診断で腹腔鏡下低位前方切除術施行した.術後6日より直腸膣瘻が出現したが,肝転移の治療を先行し,化学療法および肝部分切除を施行した.平成22年7月に経会陰的に瘻孔閉鎖術を実施したが,術後7日で直腸膣瘻の再発を認めた.術後13日にエストリオール錠を開始したところ,術後28日に瘻孔の完全な閉鎖を認めた.
過去にも閉経後の症例に対してエストリオール錠を使用し,瘻孔閉鎖に至った症例は散見されるが,瘻孔閉鎖術後の再発症例への投与は医中誌では自験が1例目であった.直腸膣瘻に対して同製剤の早期使用または観血的処置の周術期における併用などにより,高い治療効果が望めるものと考えられた.
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