日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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75 巻, 2 号
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原著
  • 山岸 茂, 田 鍾寛, 森 康一, 後藤 晃紀
    2022 年 75 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    目的:左側横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術における術前3D-CT angiography(CTA)と術中ICG蛍光法によるリンパ流評価を駆使したリンパ節郭清範囲について検討する.

    対象と方法:左側横行結腸癌症例45例を対象とし,術前CTAでリンパ節郭清範囲を決定した.このうち15例は,術中ICG蛍光法によるリンパ流観察で郭清範囲を評価した.

    結果:術前CTAで決定したリンパ節郭清範囲は,中結腸動脈左枝領域21例,副中結腸動脈領域17例,左結腸動脈領域15例(重複あり)だった.これらを,術中ICG蛍光法によるリンパ流観察で評価すると,術前と比較し拡大と縮小郭清を1例ずつ認めた(郭清範囲変更率2/15=13.3%).

    結語:左側横行結腸癌に対して術前CTAで決定したリンパ節郭清範囲を,術中ICG蛍光法によるリンパ流観察で評価することは有用な術式の可能性がある.

臨床研究
  • 橋田 裕毅, 大嶋 野歩
    2022 年 75 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    本邦では2018年4月よりロボット支援下直腸手術が保険収載され,その後,実施施設,実施件数は増加してきている.市中病院である当院での導入過程と,その短期成績について報告する.当院では,保険収載後速やかに実施するために,初回症例の開始半年前より準備をはじめ,ガイドラインの準拠,certificateの取得,手技の練習を行った.また手術の手順を定型化するためにマニュアルを作成した.安全にロボット支援下直腸癌手術を導入するためにプロクターを招聘し2018年5月より開始した.現在50例に達している.Clavien-Dindo分類IIIb以上の合併症はなく,順調なラーニングカーブで実施可能で,周到な準備と修練を行うことにより,安全に導入が可能であった.本稿では当院でのロボット支援下直腸手術の導入の経験を提示し,今後,導入される施設の参考になれば幸いである.

症例報告
  • 中村 健介, 岩本 博光, 松田 健司, 三谷 泰之, 水本 有紀, 中村 有貴, 竹本 典生, 阪中 俊博, 田宮 雅人, 山上 裕機
    2022 年 75 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    近年,下部直腸癌に対する肛門温存手術として括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection;以下,ISR)が行われるようになってきたが,術後5~10%の頻度で直腸脱を合併し,排便機能障害をきたすことがある.ISR後の直腸脱に対する術式として,大きく経肛門法と経腹法に分けられ,経肛門法は経腹法と比較し低侵襲だが再発率が高いとされている.今回,ISR後に発症した直腸脱に対して腹腔鏡下直腸固定術を施行し良好な結果が得られたので報告する.症例は70歳代女性.下部直腸癌に対して当科で腹腔鏡下ISRと回腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,4ヵ月後に回腸瘻閉鎖術を施行したが,最初の手術から5ヵ月後に全周性の約6cmの直腸脱を認めたため,腹腔鏡下直腸固定術を施行した.直腸脱の改善とともに排便機能の改善も認めた.術後は重篤な合併症なく経過,退院後も直腸脱の再発なく経過している.

  • 前田 頼佑, 安藤 拓也, 加藤 瑛, 松能 久雄
    2022 年 75 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    症例は75歳女性.右側腹部痛を主訴に受診し,同部位に圧痛を伴う腫瘤を認めた.腹部CT検査で上行結腸に約80mm大の腫瘤と口側腸管の拡張を認め,大腸腫瘍による腸閉塞と診断し入院となった.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に全周性2型腫瘍を認め,生検で低分化型充実性癌と診断した.術前検査では遠隔転移を認めず,腹腔鏡下右半結腸切除術D3郭清を施行した.病理組織検査はT3N0M0,退形成の強い小円形細胞からなる充実性腫瘍で,免疫染色にてvimentin陽性,cytokeratin CAM5.2陽性であったためrhabdiod featureを呈した低分化型腺癌と診断した.同腫瘍は組織学的にvimentinが陽性となり,発生・発育進展は不明とされ,極めて悪性度が高く予後不良であると報告されている.大腸でrhabdoid featureを認めることは稀であるため報告する.

  • 古賀 史記, 吉本 裕紀, 室屋 大輔, 石橋 慶章, 宗 宏伸, 森光 洋介
    2022 年 75 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性で主訴は下血.下部消化管内視鏡検査でS状結腸にIpポリープを認め,EMR目的に当院に紹介となった.EMRの切除標本の病理診断にてInvasive Micropapillary Carinoma(以下,IMPCと略記)成分を認め,深達度T1b,Ly1と診断されたため追加切除目的に当科紹介となった.単孔式腹腔鏡下S状結腸切除術(D3郭清)を施行し病理診断の結果,中間リンパ節に転移を認め,pStageIIIaであった.術後5ヵ月目,術後補助化学療法中に腫瘍マーカーの上昇を認め,CTにて腹膜播種再発と診断した.現在化学療法を含めた集学的治療中である.当院ではIPMCの成分を含む大腸癌を2013年からの7年間で16例経験し,高率にリンパ節転移を認めた.大腸のIMPCはリンパ節転移を高率に認め,リンパ節転移の可能性を十分に考慮したリンパ節の郭清度の検討が必要と考えられた.

  • 川原 大輔, 峯 由華
    2022 年 75 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    症例は50代女性,回腸,膀胱浸潤を伴う進行直腸癌の診断で,低位前方切除術,回腸合併切除,膀胱分切除術施行した.術後補助療法UFT/LV療法を行うも7年後に局所再発をきたし,再発部切除,子宮全摘術施行した.さらにその4年後に骨盤内局所再発をきたした.試験開腹術を行うも切除不能であった.FOLFOX療法およびFOLFIRI療法を行ったが副作用,PDにて治療継続困難となった.以降,サルベージラインFTD/TPI導入後3年目より局所進行が著明となり,急激な腫瘍マーカー上昇,下肢浮腫,疼痛の出現を認めるようになった.今回,新規にCapecitabineおよびBevacizumabを導入することで,腫瘍マーカーの著明な減少,症状改善を認め腫瘍制御が可能であった.導入後2年経過したが,初回手術から19年経過した現在も病勢を維持し治療継続中である.

  • 永易 希一, 中谷 晃典, 柵山 尚紀, 佐藤 剛
    2022 年 75 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー

    上行結腸に発症した腺扁平上皮癌を経験したため報告する.症例は74歳の男性で全身倦怠感のために受診し,著明な貧血を認め入院となった.精査の結果,上行結腸に全周性の2型腫瘍を認め,生検で扁平上皮癌と診断した.遠隔転移を認めなかった事から根治手術適応と判断し,当科で結腸右半切除術およびリンパ節郭清を行った.病理診断では,組織型は腺扁平上皮癌であり,進行度はpT3 N0 M0 StageIIであった.再発転移高リスク群と考え,術後補助化学療法としてUFT/LVの内服を行った.術後4年以上を経過し,再発転移なく良好に経過している.大腸原発の腺扁平上皮癌は非常に稀で,これまでの報告例のほとんどが診断時に高度進行例であり,予後不良であった.自験例は手術を含めほぼ良好な経過で長期生存が得られたため,文献的考察を含め報告する.

編集後記
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