日本大腸肛門病学会雑誌
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最新号
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主題I:大腸癌術前治療up-to-date
  • 河原 秀次郎
    2020 年 73 巻 10 号 p. 401-403
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    大腸癌の術前治療には,Surgical site infection(SSI)や縫合不全などの術後合併症を低下させるための治療,永久的人工肛門造設の回避などの術後quality of lifeを改善するための治療,術後遠隔成績を改善するための治療の3つがあり,それぞれの治療の現状について解説する.術後合併症を低下させるための治療としては,ERASで推奨していない機械的前処置を行っている施設はきわめて多く,米国CDCガイドラインで推奨している化学的前処置を行っている施設はほとんどなかった.閉塞性大腸癌に対する経肛門的イレウス管やSEMSの留置は,Bridge to Surgeryとして有用であり,人工肛門造設術の頻度を低下させている.進行直腸癌に対する術前化学放射線療法は局所再発率を有意に低下させるが,術後遠隔成績の向上の寄与については明らかではない.

  • 小川 真平, 板橋 道朗, 井上 雄志, 大木 岳志, 番場 嘉子, 腰野 蔵人, 中川 了輔, 谷 公孝, 相原 永子, 山本 雅一
    2020 年 73 巻 10 号 p. 404-409
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    閉塞性大腸癌は,“oncologic emergency”として緊急対応が必要な疾患である.閉塞性大腸癌に対して,人工肛門造設,Hartmann手術,transanal decompression tube(TDT)やstentによる減圧療法などが行われる.根治的切除を前提としたbridge to surgeryのための減圧療法は,症状を緩和し全身状態を改善させることによって周術期合併症を減少させ,また,耐術能や口側の同時性多発癌などの評価が行え,安全で根治的な待機手術が可能となる.短期成績はstent群に有利な点が多いが長期成績には差がなく,TDTはstentと同等の治療効果が期待できる.また,肛門に近い低位の直腸癌はTDTの良い適応である.TDT挿入による減圧療法は有効な手段であり,stent留置とともに習熟させておくべき手技である.

  • 松田 明久, 山田 岳史, 松本 智司, 進士 誠一, 太田 竜, 園田 寛道, 高橋 吾郎, 岩井 拓磨, 武田 幸樹, 上田 康二, 栗 ...
    2020 年 73 巻 10 号 p. 410-416
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    本邦で2012年に保険収載された大腸ステントは,閉塞性大腸癌治療に大きなparadigm shiftを起している.術前減圧目的の大腸ステント留置(bridge to surgery:BTS)は,良好な短期成績が報告されている一方,長期予後への懸念から,欧州消化器内視鏡学会(ESGE)のガイドラインにおいて否定的な推奨であった.しかし,近年,長期予後の安全性を示唆する報告が多数出され,2020年のupdate版では一転,推奨する形となった.今後,さらに広がることが予想されるBTS治療戦略であるが,長期予後のみならず,手術までの至適待機期間,ステントの種類,右側結腸癌での効果,経肛門的減圧管との比較など,解決すべきclinical questionは多い.本稿では,BTSのこれまでの治療成績を概説し,今後の展望も含めて述べる.

  • 上原 圭, 相場 利貞, 小倉 淳司, 村田 悠記, 佐藤 雄介, 服部 憲史, 中山 吾郎, 小寺 泰弘, 江畑 智希
    2020 年 73 巻 10 号 p. 417-423
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    本邦での遠隔転移を伴わない局所進行大腸癌の標準治療は手術+術後補助化学療法であるものの,その治療成績が満足できるものとはいい難い.一方,近年の著しい薬物療法の進歩を背景に,術前化学療法(NAC)は日常臨床の中で徐々に普及しているが,その長期成績は明らかでない.

    直腸癌に対する術前化学療法(NAC)は欧米では放射線化学療法(CRT)を省略することになり,高リスク症例では受け入れられ難い.しかし,術前治療を一般的に行って来なかった本邦では,NACは単に術後補助化学療法の前倒しであり,可能な施設に限りがあるCRTと比較して,多くの施設で受け入れられやすい.

    NACはCRTと比較して局所効果はやや劣るものの,生存率は遜色ない.今後は,リスク分類により個別化治療を提供していく必要がある.

  • 栁 秀憲, 別府 直仁, 岡本 亮, 仲本 嘉彦, 中島 隆善, 一瀬 規子, 相原 司, 上紺屋 憲彦
    2020 年 73 巻 10 号 p. 424-432
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    下部直腸癌に対する術前放射線治療として欧州で用いられてきた短期照射は切除可能症例に対して局所制御を改善させることが明らかにされているが,米国を中心に用いられてきた大線量(45-50.4Gy)長期照射+化学療法も局所制御に有用であり,両者を比較検討した臨床試験が行われた.それらによると治療コンプライアンス,経済性については短期照射が優れているが,局所制御率,全生存率,括約筋温存率には差を認めなかった.短期照射はその良好な治療コンプライアンスにより強力な化学療法と組み合わせることが可能であり,pCR率をさらに向上させることで生命予後改善につながることが期待されている.現在のNCCNのガイドラインではCRM陰性症例には短期長期のいずれの照射でも良く,CRMを考慮すべき症例,切除不能症例に対しては強力な全身化学療法を併用した短期照射あるいは長期照射を用いることが推奨されている.

  • 小西 毅
    2020 年 73 巻 10 号 p. 433-441
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    近年,直腸癌に対する術前化学放射線療法,さらに術前全身化学療法を加えるレジメンの開発により,病理学的完全奏効に至る症例が増えている.このような症例にも手術は標準治療して施行されてきたが,高率な合併症やストマ,さらに排便障害をはじめとする後遺症により,患者のQOLは著しく低下する.近年,術前治療後に臨床的完全奏効が得られた症例に対し,早急な手術を回避し経過観察するWatch and Wait療法が提唱され,欧米を中心に安全かつQOLの高い有効な治療法として注目されている.手術を前提としてきたこれまでの概念を大きく変える治療法であり,本邦においても正しい知識の普及と,適切な臨床導入が求められる.本項では直腸癌に対するWatch and Wait療法の適応や成績,今後の展開について解説する.

主題II:大腸NET 診断と治療の最前線
  • 小林 清典
    2020 年 73 巻 10 号 p. 442-451
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    本邦では大腸Neuroendocrine tumor(NET)の病変部位は直腸に多く直腸下部に好発する.50歳台に多く,性別は男性優位である.大腸NETに特徴的な自覚症状はない.直腸NETは10mm以下の小病変で,粘膜下腫瘍様を呈し無茎性隆起の場合が多い.内視鏡所見では,腫瘍は黄色調で,表面血管の拡張を伴う場合が多い.超音波内視鏡では,内部が低~等エコーで境界明瞭な腫瘤像として描出され,深達度診断に有用である.直腸NETは,肉眼型や腫瘍径が深達度やリンパ節などへの転移の危険性と密接に関係しており,亜有茎性の肉眼型や中心陥凹,腫瘍径が10mm以上の場合は,固有筋層以深への浸潤や転移の危険性が高まる.直腸NETは単発が多いが,多発する場合もあり注意が必要である.予後については,直腸NETより結腸NETのほうが不良との報告があるが,今後多数例での検証が必要であると考える.

  • 河内 洋
    2020 年 73 巻 10 号 p. 452-457
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    本邦の大腸NETは後腸系に属する直腸原発が90%以上を占め,Chromogranin Aの陽性率が低いなど,中腸系NETとは異なる免疫組織化学的特徴がある.2019年に発刊された消化器WHO分類にてNET亜分類の変更が行われ,旧版の増殖指数によるものから,細胞異型度や組織分化度などの組織学的所見と増殖指数を組み合わせたものへ変更された.これにより,増殖指数の高いNETと,ゲノム異常や薬物治療反応性の異なる高悪性度の神経内分泌癌とが明確に区別された.本邦の大腸癌取扱い規約では,以前から両者を明確に区別する立場をとっており,新WHO分類は本邦の立場に近くなった.近年では,増殖指数以外のバイオマーカーの報告も散見され,多因子の解析による,適切な治療戦略の確率が期待される.虫垂杯細胞カルチノイドは,新WHO分類では虫垂杯細胞腺癌に名称変更され,NETとは別の腫瘍であることが明確になった.

  • 斉藤 裕輔, 藤谷 幹浩
    2020 年 73 巻 10 号 p. 458-466
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    大腸,特に直腸の黄色調の粘膜下腫瘍をみた際にはneuroendocrine tumor(NET)は一番の鑑別にあがり,色素散布を行い超音波内視鏡検査を併用して診断することが望ましい.大きさ10mm未満で表面に陥凹や潰瘍を認めず,T1(SM)に留まっている病変は内視鏡切除の適応である.大腸NETに対する内視鏡切除法として通常のスネアポリペクトミーやEMRは垂断端陽性率が高率となるため適さない.2-チャンネル法,キャップ法(EMRC),結紮法(ESMR-L),さらにはESDによる切除が推奨される.施設や施行医の技量を十分考慮した上で,それぞれの内視鏡切除法の利点を生かした治療法を選択する必要がある.内視鏡切除後はリンパ節転移の危険因子について評価し,患者の年齢,全身状態・合併症を考慮した上で追加治療の是非を決定する.NETに対する内視鏡切除は適応病変において良好な成績と予後が報告されている.

  • 高橋 慶一, 山口 達郎, 夏目 壮一郎, 中守 咲子, 小野 智之, 高雄 美里, 中野 大輔
    2020 年 73 巻 10 号 p. 467-474
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    大腸NET(neuroendocrine tumor)の外科治療で局所切除を行うか,リンパ節郭清を伴う腸管切除を行うかしばしば術式選択に悩む.リンパ節転移の危険性が高ければ,後者の手術が必要になる.術前CTでの転移リンパ節は直腸癌に比べて小さい傾向があり,術前に転移リンパ節を的確に指摘することは困難である.そこで,リンパ節転移予測危険因子を国内のアンケート調査387例で検討し,腫瘍径10mm以上,表面陥凹あり,NETG2,pT2以深,脈管侵襲陽性の5つの因子が抽出された.これらの因子数別のリンパ節転移率は,予測危険因子なし:0.7%,1因子:19.1%,2因子:20.7%,3因子:61.9%,4因子:75.0%,5因子:75.0%で,3因子以上では高いリンパ節転移率を示した.大腸NETの外科治療ではこれら5つのリンパ節転移予測危険因子を念頭に置き,手術方法を決定することが推奨される.

  • 関口 正宇, 斎藤 豊, 高丸 博之, 松田 尚久
    2020 年 73 巻 10 号 p. 475-482
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    近年,直腸NETを中心に大腸NETを治療する機会が増えている.その結果,大腸NET治療後対応の重要性も益々高まってきている.しかし,追加治療やサーベイランスといった大腸NET治療後対応については,コンセンサスが得られていない項目が多く,日常臨床で苦慮する場面も少なくない.追加治療に関しては,粘膜下層にとどまる1cm未満の大腸NETについて,内視鏡的切除後に,脈管侵襲,NET G2,切除断端のどれかのみが陽性となってしまった場合に,特に外科的根治術の侵襲の大きい直腸において,追加手術をすべきかどうか悩む場面も少なからず経験される.サーベイランスについては,どのような対象にどのような方法で検査を進めていくか,質の高いエビデンスに基づくプログラムが世界的に存在していない状況にある.本稿では,大腸NET治療後対応(追加治療,サーベイランス)について,現状の問題点も含めて概説した.

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