日本大腸肛門病学会雑誌
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最新号
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原著
  • 吉原 輝一, 能浦 真吾, 谷田 司, 荻野 崇之, 浜部 敦史
    2019 年 72 巻 8 号 p. 489-493
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    人工肛門閉鎖術は術後合併症の頻度が高く,そのほとんどは手術創部感染(Surgical site infection,以下SSI)である.当院では,SSI対策として術後早期より創部洗浄を施行している.今回,人工肛門閉鎖術を施行した65例を対象として,創部洗浄とSSIの発生について検討した.SSIは7例(10.8%)に認められた.また,術後早期から積極的に創部洗浄を施行した34例では,SSIは1例(2.9%)であったのに対して,創部洗浄を施行しなかった31例では6例(9.4%)と,発症率に有意差が認められた(p=0.033).人工肛門閉鎖術後に,術後早期より創部洗浄を施行することは,創部感染の減少に寄与する可能性がある.

  • 錦織 英知, 石井 正之, 古角 祐司郎, 冨田 尚裕
    2019 年 72 巻 8 号 p. 494-502
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    直腸癌に対して肛門温存手術が行われた場合,術後排便機能障害による患者のQuality of Life低下が問題となる.今回われわれは直腸癌治療に携わる施設(兵庫大腸癌治療研究会参加施設)を対象に,直腸癌術後排便機能障害に対する診療現況について多施設アンケート調査を行うと共に,当院での術後排便機能障害に対する薬物療法と骨盤底筋リハビリテーション療法を中心とした多職種チームによる治療効果を検討した.32施設からのアンケート結果では84%の施設で術後排便機能障害をきたした患者を認めていたが,その評価や治療が十分とはいい難い状況であった.当院で直腸癌術後排便機能障害患者47人に対して治療を行った結果,排便回数や便失禁回数が有意に減少し,便失禁関連のスコアも有意な改善を認めた.術後排便機能障害は多職種スタッフがかかわる治療により改善する可能性が示唆され,今後施設間連携を含めた治療体系の確立が期待される.

症例報告
  • 操 佑樹, 市川 賢吾, 太和田 昌宏, 久米 真
    2019 年 72 巻 8 号 p. 503-508
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    上行結腸神経鞘腫を経験したので報告する.症例は59歳の女性.人間ドックを契機にして上行結腸に約5cm大の腫瘤性病変を指摘された.下部消化管内視鏡検査では同部位に粘膜下腫瘍を認めboringbiopsyを施行されたが確定診断には至らなかった.GISTを含めた粘膜下腫瘍の診断で腹腔鏡下回盲部切除術ならびに2群リンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査では,固有筋層を主体に紡錘形の腫瘍細胞が柵状・束状に増殖し,S-100蛋白陽性,α-SMA・CD34・c-kit陰性であり上行結腸神経鞘腫と診断された.大腸神経鞘腫は大半が良性と考えられ,術前に確定診断されればリンパ節郭清は不要であるため,可能な限り粘膜下生検を試みるべきである.しかし術前に確定診断に至らなければ,悪性腫瘍を念頭に置いてリンパ節郭清を伴う術式選択が妥当と考えられる.

  • 大井 悠, 奥山 隆, 鮫島 伸一, 竹下 惠美子, 大矢 雅敏, 藤本 佳也
    2019 年 72 巻 8 号 p. 509-515
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性.60歳時,左閉鎖リンパ節腫大を伴う直腸癌に対して腹腔鏡下括約筋間直腸切除術,左側側方郭清を施行した.側方郭清は鏡視下に直腸切除後,小開腹下に施行した.切除した側方リンパ節に転移は認めなかった.術後早期からCT検査で腫大した左閉鎖リンパ節残存を認めた.術後3年4ヵ月のFDG-PET検査で同リンパ節への集積を認め,3年7ヵ月で腹腔鏡下に左閉鎖リンパ節を再度郭清した.手術時間3時間18分,術中出血2g,合併症なく術後6日目に退院した.14ヵ月経過した時点で再発を認めていない.本症例は初回手術の小開腹下側方郭清が不十分であった可能性が高く,一方,再手術で行った腹腔鏡下側方郭清は良好な視野のもと確実な郭清操作が可能と考えられ,文献的考察を加えて報告する.

  • 太田 将仁, 新田 敏勝, 藤井 研介, 片岡 淳, 石橋 孝嗣
    2019 年 72 巻 8 号 p. 516-521
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳の男性で,排便時に出血を伴う肛門腫瘤を自覚し,当科受診となった.肛門縁に認める1.5cm大の腫瘤に対し,精密検査目的で局所麻酔下に腫瘍切除を行い,肛門管類基底細胞癌の診断を得た.患者の肛門温存希望は強く,NCCN腫瘍学臨床診療ガイドラインに準じ,追加治療として局所切除を選択した.しかし,切除断端陽性であったため,根治的化学放射線療法を施行し,現在術後4年で無再発で経過中である.本邦における肛門管類基底細胞癌の報告のうち深達度SMの初期病変として発見された症例は自験例を含めて4例のみである.類基底細胞癌には肉眼的特徴はなく,生検や手術標本の病理組織検索で判明することが多いため,早期診断が困難な例が多い.肛門疾患の診療においては本疾患をはじめとした肛門癌の合併を念頭におき,適切な治療方針をとる必要があると思われる.

  • 大浦 康宏, 庫本 達, 米田 浩二
    2019 年 72 巻 8 号 p. 522-527
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    症例は47歳女性で,肛門周囲膿瘍の診断で当院に紹介された.肛門3時方向に皮下腫瘤および瘻孔開口部を認め,腹部CTで直腸Raに全周性壁肥厚と肛門左側皮下に24mmの腫瘤を指摘され,下部消化管内視鏡検査で肛門縁7cmに全周性2型直腸癌と診断された.手術適応と判断し腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,肛門腫瘤は膿瘍としてドレナージを行った.術後縫合不全による汎発性腹膜炎を併発し,開腹洗浄ドレナージ+回腸人工肛門造設術を施行したが,再手術の際に肛門腫瘤からの白色組織を病理検査に提出した結果痔瘻癌と診断されたため,後日痔瘻根治術+肛門腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的所見では直腸癌と類似性を認め,免疫組織学的検査により転移性痔瘻癌と診断された.補助化学療法を術後半年間施行し,術後20ヵ月経過の時点で無再発生存中である.

  • 高橋 政史, 黒田 雅利, 工藤 泰崇, 池田 英二
    2019 年 72 巻 8 号 p. 528-533
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    今回われわれは盲腸癌術前にたこつぼ型心筋症を発症し,脳梗塞を合併した1例を経験したので報告する.症例は85歳女性.盲腸癌とそれに伴う腸閉塞の診断にて入院中に突然呼吸困難が出現した.心電図でV4-V6のST上昇,トロポニンI高値を認めたが,冠動脈造影検査では有意な冠動脈狭窄は認めず,左室造影で心基部の過収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断した.EFは保たれており,抗凝固療法は行わず,腹腔鏡下回盲部切除術を施行したが,術後に脳梗塞を発症した.

    たこつぼ型心筋症に血栓形成や脳梗塞などが合併する報告は散見されるが,周術期の報告は稀である.周術期にたこつぼ型心筋症を発症した症例では抗凝固療法を検討する必要がある.

  • 新田 敏勝, 太田 将仁, 片岡 淳, 藤井 研介, 米田 浩二, 石橋 孝嗣
    2019 年 72 巻 8 号 p. 534-538
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    症例は63歳の男性.直腸癌に対して腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行し,吻合が肛門縁から3cmと低位となったためdiverting loop ileostomyを造設した.

    術後4日目に排液が3,200mlとなるHigh-out stomaを呈し,さらにOutlet obstructionを発症したが,術後17日に改善したため食事を開始した.しかしながら術後20日には再度,Outlet obstructionを発症したため,早期に人工肛門閉鎖術を施行することとなった.Diverting stomaとしてloop ileostomyが造設されることが多くなってきている.それに伴いstoma outlet obstructionの発症が古くて新しい問題として注目されつつある.われわれ,外科医は,ileostomyの造設の際は,stoma outlet obstructionという腸閉塞が存在し,その原因の大部分は,ileostomyの造設時の手技に伴うものであると認識すべきである.

編集後記
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