日本冠疾患学会雑誌
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21 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 水野 友裕, 大井 啓司, 八島 正文, 八丸 剛, 渡邊 大樹, 黒木 秀仁, 藤原 立樹, 櫻井 翔吾, 酒井 健司, 荒井 裕国
    2015 年 21 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    当院で行われた左主幹部病変を持つ症例に対する単独冠動脈バイパス術121 例(Off-pump 率89.3%)の術後成績を追跡し,SYNTAX trial(on-pump 率85%)の結果と比較検討した.平均末梢吻合枝数3.7 本,内胸動脈―左前下行枝バイパス(96.7%)で,術後5 年での全死亡率3.8%,心筋梗塞発生率5.0%,再血行再建率6.3%,脳合併症4.2%(周術期0%),MACCE 発生率12.8%であった.完全血行再建を達成しうるOff-pump CABG は,SYNTAX trial の結果に比し周術期脳合併症発生が見られず,再血行再建率が顕著に低く,全死亡率も低値で,左主幹部病変を含む複雑冠動脈病変に対する第一治療選択となりうると考えられた.
  • 岩瀬 有里子, 古木 優帆, 重城 健太郎, 齊藤 克己, 竹内 靖夫
    2015 年 21 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/05/01
    ジャーナル フリー
    心疾患の再発予防には患者自らが生活習慣を改善することが肝要である.今回われわれはPCI(経皮的冠動脈インターベンション)を行った患者に対し入院中に生活指導を行い,自宅に持ち帰り自身で読み返すことができるパンフレットを用いた生活指導の有効性について検討した.当院でPCI 治療を行った連続43 例を,生活指導を行う群と行わない群に無作為に割り付け,両群間の患者背景,バイタルサインおよび血液検査結果について退院時,1 カ月後および3 カ月後の再診時の数値を比較した.その結果,介入群において1 カ月後の収縮期血圧は有意に低値となり,また1 カ月後の体重は有意に減少した.このことから,PCI 後の患者においてパンフレットを用いた退院後の生活指導が冠危険因子に関与する生活習慣の改善をもたらした可能性が示唆された.しかしながら,3 カ月後にはすべての項目で両群間に有意差が認められず,入院中の指導だけではなく外来での継続的な看護介入が必要であると考えられた.
  • 中原 嘉則, 吉田 成彦, 小坂 眞一, 金村 賦之, 山岸 俊介, 栃木 秀一, 上村 尚, 山本 洋輔, 中村 智一, 岩倉 具宏
    2015 年 21 巻 3 号 p. 191-194
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/08/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術後の心房細動の発症は,脳梗塞などの合併症を引き起こし在院日数や生存率にも関与する.当院の単独心拍動下冠動脈バイパス術264 例を対象に,術後心房細動と左室拡張能の関連を検討した.左室拡張能については経胸壁心臓超音波検査でパルスドプラ法による左室流入血流速波形の拡張早期波高(E: m/s)と,組織ドプラ法による拡張早期僧帽弁輪速度(e’: cm/s)を用いて評価し,E/e’>8 を拡張障害と定義した.術後心房細動を合併した80 例(30.3%)をaf 群,その他を非af 群(184 例)として比較検討を行った.多変量解析で心房細動発症の独立予測因子は,術前拡張障害(OR: 2.29,p<0.01)と年齢(OR: 1.09,p<0.01)であった.心拍動下冠動脈バイパス術後の心房細動発症において,左室拡張能は年齢とならび重要な因子であった.術前の左室拡張能を評価することで術後心房細動のリスクを予期し,合併症の軽減に貢献できる可能性が示唆された.
  • 永田 義毅, 徳久 英樹, 本道 俊一郎, 木下 正樹, 油谷 伊佐央, 平澤 元朗, 丸山 美知郎, 臼田 和生
    2015 年 21 巻 3 号 p. 195-202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    【背景】抗血小板剤の作用が減弱した冠動脈疾患症例は心血管イベントの発生率が高く予後不良である.慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)症例では,抗血小板剤の効果が減弱することが報告されている.【目的】今回我々は冠動脈疾患を有する抗血小板剤2 剤併用療法の日本人における腎機能と抗血小板作用の関連について検討したので報告する.【方法】対象は低用量アスピリンとクロピドグレル75 mg/日を30 日以上投与されている冠動脈疾患198 例.Control 群(eGFR≥60 ml/min/1.73 m2, N=118)と中等度CKD 群(eGFR 30–60 ml/min/1.73 m2, N=65),高度CKD 群(eGFR<30 ml/min/1.73 m2, N=15)の3 群に分類した.血小板凝集機能検査(光透過光量法)を用いて最低凝集惹起濃度(platelet aggregately thresould index; PATI)を測定し,3 群間で比較検討した.【成績】平均eGFR は,Control 群77.2±14.2 ml/min/1.73 m2,中等度CKD 群48.3±8.5 ml/min/1.73 m2,高度CKD 群9.9±7.8 ml/min/1.73 m2 であった.ADP を惹起物質としたPATI はControl 群(3.66±0.73 µM)に比して,中等度CKD 群(3.28±0.99 µM)と高度CKD 群(3.03±1.32 µM)が有意に低値であった(p<0.05).【結論】中等度および高度腎機能低下症例ではクロピドグレルの効果が減弱した症例が多いことが認められた.腎機能低下例ではクロピドグレルによる抗血小板剤の効果が減弱している例がいるため,注意が必要である.
症例報告
  • 大島 暢, 矢嶋 純二, 及川 裕二, 松野 俊介, 嘉納 寛人, 深町 大介, 村田 伸弘, 相澤 忠範
    2015 年 21 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    60 歳代男性.AMI 発症しLAD にZES を留置された.AMI 発症17 日後,再度STEMI 発症し当院搬送された.STEMI による心不全に対し気管挿管,IABP 挿入後,緊急CAG を行った.LAD ステント内のSAT を認めBES を留置した.帰室後VF storm となりPCPS 管理を行った.血行動態が安定しPCPS,IABP を離脱し軽快した.第19 病日VF が出現しステント再閉塞を疑い,CAG でLAD のステント内のSAT を認め,IABPを挿入下でBMS を留置した.帰室後,再びVF storm となりPCPS 管理を行った.心不全治療にてPCPS,IABP を離脱し軽快した.第35 病日ICD 植込みを行い転院した.予後不良であるステント血栓症を繰り返し2 度の心室細動を起こしたが,速やかなPCI を行い,心肺補助循環を用い救命できた1 例を経験した.
  • 大塚 信一郎, 稲葉 美紀, 新藤 英樹, 田村 英俊
    2015 年 21 巻 3 号 p. 208-213
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は,66 歳女性.40 歳より労作時の胸部圧迫感を自覚.44 歳時に運動負荷検査陽性であったため,冠動脈造影を施行.結果,左主幹部入口部に75%狭窄を認めた.この時点で本例は冠危険因子に乏しく,原因不明の孤立性冠状動脈入口部狭窄と考えられた.薬物治療に抵抗性であったため,冠動脈バイパス術を施行(左内胸動脈グラフトを左前下行枝に吻合し,伏在静脈グラフトを左回旋枝に吻合).その後,症状なく経過したが,労作時の胸部圧迫感が再燃し,66 歳時に冠動脈造影を施行.結果,左主幹部入口部は90%狭窄に進行.バイパスグラフトはともに高度狭窄を呈していた.血行再建が必要と判断し,左主幹部に対し経皮的冠インターベンションを施行し症状は改善した.本例は長期に渡り経過を追うことができた孤立性冠状動脈入口部狭窄の1 例であり,冠動脈バイパス手術および経皮的冠インターベンションによる血行再建を要した.
  • 井手 亨, 阪越 信雄, 樋口 卓也
    2015 年 21 巻 3 号 p. 214-217
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術後にアミロイドーシスが明らかになった稀な症例を経験したので報告する.症例は79 歳の男性.潰瘍性大腸炎・腸閉塞の既往があった.呼吸困難のために当院に救急入院し,心不全の診断で加療が開始された.数カ月前から眼周囲・口腔内粘膜下に出血斑を認め,栄養状態は不良で褥瘡を多数認めていた.入院翌日の夜に心室細動・心室頻拍が頻発した.冠動脈造影検査で二枝病変を認めたため緊急冠動脈バイパス手術を施行した.術後,黒色便と貧血が出現し,下部消化管内視鏡検査を施行した.S 状結腸を中心に易出血性で浮腫上の暗赤紫色の内膜を認めたため生検した.腸アミロイドーシスとの結果が報告され,心臓MRI でも心アミロイドーシスを疑う結果であった.詳細な病型判定を予定していたが,術後43 日目に突然の房室ブロックから死亡した.
画像症例報告
  • 成瀬 瞳, 坂本 吉正, 長堀 隆一, 儀武 路雄, 松村 洋高, 井上 天宏, 中尾 充貴, 橋本 和弘
    2015 年 21 巻 3 号 p. 218-222
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    [早期公開] 公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    先天性冠動静脈瘻は先天性心疾患において,心臓病の精査,他病変への心臓手術時の検査での発見が多く,単独で手術適応となることは極めて珍しい.また,広域な年齢層に見られ,主心疾患による症状と共に多彩な症状を呈し,確実な診断や,症状への関与の程度を判断した適切な治療を要する.手術は比較的容易だが,病態が多彩で術前に心臓カテーテル検査等の十分な検討を要する.中でも非侵襲的な画像検査で,術前診断,術後評価になりうるMultidetector CT (MDCT) の役割は大きい.2007 年〜2011 年に当施設で先天性冠動静脈瘻単独手術適応の成人3 症例を対象に,MDCT 像と術中所見を比較・検討した.全例において冠動静脈瘻の起始,走行,流出部が正確に描出され,術中所見と一致した.冠動静脈瘻閉鎖に加えて1 例に冠動脈バイパス術と三尖弁形成術を,他の1 例に肺静脈隔離術を行い,結果は全例良好であった.
特集:冠動脈疾患における心房細動
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