浄水場に用いたSUS304ステンレス鋼管の腐食原因を究明するため, 腐食発生箇所を調査し, 鋼管中の水質と鋼管内面の付着物を分析した. また, 浄水中における鋼管の自然電位を測定し, 腐食部の形状と形態などを走査型電子顕微鏡にて詳細に観察した. 腐食は管胴部の溶接部に多数観察されたが, 管胴部の母材およびフランジ部にも発生した. これらの腐食のほとんどはすきま腐食であるが, 一部はステンレス鋼の内部に進行し, 孔食状を呈していた. 鋼管中の水は, 塩化物イオン濃度が30ppm以下で比較的マイルドな水質であるが, 亜塩素酸ナトリウム殺菌剤の注入により, 原水中の微量なMn
2+が酸化され, MnO
2として析出し, 鋼管内面に付着した. MnO
2の鋼管内面への付着は, 鋼管の自然電位をSUS304の腐食すきま再不動態化電位以上に上昇させたため, 鋼管の腐食を引き起こしたと考えられる. また, 今回の鋼管の腐食には微生物が関与していなかったが, 微生物腐食部と同様な形態が観察された. この結果より, 腐食部の形状と形態のみから微生物腐食を判断することが困難であると分かった.
抄録全体を表示