Zairyo-to-Kankyo
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55 巻, 10 号
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展望
解説
  • ―水素侵入に影響する因子―
    南雲 道彦
    2006 年 55 巻 10 号 p. 430-440
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/28
    ジャーナル フリー
    材料中への水素の侵入に及ぼす環境因子を電極表面の電気化学反応に注目してまとめた. 水素侵入促進材, とくにH2Sが作用する電気化学条件をそのメカニズムに関連させながら紹介した. また, 水素侵入に対する隙間腐食や孔食などの局部腐食, 乾湿繰り返しを伴う大気腐食の効果をまとめた. さらに, 応力を付加しながらの分極及びその逆における電気化学反応と塑性変形との相互作用を, 水素を含む電極表面層が材料内部の転位のダイナミックスに及ぼす影響を示唆するものとして指摘した.
論文
  • 小池 充, 広谷 卓也, 赤尾 昇, 原 信義, 杉本 克久
    2006 年 55 巻 10 号 p. 445-451
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/28
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物の地層処分に使用されるオーバーパック容器の材料としては, 炭素鋼が最も有力な候補であると考えられている. 本研究では, 地層処分環境における炭素鋼の耐食性に及ぼす合金元素の効果を明らかにすることを目的として, pH 8からpH 13までの塩化物含有アルカリ性模擬ベントナイト接触水を含む圧縮ベントナイト中で市販の炭素鋼および各種合金元素を1種類含む低合金鋼9種類の腐食試験を行った. その結果, pH 8から12の溶液を含む圧縮ベントナイト中で最も耐食性を向上させる合金元素はNiであることが分かった. 次いで良いのはAlであった. Ti, Cr, Si, Cu, Nbの添加はごくわずか耐食性を向上させた. 逆に, Moの添加は耐食性を低下させた. pH 13ではMoおよびSi添加鋼を除くいずれの試料も不働態化し, 合金元素の種類による耐食性の違いは小さかった. いずれの試料についてもpH 8から12の環境中では腐食生成物層としてFeCO3層の生成が認められた.
  • 北川 尚男, 玉田 明宏, 若菜 弘之, 伊藤 壮一, 朝倉 祝治
    2006 年 55 巻 10 号 p. 452-457
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/28
    ジャーナル フリー
    電気防食された海洋鋼構造物を模擬した試験体を用いた暴露試験の結果について報告する. 暴露試験には, 飛沫帯から海水部上部に耐海水ステンレス鋼, 海水部に炭素鋼を適用した試験体を用いた. 試験開始5カ月後の海水部に流入するカソード電流は, 炭素鋼とほぼ同じ値であった. 一方, 満潮面近傍の耐海水ステンレス鋼に流入するカソード電流は, 炭素鋼よりも少なかった. そして, 大潮の満潮面に流入するカソード電流は, 他の部分よりも大きかった.
  • 本田 明, 加藤 卓, 建石 剛, 今北 毅, 増田 薫, 加藤 修, 西村 務
    2006 年 55 巻 10 号 p. 458-465
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/28
    ジャーナル フリー
    放射性廃棄物を地下に処分したときの炭素鋼などの廃棄物含有金属と廃棄物に含有されるNO3-の化学的相互作用を評価するために, 閉鎖系で炭素鋼とNO3-を共存させ, NO3-の化学的変遷挙動及び水素ガス発生挙動を検討した. なお, 検討するpH範囲は, セメント系材料中を想定し, 10.0~13.5とした.
    pHが12.5の条件での炭素鋼のカソード分極測定において, NO3-あるいはNO2-の共存する条件でのカソード反応は, Tafel型の電位依存性を示すことがわかった. NO2-濃度1.0mol/dm3の場合及びNO3-濃度1.0mol/dm3の場合とNO3-もNO2-も含まない場合の同一電位での電流密度を比較すると, それぞれおよそ2~3桁程度及び1~2桁程度大きいにもかかわらず, 炭素鋼の腐食速度は, 硝酸塩の濃度の影響は受けないかむしろ低下するという結果を得た. これは, 腐食反応系がアノード支配型であることを示唆している. 炭素鋼の腐食に伴うNO3-の還元過程は, NO3-→NO2-→NH3なる逐次反応と考えられる. また, アノード支配型の腐食反応におけるカソード過程として, NO3-の還元反応は, 水の還元反応と競合すると考えられる. NO3-濃度が高い場合 (e.g. 1.0mol/dm3) には, NO3-の共存しない場合と比較して, 腐食に伴う水素発生速度が1/100から1/500と非常に小さくなった. NH3の生成速度は, NO3-濃度が1.0×10-3~1.0mol/dm3の範囲でほとんど影響はなかった.
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