マウンドレス型孔食を再現するために,15種類の人工淡水中で銅管を1年間自然浸漬した.幾つかの試料では,浸漬開始から約1週間で表面の大部分あるいは一部が茶褐色に変色した.淡水中に約1週間浸漬することで形成されるそのような茶褐色領域を銅の「初期皮膜」と呼ぶ.初期皮膜の形成は,塩化物イオンを含む試験水中で顕著であった.1年間の浸漬試験で,マウンドレス型孔食が発生した試験水は,40 mg SiO
2/L,50 mg SO
42−/L, 10 mg Cl
−/L,10 mg HCO
3−/Lを含んでいた.孔食発生箇所は初期皮膜の境界であった.シリカと塩化物イオンを含む試験水中に銅管を1週間浸漬することで,初期皮膜を意図的に生成させた.カソード還元により初期皮膜は亜酸化銅からなりその厚さは約400 nmと判明した.初期皮膜付き銅管と受入まま銅管とのガルバニック対でガルバニック試験を行った結果,初期皮膜付き銅管から受入まま銅管へとガルバニック電流が流れた.この結果より,初期皮膜境界上に発生したマウンドレス型孔食は,初期皮膜部と初期皮膜が存在しない部分とのマクロセル形成によるものと考えられる.
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