Zairyo-to-Kankyo
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60 巻, 2 号
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展望
解説
  • ―メタルダスティング及び水素環境脆化―
    工藤 赳夫
    2011 年 60 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2011/02/15
    公開日: 2011/07/23
    ジャーナル フリー
    エネルギー関連機器材料の材質設計に基づく耐食性の向上について二例紹介した.COを含有するガス雰囲気でしばしば生じるメタルダスティングはGTLプロセス装置材料にとって重要な腐食問題である.その防止には,COガスを遮断する,保護性の高い酸化皮膜を生成するために,Ni基合金中のCr量を高めることが必要であるが,それに加えて,Cu添加が極めて有効である.添加したCuは合金表面に偏析し,吸着CO分子の解離を抑制,その結果,酸化皮膜の欠陥部でのC侵入を抑制するためである.
    高圧水素は燃料電池用水素の貯蔵・輸送にとって有効な媒体であるが,高圧水素はさまざまな材料に水素環境脆化を生じさせる.300番台のオーステナイト系ステンレス鋼の水素環境脆化感受性はクラック先端での加工誘起マルテンサイト変態の程度に大きく依存する.それ故,高い抵抗性はその変態を最小化する合金設計によって得ることができる.
速報論文
論文
  • 徳武 皓也, 伊藤 大輔, 横山 隆, 岡崎 慎司, 大谷 貴彦, 河内 光洋, 中里 道明, 東山 隆男
    2011 年 60 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2011/02/15
    公開日: 2011/07/23
    ジャーナル フリー
    ダクロタイズド®処理皮膜は自動車用小物部品における防錆皮膜として汎用的に用いられている.本紙では,2種類のダクロタイズド®処理皮膜に対して90日間にわたる3 wt%NaClへの浸漬試験を行い,その防食性能を様々な電気化学測定を用いることで,定量的に評価した.試験片として,軟鉄に亜鉛-アルミニウムフレークをクロムバインダーで固定化した皮膜を塗装したものを用いた.この皮膜のカソード防食保持期間はおよそ30日程度であることが腐食電位モニタリングから明確となった.また,インピーダンス測定において,浸漬75日における低周波数の位相θに大幅な変化が見られた.この変化と同時に赤さびの発生が観察された.一方,3%ホウ素化合物を含んだ皮膜では,亜鉛による犠牲アノード作用が,90日間保持されていた.インピーダンス測定における絶対値|Z|は,ホウ素添加されていないものと比較して,約2倍の値を示した.
    分極曲線の経時変化追跡から,亜鉛の腐食生成物が皮膜中に堆積することで膜を安定化させることが明らかとなった.なお,浸漬14日程度で皮膜は安定化した.さらに,ホウ素化合物は亜鉛の過度の溶解を抑制するだけでなく,長期間の浸漬において皮膜のバリヤー特性をも改善させることも明らかとなった.
  • 佐藤 芳幸, 山下 光, 原 基
    2011 年 60 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2011/02/15
    公開日: 2011/07/23
    ジャーナル フリー
    NbAl3金属間化合物の酸化挙動を1073および1173 Kにおいて調査した.特にペスト酸化現象の抑制に及ぼすNaCl蒸気濃度の効果に注目した.NaCl蒸気を含まない酸素中でのNbAl3の質量増加量は非常に大きく,ペスト酸化現象が見られた.一方,数十vol. ppmのNaCl蒸気が含まれた酸素中では,実験時間範囲内で質量増加量は抑えられ,123ppmのNaCl蒸気を含む酸素中に至っては質量増加がほとんどなかった.さらに,質量増加量が0.05kg m-2以下のときには,ペスト現象は見られなかった.酸化後の試料のX線回折およびSEM観察によれば,ペスト現象の起こらなかった試料は比較的緻密なAl2O3の皮膜に覆われていたが,ペスト現象を起こした試料は主にAlNbO4から成るスケールを生成した.熱力学的考察から,NaCl蒸気は雰囲気中に微量のCl2ガスを発生させ,合金/スケール界面の酸素ポテンシャルが低い場所ではAlを選択的に塩化し,次いで,生成したAlCl3は酸化されて保護性のAl2O3を生成することが考えられた.このAl2O3生成メカニズムがペスト酸化抑制モデルとして提案された.最終的にこれらの結果より,雰囲気に微量のNaCl蒸気を添加することによってNbAl3のペスト酸化を抑えられることが明らかとなった.
  • 山中 秀文, 野中 英正
    2011 年 60 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2011/02/15
    公開日: 2011/07/23
    ジャーナル フリー
    吸収冷温水器の再生器に使用されている炭素鋼に関して,その初期の表面状態やエージング時の昇温速度が腐食に及ぼす影響について検討するために,濃厚臭化リチウム水溶液中において,炭素鋼の電気化学試験を行った.エージングとは吸収冷温水器の起動時にインヒビターとして不動態化剤を含む臭化リチウム水溶液中で加熱することで,部材を不動態化するための工程である.
    その結果,炭素鋼の表面に存在する黒皮の欠陥部に,ある程度以上の深さをもったさびが存在する場合や,金属と金属のすき間部が存在する場合は,それらの部位と健全な黒皮部とのマクロセルが,エージング時もしくはその後においても継続して形成される可能性があることがわかった.
    一方,エージング時の昇温速度が小さいほど,上述で示したマクロセル電流が大きくなり黒皮の欠陥部の腐食量が大きくなる可能性があることが分かった.
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