ステンレス鋼板の切断端面は表面に比べて耐食性に劣り,塩化物環境下で発銹を生じる場合がある.しかしながらこの端面発銹の要因は不明な点が多く,電気化学的な特性についても十分に研究されていない.
SUS304(18Cr-8Ni)およびSUSXM7(18Cr-9Ni-3Cu) の冷延鋼板から切り出した試験片について,圧延方向に直交する端面(T端面)および圧延方向に平行な端面(L端面)の発銹挙動を塩水噴霧試験および浸せき試験により評価した.その結果,せん断加工による端面のうち,T端面の方がL端面よりも発銹しやすいことがわかった.このせん断加工面を切削加工により除去し仕上げることで,発銹が軽減し耐食性は大きく改善された.
熱延鋼板のLおよびT断面の腐食挙動の差異についてアノード分極測定による検討を行った結果,T断面ではL断面に比べて卑な電位で徐々に電流密度が立ち上がる様子が観察された.アノード分極後の孔食発生部のSEM観察や断面EPMA分析から,圧延方向に線状に伸びた非金属介在物(MnSなど)の存在が,孔食の発生および成長に影響しているものと推察した.
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