原子力発電プラントに使用されているAlloy690は,実機環境で長期間使用するとNi
2Mなどの金属間化合物が長範囲規則化 (LRO) する可能性が指摘されているが,Ni
2MのLROが耐SCC性に与える影響を実験的に評価することは困難である.本研究では,Ni
2MのLROが生じた際の影響を評価するための供試材を得ることを目的として,Alloy690の合金組成を基にNi
2Mの相安定性を過度に高めた合金 (Ni
2M安定化合金) に対して500℃及び550℃において最長10000 hの等温熱時効を施し,組織観察や硬さ試験を行ってAlloy690の結果と比較した.500℃において1000 h以上の等温熱時効を施したNi
2M安定化合金にはビッカース硬さの大幅な上昇が確認され,TEM観察の結果,これはNi
2MのLROに起因するものと考えられた.本研究で得られた供試材にSCC試験を行うことにより,Ni
2MのLROが耐SCC性に与える影響を実験的に評価することが可能であると考えられる.
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