Zairyo-to-Kankyo
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62 巻, 2 号
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展望
速報論文特集−第59回材料と環境討論会
  • ―予備浸漬処理による磁気ディスクの耐食性向上―
    馬渕 勝美, 天羽 美奈, Quing Dai, Bruno Marchon
    2013 年 62 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    パターンドメディアの耐食性向上を目的に,予備浸漬処理によるディスク上への耐食性皮膜の形成法に関して検討した.最も耐食性が改善する最適浸漬処理条件は,ベンゾトリアゾール1.0 wt%,過酸化水素3%を含有するホウ酸塩水溶液への30分間の浸漬である.この処理により,中性環境でのCo合金の耐食性は20倍以上向上する.過酸化水素を共存させない場合は,耐食性の改善の度合いは小さい.この予備浸漬処理を実ディスクの構成材である記録層およびキャップ層に施した後,65℃,90%RHの恒温恒湿環境に暴露した場合でも,これらの層の耐食性は維持される.予備浸漬処理を施したディスク表面には,耐食性をもたらすBTA由来の窒素基が導入される.過酸化水素添加によるBTA層形成が促進される理由は,HSAB則で説明できる.
  • ―耐食性向上に向けた磁気ディスク用潤滑剤の合成と特性評価―
    天羽 美奈, 馬渕 勝美, 吉田 博史, Quing Dai, Bruno Marchon
    2013 年 62 巻 2 号 p. 52-55
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    次世代メディアの候補であるビットパターンドメディア(BPM)は,磁性/非磁性材料の微細加工を施すことから耐食性確保が困難であり,磁性層の腐食に対して防食性を有する潤滑剤の開発が必要である.耐食性機能を有するベンゾトリアゾール基を末端部に導入した新規潤滑剤を考案,合成を行い,潤滑剤の防食性効果を検証した.更に,潤滑膜特性評価の結果から,得られた潤滑剤(膜)は耐熱性に優れており,BPMのみならず熱アシスト磁気記録(TAR)用としても有望であることを見いだした.
  • 島田 隆登志, 大谷 良行, 本川 幸翁, 兒島 洋一, 武藤 泉
    2013 年 62 巻 2 号 p. 56-60
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    大気環境を模擬できる定露点型サイクル試験中の1100アルミニウム合金の腐食挙動における付着塩の影響をNaCl,MgCl2,およびCaCl2を用いて検討した.1100アルミニウム合金の腐食深さは,付着塩に依存し,MgCl2>CaCl2>NaClの順に大きくなった.一方,浸漬試験における腐食深さは,比較的希薄な溶液ではカチオン種に依存しないが,濃厚溶液中ではカチオン種に依存した.他方,分極曲線において,濃厚溶液中のカソード反応にカチオン種の顕著な影響が見られた.これらのことから,大気腐食における付着塩は,試料表面の濡れ時間のみならず,濃厚溶液となる潮解湿度付近におけるカソード反応にも影響を及ぼすことが示唆される.
  • 東 康弘, 阪田 晴三, 澤田 孝, 宮田 恵守
    2013 年 62 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    屋外の電気通信用設備に用いられる金属製設備材料の寿命は,全面腐食と見なせる場合には腐食速度から想定することが出来る.腐食速度は,材料の置かれた地域における気象因子や大気汚染因子により異なるが,同一地域であっても雨がかりの有無によって異なる.今回,鉄および亜鉛について雨がかりの有無による腐食速度の違いの評価を試みるべく,沖縄県名護市にFe/Agガルバニック対およびZn/Agガルバニック対の2種のACMセンサーを設置し,それぞれ雨がかりの有無によるセンサー出力の違いについて調べた.直接雨がかりのある面に設置したFe/Ag対ACMセンサーは雨がかりのない面に比して降雨後すぐに応答し,その後も安定的な出力を示した.安定的な水膜の形成の時期が腐食速度の評価に大きく影響することが窺われる.なお,既存の式を用いて得られた雨がかりのない面における腐食速度は0.09 mm/yearとなり,沖縄県西原町におけるシェルタ試験での報告値と同等であった.Zn/Ag対ACMセンサーでは,雨がかりの有無により積算電気量の時間変化は全く異なる傾向を示した.特に雨がかりのある場合,Zn/Ag対ACMセンサーの出力は経過日数とともに低下する傾向があり,直接,腐食速度の評価に結びつけることが困難であった.
  • 佐藤 直宏, 堀内 寿晃
    2013 年 62 巻 2 号 p. 66-69
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    原子力発電プラントに使用されているAlloy690は,実機環境で長期間使用するとNi2Mなどの金属間化合物が長範囲規則化 (LRO) する可能性が指摘されているが,Ni2MのLROが耐SCC性に与える影響を実験的に評価することは困難である.本研究では,Ni2MのLROが生じた際の影響を評価するための供試材を得ることを目的として,Alloy690の合金組成を基にNi2Mの相安定性を過度に高めた合金 (Ni2M安定化合金) に対して500℃及び550℃において最長10000 hの等温熱時効を施し,組織観察や硬さ試験を行ってAlloy690の結果と比較した.500℃において1000 h以上の等温熱時効を施したNi2M安定化合金にはビッカース硬さの大幅な上昇が確認され,TEM観察の結果,これはNi2MのLROに起因するものと考えられた.本研究で得られた供試材にSCC試験を行うことにより,Ni2MのLROが耐SCC性に与える影響を実験的に評価することが可能であると考えられる.
論文
  • 柴田 俊夫, 渡邊 正敏, 谷口 直樹, 清水 亮彦
    2013 年 62 巻 2 号 p. 70-77
    発行日: 2013/02/15
    公開日: 2013/08/17
    ジャーナル フリー
    酸素欠乏還元性環境中性水溶液環境中の炭素鋼はH2Oと反応してH2を発生し表面に腐食皮膜を生成する.腐食速度は腐食に伴って生成する腐食皮膜中を反応物質が拡散する速度によって決定される.腐食プロセスに関与するいくつかの拡散種の拡散定数は文献から知ることができた.しかしながら鉄酸化物中のH2Oの拡散定数は見いだすことができなかったので,適切な仮定を用いて推定した.物資移動論モデルによって炭素鋼の腐食速度をシミュレーションした.腐食皮膜ポア中をH2OおよびFe2+が液相拡散するモデル,および腐食皮膜中のH2O固相拡散モデルについて,表計算ソフトのExcelを用いてシミュレーションを行った.腐食電流密度と腐食減肉厚さの時間的変化やそれらのpH依存性および温度依存性を検討した.シミュレーション結果を実測値と比較した結果,腐食皮膜中のH2O固相拡散が酸素欠乏環境における炭素鋼の腐食速度を決定していることが示唆された.
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