オーバーパック候補材料である炭素鋼の酸素欠乏地下水中での腐食速度を推定するための基礎研究として,Feを大気中で高温酸化することで作製した酸化皮膜中のD
2Oの拡散係数を決定することを試みた.Fe板を大気中で573 K,723 Kまたは873 Kで高温酸化させて酸化皮膜を作製した.X線回折およびSEM観察による皮膜性状を確認した後,皮膜にD
2Oを接触させ,5184 ksまでの種々の時間保持することでD
2Oを浸透させた.D
2Oを浸透させた試料に昇温脱離ガス分析試験を行い,皮膜中の浸透D
2O量を測定した.573 Kおよび723 Kで酸化させた試料にはFe
3O
4単層皮膜が,873 Kで酸化させた試料にはFe
3O
4とFe
2O
3の二層皮膜が確認された.これらの皮膜へのD
2O浸透試験の結果から,D
2O浸透量がD
2O浸透時間の平方根に対して直線関係を示すこと,ならびに長時間浸透させるとD
2O浸透量が定常値を示すことがわかった.これらの関係からFickの第二法則に基づいて推定された各種酸化皮膜中のD
2Oの見かけの拡散係数は,Fe
3O
4皮膜では9.5×10
-13 cm
2.s
-1,Fe
2O
3皮膜では5.4×10
-13 cm
2.s
-1から2.1×10
-12 cm
2.s
-1であった.
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