Zairyo-to-Kankyo
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65 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
展望
解説
論文-材料と環境2016速報論文特集-
  • 岩本 達志, 鈴木 靖庸, 弥富 政亨, 中島 朋広, 赤嶺 健一
    2016 年 65 巻 11 号 p. 450-453
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    電着被覆工法は,鋼構造物の海中部防食方法の一つであるが,この工法では,原理上,適用環境における海水の組成や水温,海象環境が,被膜の組成や防食性能にも影響を及ぼすと考えられる.よってここでは,国外で実海域試験を実施し,国内における試験データとの比較を行うことで,電着被覆工法の環境依存性について論じた.その結果,本試験環境は,国内の実海域と比較して,pHや塩濃度が低い汽水環境であったため,被膜の組成が,国内での試験結果とは,やや異なるものとなったが,被膜の生成効率や防食性能に関しては,同等の結果が得られた.さらに微弱な陰極通電を併用することで,この被膜及び防食性能を,長期にわたって維持可能なことが示唆される結果も得られたため,港湾のような静水環境であれば,海水の組成が異なる環境においても,ラボ試験での結果と同様に,電着被覆工法が防食工法の一つとして有効であることが示されたといえる.

  • 篠 靖夫, 鈴木 敏夫, 久保 顕一, 基 昭夫
    2016 年 65 巻 11 号 p. 454-457
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    都市ごみ焼却炉のボイラ蒸気条件は,近年,ごみからのエネルギー回収効率向上に向けて高温・高圧化へと進んできた.その結果,今日,ボイラ伝熱管は以前に増して過酷な環境にさらされている.燃焼ガスの高温度の下で,その一部がボイラ伝熱管に積もる浮遊微粒子から成る飛灰は,ボイラ材料の摩耗,孔食・腐食機構に決定的な役割を果たしている.しかしながら,これらの物質の現実のガス温度における熱物性値に関しては十分報告されていない.ボイラ伝熱管の付着灰,ボイラ水管表面スケール及び焼却灰の高温熱伝導率を明らかにするためにいくつかの都市ごみ焼却炉から試料を収集した.測定結果は,ボイラ水管付着灰と過熱器管付着灰はそれぞれ固有の高温熱伝導率を有することとボイラ水管表面スケールは温度上昇に伴い高温熱伝導率が低下することを示した.加えて,同一粉体試料から得られたレーザフラッシュ法と熱線法の二つの高温熱伝導率は,かさ密度を考慮に入れればおおむね一致していた.

  • 宮原 良太, 藤林 亘江, 小森 務, 宇城 工
    2016 年 65 巻 11 号 p. 458-461
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    近年問題となっている酸性雨やAl合金の腐食を調査するために酢酸や硝酸を含む酸性溶液を用いた複合サイクル腐食試験 (CCT) が用いられている.これらの試験におけるAl合金とステンレス鋼の腐食挙動に及ぼす溶液濃縮の影響について検討した.溶液濃縮に伴うCl,NO3,CH3COOの濃縮変化やpHの変化を調査した.濃縮溶液中でのカソード・アノード電流を測定し,腐食試験との対応を明らかにした.

  • 境 昌宏, 渡邊 純也
    2016 年 65 巻 11 号 p. 462-466
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    銅の蟻の巣状腐食はギ酸や酢酸のような有機カルボン酸環境下で生じる.このことから,蟻の巣状腐食の食孔内部では,有機カルボン酸アニオンと溶出した銅カチオンとが共存していることが予測される.本研究では,銅イオンとカルボン酸イオンの両者を含む溶液中での銅の腐食挙動を調べるために,ギ酸銅(Ⅱ),酢酸銅(Ⅱ)水溶液中でリン脱酸銅管の浸漬試験を行った.ギ酸銅水溶液中に浸漬した銅管には不規則に枝分かれした蟻の巣状腐食が発生し,酢酸銅水溶液中に浸漬した銅管には半球状の食孔が発生した.特にギ酸銅水溶液中で発生したこの腐食は進展速度が早く,26日間の浸漬で肉厚0.28mmの銅管を貫通した.これは腐食速度に換算すると3.9mm/yとなる.さらに,ギ酸銅,酢酸銅溶液中での銅のアノード分極曲線も測定した.ギ酸銅溶液中でのアノード分極曲線は単調増加であったのに対し,酢酸銅溶液中でのアノード分極曲線には大気開放時において,酸化皮膜形成に由来する電流密度の減少領域が現れた.

論文
  • 大村 朋彦, 秋岡 幸司, 小林 憲司
    2016 年 65 巻 11 号 p. 467-475
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    種々の表面皮膜が低合金鋼への水素侵入に及ぼす影響を,水素透過法を用いて検討した.陰極チャージ条件でZnめっきの影響を,酸環境で合金元素(Ni, Cu, Mo)の影響を,湿潤硫化水素環境で硫化物皮膜の影響を検討し,これらの皮膜を以下の2種類に分類した.

    Znめっきは母層中への水素侵入を抑える顕著な効果が認められた.この機構は水素透過に対する抵抗効果であり,Zn中の水素拡散が遅いこと,もしくはZn上の水素発生反応が遅いことに起因すると考えられた.湿潤硫化水素環境で生成する硫化物も,同様の機構で水素侵入を抑制した.Znめっきと硫化物皮膜は「表面抵抗型」とした.

    Ni, Cu, Moの含有も水素侵入抑制に有効であった.ただしその機構は抵抗効果ではなく,水素過電圧の変化であると考えられた.水素過電圧の低下が,表面の水素被覆率の低下に寄与していると推定された.これらの合金元素は「環境緩和型」とした.

    Znや硫化物などの抵抗型皮膜の場合には,鋼材の厚さが皮膜直下の水素濃度に影響する.この機構は,皮膜中と鋼材中の水素拡散のバランスによって,皮膜直下の水素濃度が決まることであると推定された.

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