電気化学測定法の化学プラントの設備管理への適用を紹介する.電気化学測定法の適用には設備管理のシステムの構築と測定の精度のレベルの確認が必要である.設備管理のシステムの構築には,どのような情報が必要かを明確化することが求められる.測定の精度のレベルの確認には,測定精度も必要であるが求められる情報への対応も重要である.
鋼構造部材の地際部では,地際部に雨水など環境因子が長時間滞留することで,進行性の高い局部腐食が発生しやすい.この局部腐食が生じることで,部材破断に至った事例が多数報告されている.本研究では鋼部材の地際部における腐食性を評価するために著者らが考案した腐食センサの出力特性とその実用性に関する基礎的検討を目的とした.そのために,NaCl水溶液による気液界面を含む模擬環境におけるセンサの出力特性について検討した.また,同環境で裸普通鋼板を用いた室内暴露試験を実施することで,その試験結果とセンサ出力に基づき算出した腐食深さを比較・検討した.さらに,腐食センサを用いた鋼材の経時腐食深さの評価方法を提案した.
鉄鋼や亜鉛の大気腐食速度を環境因子に基づき推定する手法を日本国内に整備するために,ドーズレスポンス関数(DR関数)の国内大気暴露試験データ(JWTCデータ)への適用性を評価した.既往のDR関数の中から選定したISO9223のDR関数による推定腐食速度は,JWTCデータの実測腐食速度との相関が十分に高くはなかった.このDR関数の係数をJWTCデータに基づく非線形回帰により再決定した結果,推定値と実測値の相関や,誤差が-50~+100%の範囲内に入る推定値の割合が増大し,日本国内の腐食速度データに対するDR関数の推定精度を向上することができた.
本研究では,東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における燃料デブリ取り出し時における原子炉格納容器の炭素鋼の健全性評価に関する知見を整備することを目的として,自然浸漬試験における自然腐食電位の経時変化測定及び試験前後の水の分析結果に基づき,炭素鋼の自己不働態化挙動に及ぼすホウ酸塩投与の影響を評価した.その結果から,炭素鋼の自己不働態化指数(Self-Passivation Index, SPI);
SPI=(0.5[SO42-]+[Cl-])/([HCO3-]+14[B(OH)4-]E)
により自己不働態化傾向を推定できる手法を提示した.ここで,[B(OH)4-]EはB(OH)4-当量(B(OH)4- equivalent);
[B(OH)4-]E=[M-Alk]+[HCO3-]
として求められた.
すなわち,ホウ酸塩を含む溶液環境における格納容器の炭素鋼の腐食挙動は五ホウ酸ナトリウム投与濃度,M-アルカリ度,硫酸イオン濃度,塩化物イオン濃度及び炭酸水素イオン濃度により,炭素鋼の自己不働態化傾向を推定できる.この手法によると,SPIが0.282未満の場合炭素鋼は自己不働態化する.