純銅表面の腐食生成物を定性的かつ定量的に評価できるボルタンメトリー還元測定法を,黄銅の分析に応用展開した.ボルタンメトリー測定の際の電解液は高アルカリ液(6 M KOH+1 M LiOH)である.十分腐食した黄銅の計測過程で,銅酸化物(Cu2OとCuO)に加えて亜鉛酸化物(ZnO)の還元波を検出すると共に,本計測法を黄銅表面の腐食生成物の定量的な評価に適用できることを確認した.脱亜鉛腐食の解析を念頭に置いて,各種濃度のNaCl水溶液中に浸漬させた黄銅板の評価を行った.NaClの濃度が0.1%以下では,Cu2Oの選択的な生成・成長を確認した.濃度が1%を超えると挙動が変わり,Cu2Oが生成しにくくなると共に,新たにZnOが生成した.最表面への亜鉛の拡散速度やCu2OとZnOの生成機構の違いにより,NaCl濃度に対する挙動に差異が生じたものと考えられる.
本研究では,濃縮された冷却水中における銅配管の局部的な腐食における堆積物の影響について検討を行った.銅配管の局部的な腐食は,銅配管内面に存在しているカーボン皮膜の健全部がカソード,カーボン皮膜の欠陥部がアノードとなり発生していると考えられた.銅配管の腐食は,カーボン皮膜の欠陥部への堆積物の存在により影響を受けており,特に,鉄錆が堆積物である場合において,アノード反応が非常に促進されることがわかった.アノード反応が促進される要因は,鉄錆の堆積により銅配管表面の酸化皮膜形成が阻害されていることが考えられ,その一因として鉄錆下のpHが低いことが考えられる.また,予め銅配管表面に安定な酸化皮膜を形成させることにより,鉄錆の堆積による腐食促進を抑制できる可能性が示唆された.