粒子径分布が異なる20種類の褐色低地土を用いて,埋設鋼材の腐食速度を交流インピーダンス法で測定した.本研究では,1回の乾湿サイクルにおける腐食速度の経時変化を測定し,その時間積分を土壌の腐食性と定義した.土壌の腐食性は,粒子径分布に依存して大きく異なっていた.これは,形成される粒子間隙の違いが,腐食反応に寄与する鋼表面の濡れ面積と溶存酸素の拡散距離に影響するためと考えられる.
ガンマ線照射による水のラジオリシスで生成する酸化剤が炭素鋼の気相中の腐食に及ぼす効果を評価するために,オゾンをモデル酸化剤として用いて50℃の湿度制御下に導入し,ACMセンサを用いた腐食モニタリングを行なった.ACM電流はオゾンの濃度に伴って高くなったことから,オゾンによる腐食促進の効果が示された.これはオゾンの還元反応あるいは水への溶解反応が早く,カソード反応を促進したためと考えられる.
塩化物および酸性テトラチオン酸溶液におけるType-304とType-316鋼の粒界応力腐食割れ(IG-SCC)におけるアコースティック・エミッション(AE)活性度と粒界性格の関係を議論する.両鋼のcoincidence site lattice(CSL)データに基づいて,IG-SCCの開口処理中に放出されるAE信号の音源メカニズムも議論する.Type-316 鋼は塩化物と酸性テトラチオン酸IG-SCCに対して高い割れ抵抗性を持ち,多くのAEを放出する,一方Type-304鋼は低い抵抗性を示し,わずかのAEを放出することが判った.鋭敏化316鋼の破面には多くの突起を観察したが,304鋼には極めてわずかの突起しか観察されなかった.アノード溶解に対して高い抵抗を持つ対応粒界の機械的破壊によって突起が生成され,対応粒界は粒界上にある双晶の短辺に対応することが判った.双晶短辺の機械的破壊は多くのAE信号を放出するので,高いAE活性度はIG-SCCに対する高い抵抗性を意味する.