金属の腐食抑制剤の抑制機構は硬いおよび軟らかい酸塩基の法則(HSAB則)と密接な関係にある.デカメチレンイミン(CH2)10 NHの非常に高い抑制効果がこの法則に基づき環の歪に起因するFeとN原子間の安定な化学吸着結合の生成によって説明された.また,抑制性あるいは促進性陰イオンの存在下におけるFe腐食のアノード反応がHSAB則を用いて考察された.
鉄鋼材料の耐食性評価に対し,ハイパースペクトル解析の適用の可能性について調査した.既知の鉄系腐食生成物についてハイパースペクトル解析を行った結果,腐食生成物によって反射や吸収の波長が異なることが確認された.海浜地域で大気暴露試験を行った鉄鋼材料表面のハイパースペクトルについて正規化指数解析を行った結果,腐食変化量が大きい試験片ほど得られる指数が大きくなることがわかった.
ガンマ線照射による水のラジオリシスで生成する酸化剤が炭素鋼の気相中の腐食に及ぼす効果を評価するため,オゾンを模擬酸化剤として50℃の湿度制御下に導入し,ACMセンサとRCMセンサの2種の腐食センサにより腐食モニタリングした.腐食速度は相対湿度とオゾン濃度とともに増加した.オゾンによる腐食促進効果は,オゾンの還元反応が容易あるいは水への溶解反応が速く,カソード反応を促進したことによると考えられる.
自動車の軽量化は,CO2排出量の低減に有効である.そこで,軽量化材料を接着剤で接合した部品が多用されると予想される.そのキー材料である接着接合体の,寒冷地のような腐食環境における劣化評価は,引張試験などの破壊解析に頼っている.そこで,我々はAl/CFRP接着体劣化の非破壊検出を試みている.本報告では電気化学インピーダンス法により,腐食試験における電気特性変化の検知を試みた.その結果,腐食試験により,接着部のインピーダンスおよび誘電正接に変化が認められた.