湿潤環境で塗布されたエポキシ樹脂塗料の成膜過程を解析する手法として電気化学インピーダンス(EIS)法を検討した.エポキシ樹脂およびアミン硬化剤の親疎水性が異なるモデル配合のインピーダンス特性について解析した.疎水性塗膜は親水性塗膜と比較して湿潤環境の影響を受けにくく,短時間で塗膜抵抗が発現することが分かった.また,付着力の評価結果から,ごく初期の段階から基材/塗膜界面の水分はなかったと推定した.EIS法は湿潤環境中の塗膜形成過程を解析する手法として有用であることが分かった.
マンホール環境でのガラス繊維強化プラスチックの適用可能性を検証するため,不飽和ポリエステルをマトリクスとしたガラス繊維強化プラスチックの弱アルカリ水溶液中での劣化特性を評価した.その結果,313 K以上の浸漬条件における曲げ強さの低下挙動は対数近似式によく一致した.そこで,アレニウス側に基づきマンホール環境に相当する288 K条件での劣化挙動の推定を試みたが,対数近似適用における問題点が明らかとなった.
自然海水環境におけるステンレス鋼のすきま腐食進展が定電流的に進行するという事実に則り,材料のすきま腐食進展性を評価する電気化学的手法として,「連続定電流ステップ法」(Continuous Current Step:CCS法)を提案し,同法を用いて種々のステンレス鋼のすきま腐食進展性を検討した.その結果,CCS法によって,各種汎用ステンレス鋼の電位(ECCS)と電流密度(i)のデータ対を取得し,本関係を減衰指数関数に当てはめ定式化した.このECCS-i関係は,すきま腐食が進行している状態でEOUTがほぼ一定値に落ち着くと,すきま内の閉塞状態における金属の電位(=EOUT+i・R)に応じて生じるanolyte中での金属の電位と活性溶解電流密度との関係を反映したものと推定された.また,金属溶解量が十分に小さい,i=1×10-5 A・cm-2(≒0.1 mm・y-1)をすきま腐食の進展が実質的に停止する閾値とし,iがこの電流密度閾値に対応する電位を再不動態化電位:ER(CCS)として各種汎用ステンレス鋼の値を得た.さらに,別途,上記ECCS-i関係におよぼすCr量,Ni量,Mo量およびCu量の影響を系統的に検討した結果,ER(CCS)はステンレス鋼を構成する個々の合金元素に固有のbiとその合金元素量[Mi]の積和(一次多項式)で示すことができ,以下の耐すきま腐食進展性指標CCR(Crevice Corrosion Propagation Resistance Index)を導入した.
CCR=[Cr]+0.95[Ni]+0.74[Mo]+2.03[Cu]
ER(CCS)はCCRの増加とともにほぼ直線的に貴化し次式の関係で近似できる事を示した.
ER/mV=-317+13.75・CCR
これより,種々の組成のステンレス鋼のER(CCS)がCCRによって一元化され,合金元素成分の観点からER(CCS)を統一的に論ずることが可能となった.
合金化溶融亜鉛めっき鋼板めっき層のδ1相(Zn-Fe合金相)および加熱により生じるΓ相(Zn-Fe合金相)とα固溶相(Fe-Zn固溶相)の構造分析および耐食性評価試験を実施した.α固溶相,Γ相,δ1相の順に耐食性が良く,各めっき相ともに基材の鋼に対する犠牲防食効果を有することが明らかとなった.一方,α固溶相は腐食電位が基材に近いため基材の露出面積が大きくなった場合,防食効果が低下すると考えられる.