循環器理学療法学
Online ISSN : 2758-0350
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原著論文
  • 清水 将史, 柴田 敦, 谷口 耕大, 呉 裕介, 岡井 主, 池渕 充彦, 泉家 康宏
    2024 年 3 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
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    〈目的〉

    経カテーテル的大動脈弁留置術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI) 術後1年時点におけるフレイル進行に関連する因子を,入院関連機能障害 (Hospitalization-Associated Disability: HAD) を含めた因子より検討した.

    〈方法〉

    2019年2月から2021年3月において,当院で経大腿アプローチのTAVI (TF-TAVI) を行った97例を解析対象とした.Clinical Frailty Scale (CFS) を術前と術後1年時点に評価し,1点以上増加した症例をフレイル進行群,それ以外をフレイル維持群とした.HADはBarthel Indexを用いて判定した.両群間においてHAD発生を含めた各種臨床指標を比較し,フレイル進行に関する因子について評価した.

    〈結果〉

    フレイル進行群ではフレイル維持群に比較して, HADが有意に多く発生した.また,フレイル進行を従属変数にしてロジスティック回帰分析を用いて多変量解析を行ったところ,HAD発生が術後1年時のフレイル進行の独立した予測因子として抽出された.

    〈結論〉

    TF-TAVI患者におけるHADの発生は術後1年時点でのフレイル進行のリスク因子となる.

  • 川上 裕貴, 濱野 一平, 石橋 修, 村野 勇
    2024 年 3 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
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    〈目的〉

    本研究の目的は,93名の男性心筋梗塞患者を対象に,生体電気インピーダンス法によるPhase angleと心肺運動負荷試験で測定した最高酸素摂取量との関連を明らかにすることである.

    〈方法〉

    急性心筋梗塞の診断で入院し,経皮的冠動脈インターベンションを施行した93名(58.0±10.0歳)を対象とした.Phase angleの数値に基づいて高Phase angle群と低Phase angle群に分け,患者背景および各測定項目を比較した.Phase angleを従属変数とした重回帰分析を行い,関連因子を検討した.

    〈結果〉

    低Phase angle群は高Phase angle群と比較し,有意に高齢であり,最高酸素摂取量をはじめとする心肺運動負荷試験や握力,膝伸展筋力,四肢骨格筋指数で有意に低値であった.多変量解析でPhase angleと年齢,アルブミン,最高酸素摂取量,四肢骨格筋指数に関連を認めた.

    〈結論〉

    Phase angleは,運動耐容能の最も一般的な指標である最高酸素摂取量を反映することが示唆された.Phase angleは,栄養指標,運動耐容能,骨格筋量を包括的に評価でき,包括的心臓リハビリテーションにおいて効果判定の一指標として活用できる可能性がある.

  • 加藤 倫卓, 井澤 和大, 大西 伸悟, 阿部 義史, 森尾 裕志, 鬼頭 和也, 北村 匡大, 柳 英利, 山﨑 一史, 山本 智史, 高 ...
    2024 年 3 巻 1 号 p. 25-48
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
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    〈目的〉

    高齢心疾患患者の急増により,循環器理学療法に関わる理学療法士数は,今後も増加することが推測される.そのため,循環器理学療法の質の担保は,極めて重要な課題である.本研究の目的は,急性期循環器理学療法を実践するうえで必須な評価に関する知識および技能のミニマムスタンダードを明らかにすることである.

    〈方法〉

    対象は,循環器理学療法の十分な知識と経験を持つ理学療法士58名とした.インターネットを使用して3回のアンケート調査を実施し,修正 Delphi 法を用いてミニマムスタンダードの合意形成を行った.循環器理学療法の評価に関する調査項目において,回答者の 70%以上が「必須である」と回答した項目をミニマムスタンダードと定義した.

    〈結果〉

    第3ラウンドまで完遂した回答者は,58名であった.全320項目を調査した結果,第1ラウンドの214項目と第2および第3ラウンドで追加された7項目の合計221項目がミニマムスタンダードとして選定された.

    〈結論〉

    本研究で合意形成されたミニマムスタンダードは,循環器理学療法に関わる理学療法士の質を担保する一助になるものと考えられる.

症例研究
  • 古山 勇気, 阿部 隆宏, 小島 尚子, 堀弘 明, 千葉 健, 由利 真, 向野 雅彦
    2024 年 3 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
    ジャーナル フリー

    〈はじめに〉

    近年,静注強心薬投与中の重症心不全患者に対する心臓リハビリテーションの安全性や有効性に関する報告が散見されているが,エビデンスは十分ではない.今回,若年拡張型心筋症に対する静注強心薬投与中から段階的な運動療法と食事療法を行い,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.

    〈症例〉

    既往歴のない40歳代男性.下腿浮腫や労作時息切れを主訴に近医入院し,低心拍出に対してドブタミン塩酸塩2γが開始された.血行動態の安定に伴い,ドブタミン塩酸塩を中止,精査加療目的に当院へ転院となったが,入院後の検査所見により再びドブタミン塩酸塩が開始となった.ドブタミン塩酸塩投与中は,血行動態の変化や不整脈に注意し,段階的な離床と低強度レジスタンストレーニングを行い,管理栄養士と連携して摂取エネルギー量およびたんぱく摂取量の調整を行った. ドブタミン塩酸塩中止後は,心肺運動負荷試験の結果に基づいた運動処方を基に有酸素トレーニングを行った.第61病日に自宅退院となり,週1回の外来心臓リハビリテーションを継続した.

    〈結果〉

    ドブタミン塩酸塩投与中は,心不全の悪化なく離床が進んだ.退院時には,入院時と比較して,Barthel Indexが70点から100点,握力が29.0kgから31.9kgへ各々改善し,BMIは最低値の16.8kg/m²から17.2kg/m²へ改善した.最大酸素摂取量は,入院中の18.4mL/kg/minから退院6か月後で27.1mL/kg/minまで改善した.

    〈結論〉

    静注強心薬投与中の拡張型心筋症症例において,早期離床や運動療法,食事療法からなる段階的な心臓リハビリテーションは心不全の悪化なく安全に実施でき,身体機能や運動耐容能を改善した.

  • 大西 悠太朗, 横手 翼, 大神 汰一, 西村 忍, 西村 天利, 内田 孝之
    2024 年 3 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
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    〈目的〉

    高齢の大動脈解離Stanford A型(以下,TAAD)後患者の呼吸困難感に対して,上肢運動と呼吸療法を組み合わせた介入を行なった結果,呼吸機能が改善した一例を経験したため報告する.

    〈方法〉

    症例は身長143cm,体重47.8kg、年齢80歳代後半の女性であった.TAADの診断で緊急開胸術を施行された.術後13日目の最大握力は8.0kg,Peak cough flow(以下,PCF)は90L/minで,Medical Research Council(以下,MRC)は grade 5で,連続歩行距離は歩行器で40mであった.理学療法介入は術後1日目より開始し,離床プログラムや呼吸療法中心に進めた.術後14日目より低強度の上肢運動と呼吸療法の併用を開始した.

    〈結果〉

    術後54日目には最大握力が12.4kg,MRCはgrade 2と上肢筋力向上及び呼吸困難感が改善した.また、呼吸困難感が改善したことで,連続歩行距離は杖歩行で80mと運動耐容能が向上した.

    〈結論〉

    高齢のTAAD術後患者対して上肢運動と呼吸療法を併用することは呼吸困難感の改善に有効であった可能性が示唆された.

短報
  • 磯邉 崇, 村重 美佳, 保坂 亮
    2024 年 3 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/07/04
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    〈目的〉

    本研究の目的は,心臓血管外科手術後の術後1日目の早期離床を阻害した要因を当院の実績とガイドラインの基準に基づいて明らかにすることである.

    〈方法〉

    102例の心臓血管外科手術患者を対象に,術後1日目の離床の状況,ガイドラインに基づいた離床を阻害した要因,離床の状況によるリハビリテーションの進行状況ついて調査した.また,術後1日目の離床状況に基づいて,リハビリテーションの進行状況を離床可能群と離床困難群の2群に分けて比較した.

    〈結果〉

    離床困難群は28例で,阻害要因は主に開始基準を満たしていない要素と中止基準に該当する要素であり,具体的には術後出血傾向と術後挿管時間,疼痛と嘔気が挙げられた.さらに,離床可能群に対して立位,歩行,階段昇降の各開始日,リハビリテーションパス完遂日,術後在院期間で有意に遅延した.

    〈考察〉

    術後出血傾向,術後挿管時間,疼痛や嘔気が早期離床を阻害する要因であり,安全性を最優先にしつつリハビリテーションプログラムを調整することが重要であると考える.

    〈結論〉

    本研究では,心臓血管外科手術後の術後1日目の早期離床において,ガイドラインに基づいて早期離床を阻害する要因を特定した.その結果,開始基準を満たしていない項目として術後の出血傾向および術後の挿管時間,中止基準に該当する項目として疼痛と嘔気であることが明らかになった.これらの知見に基づいて,全身状態や全身管理状態の変化を的確に把握し,早期離床に伴う有害事象の発生を安全に回避することが重要だと考える

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