本研究は,全学年あるいは学年に固有の科学の暫定性に関する理解のしかたを調べることから,中学生は科学の暫定性という特質をどのようにとらえているのかを明らかにしようとした。このため,1年生152名,2年生150名,3年生149名の計451名を対象として変形NSKSテストを実施した。変形NSKSテストとは,創造性,テスト可能性,発展性,簡潔性の4種の尺度から成り,各尺度を構成するそれぞれの項目に関して5段階の尺度値に反応するものであった。分析は,全学年の科学の暫定性に関する理解のしかたと学年に固有のそれとの二つに分けた。全学年の理解のしかたは,4種の尺度の各構成項目における尺度値に対する人数から行った。また,学年に固有の理解のしかたは,全学年と全く逆の理解のしかたという視点から行った。上述の二つの視点から分析した結果は,以下のようになった。(ア)学年に固有の科学の暫定性に関する理解のしかたは存在しなかった。(イ)全学年の科学の暫定性に関する未理解の実態は,4種の尺度のうち,創造性と簡潔性との2種の尺度に表出した。それらは,次の2点であった。1)中学生は,法則や理論を人間の創造の所産でないと考えている。2)中学生は,科学における法則や理論の数の最少性よりむしろ最多性への志向を認めている。
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