音楽教育においては,教師の呈示した音楽を,生徒がどの様な印象を持って聴いたかということが,大変重要な問題であると考えられる。この印象形成の際,各個人の持つ「抑うつ性」の強さの違いが,影響を与えていることが考えられたため,大学生126名を対象に,調査を実施した。調査では,4つの呈示曲に対する「印象評定」を行い,同時に「ベック抑うつ性検査」等を実施した。調査・分析の結果,「抑うつ性」の高い人と低い人とでは,音楽の動静や,明暗ついて,その感じ方に差が見られた。また,その差は,「抑うつ」に伴う心的状態による,音楽に対する注意の向け方の違いによると考えられた。このことを通して,音楽と,人の心的状態との関連性について,その一端を明らかにし,音楽鑑賞時の児童・生徒の心的状態を考慮した,望ましい鑑賞教育の,1つのあり方について考察した。
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