日本教科教育学会誌
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22 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 山本 利一, 森山 潤, 青木 礼三, 牧野 亮哉
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 1-8
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    中学校理科や技術・家庭科の電気領域の学習項目である「直流・交流」を視覚的に学習する教具を開発し,実験授業でその学習効果を調べた。開発した教具は,極性を交互に反転して取りつけた2個の発光ダイオードを一定のスピードで回転させ,その光の見え方で直流と交流の違いを学習するものである。直流電圧をかけた場合は,一方の発光ダイオードのみが点灯し,光は連続的につながって見える。交流電圧をかけた場合は,2個の発光ダイオードの光は交互に点滅して見える。さらに,交流電圧をかけたときには,適切な回転速度に制御することによって,点滅する光は停止して見えるので,その点灯しているダイオードの光の数と回転数から周波数を求める学習も可能である。本教具と従来の教具を利用した比較実験授業の結果,本教具を利用すると,交流と直流の違いが発光ダイオードの残像によって観察しやすくなり,周波数に関する学習内容の定着率が向上することが明らかになった。
  • 本村 猛能, 内桶 誠二
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 9-18
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学・高校・大学における普通教育としての情報教育の評価を,先行研究での因子分析・クラスター分析・相関分析と合わせ,ファジイ分析により行い,その有効性を確認していくことを目的とした。研究は,学習者側と指導者側の両方から見た評価項目の設定を行い,同時に,ベテラン教師による授業評価を比較検討した。その結果,ファジイ分析(ファジイ測度・メンバーシップ関数・ファジイ積分など)を用いることにより,従来の分析で得られた結果,すなわち「興味・関心・意欲」「態度」の情意面と「学力定着」がカリキュラムの充実としての「情報リテラシー」の内容と密接に関係していることが明確にされた。また,情報教育の評価には,それぞれの学校段階の他教科の内容を加味し,情報科学(知識・理解面),情報管理(情意面),情報活用(技能面)の観点を取り入れ,課題解決と表現を目標としてリテラシーを導入する内容が不可欠であることがわかった。これは,先行研究で得られた評価項目(情報リテラシー,コンピュータ・リテラシーの意義を踏まえたもの)とも一致している。
  • 前田 健悟
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 19-25
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    教育学部生は,将来教師となった場合に対し,理科の学習内容に対して不安を感じていることが報告されているが,教育実習での理科指導時にも,児童・生徒がどのような科学的能力を保有しているかに不安を感じていると考えられる。本研究では,クロッファーが示した理科の行動目標を利用して,教職志望の他学部の学生も含めた学生が,理科指導時に児童・生徒に必要と考えている科学的能力を明らかにすることを試みている。解析は,全被験者の平均データと,同時に調査した学生の指導態度に基づいて分けられた4つのグループ毎のデータの両面から行った。その結果,学生は基礎的な実験技能や科学的な態度などを児童に必要としており,また学生の教育実習の経験度や理科の習得度によっても,必要としている科学的能力の傾向が異なることを明らかにできた。主成分分析からは,解釈可能な5つ因子を得ることもできた。
  • 塚原 久美子
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 27-36
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究における事前の調査によると,生徒は,「数学は好きではない」が,「数学が得意になりたい」という願望をもっており,「数学学習のよさは,数学的な見方・考え方が身につくこと」等の的確な認識と期待をもっている。この期待に応えるとともに,高等学校における数学の目標を達成するための方策として,数学教育に,数学史を導入した授業を行い,生徒の数学に対する意識がどのように変容するかを調べた。その結果,「数学では,知識または問題の解法の仕方を覚えるよりも考え方が大切である」,「数学的な見方・考え方が身につく」等の面で,生徒の期待に応えるとともに,意識の変容が得られた。
  • 水井 裕二
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 37-46
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は, 1)これまでに明らかにされている「文章題解決を困難にする要因(以降,困難要因と略する。)」をレヴューすること,2)算数「速さ」の非定型的文章題(Nonroutine Story Problems on Speed : 以降,NSPSと略す。)の困難要因となる可能性の高い課題要因を明らかにすることを目的とした。1)の困難要因として大きく,課題要因と問題解決者要因の2つが特定されている。そして課題要因は,文脈要因,構造要因,構文要因に3分類され,問題解決者要因は,認知的要因,メタ認知的要因,信念・感情要因に3分類される。また, 2)については,設定条件の表現の違い(時間差表現,距離・水量差表現),事態の違い(追いつく,出会う),問題場面で取り扱われる「速さ」の違い(運動の速さ,仕事の速さ)がNSPSの課題要因となる可能性が高いことを指摘した。
  • 三熊 祥文
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 47-54
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,英語スピーキング学習に関する歴史的研究である。日本における英語スピーキング教育の教室が捨て去ったものの中には,「話す内容」に収斂する学習者の社会とのつながり,関わりの議論がある。国語教育における「話しことば」のように,就学年齢以前にある程度のスキルが備わっている,という条件が整っていないため教室では扱いきれず,この部分は概ね学習者個人に委ねられてきた。しかし,課外活動に目を転じてみるとこのような「社会性」を集団・システムとして守り続けてきた環境が見えてくる。それが英語会におけるスピーチ活動であった。本論文では,失われたスピーキングの本質的指向性である「思想表現」を指標として英語会のスピーチの歴史的検討をそのタイトル,内容,およびそれに対するコメントなどを通して行う。その結果,英語会でのスピーチが,ひとつのシステムとして教室での学習項目を思想表彰へと昇華させ,社会へと投射させるインターフェイスとなっていたことが明らかとなるであろう。
  • 吉川 智子, 荒井 紀子
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 55-63
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    高等学校「家庭一般」住居領域の学習において,生徒の住環境に対する関心を高め,快適な住環境をつくろうとする意欲や実践力を育てることを目的とし授業開発を行なった。前報では,授業の全体構造と学習プロセスについて報告した。本報では,授業を生徒がどう受けとめたかに視点をあて,授業前後の生徒の記述やアンケートをもとに,授業の分析と評価について報告する。結果は以下のようであった。1.授業後のアンケートでは,生徒の97%が,学習に興味・関心を持てたと回答した。また自由感想文では,学習への手ごたえや,学習を通しての自己の内面の変化を示す記述が多くみられた。2.生徒が最も熱心に取り組んだのは,教室の設計と,駅,公園,ショッピングセンターなどの公共施設の設計・模型づくりであった。3.「住環境づくり」に関する授業前後の生徒の記述では, ノーマライゼーションへの理解や住環境づくりへの主体的意識の増加がみられた。また,住居領域の学習内容,方法についての関心はいずれの項目も増加し,特にグループ調査・討論,公共施設の設計・模型づくりへの関心の増加がみられた。以上から,本授業の題材と学習内容,方法は生徒に肯定的に受けとめられ,学習目標に対する一定程度の効果が確認された。
  • 菅 裕
    原稿種別: 本文
    2000 年 22 巻 4 号 p. 65-74
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,音楽教師の信念が内面においてどのような構造を有しているか,また,そのことが授業の流れや児童にどのような影響を及ぼしているか,について現象学的に考察することを目的とし,福島大学附属小学校の山本浩教諭による音楽授業への参与観察と授業後の教師へのインタビューの分析を行っている。その結果,1.表現のネットワークとしての音楽体験をとおして,児童の音楽的価値観を広げていくために,2.教師は徹底して状況に即応する支援者の立場に立ち,3.授業を音をとおしたコミュニケーションの場としていくことを重視する,山本教諭の信念の構造が明らかになった。この構造は,全体として一貫性をもっており,それに基づく安定した授業運営の結果,児童は,合奏活動を教師の手を借りずに組織するようになり,自分たちの演奏を昼休みのフリーコンサートとして校内で積極的に発表するまでに成長した。同時に,山本教諭が「担任としての役割」と「音楽教師としての役割」と間の葛藤を内面に抱えていることも明らかになった。
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